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はじめに【脳の血管支配領域を勉強する意味は?】

おばんです!!Yu-daiです!
新人セラピストや学生向けに
”脳卒中”や”急性期におけるリスク管理”などを中心とした
知識の発信をさせていただいています!!
今回の記事では脳画像における”脳の血管支配領域”の分け方についてまとめていきます!

一般的にはこんなふうに言われているよ!!
理学療法士が脳画像をみる目的は、脳損傷の部位や損傷の程度の確認と、それらと臨床現象との照合による評価上での見落としに気づくこと、将来的な可能性とそれを導き出す方法論を検討するための材料にすることなどである。
吉尾 雅春:脳画像をみる理学療法士に必要な脳の知識 理学療法ジャーナル 2019年 2月号
僕の経験則も含めた見解としては以下の通りになります!!
- 脳卒中の範囲と程度を把握するため
- リハ開始できる状態なのかを確認するため
- 損傷部位から出現しうる症状を推測し、評価内容に反映するため
- 脳画像と臨床症状を踏まえ、機能予後を推定し目標や練習内容を考えるため

急性期は特に意識障害の影響で、高次脳機能などを中心に症状がマスクされている可能性が高く、脳画像の情報は非常に重要だよ!!
リスク管理を行う上でも必須級の知識!
脳の血管支配領域の知識は特に…
脳梗塞・くも膜下出血症例を担当する際に役立ちます!!
例えば、こんな点で役立ちます!
- 脳の損傷部位の推測が可能
- 該当する血管支配領域に存在する部位から障害像を予想できる
つまり、わかりやすく言えば
”運動麻痺”や”高次脳機能障害”などの…
✔︎出現の可能性
✔︎大まかな重症度
✔︎予後予測など
これらを推測する材料になり得ます!!
(あくまで画像情報なので、臨床症状とすり合わせて推測しましょう!)

うん、すごく勉強しないといけない気がしてきました!!
それでは、話を進めていこうと思います!
今回は、脳の血管支配領域の水平面
つまり、皆さんもよく見る脳のスライス別にしてまとめていきます!!
〈〈もっと脳画像の基礎的な知識を知りたい方はこちらの記事からがおすすめ!〉〉
// /”冠状断”における脳の血管支配領域

脳スライスを中心に血管支配領域を説明すると言いましたが
理解を深めるために少しだけ冠状断における血管支配領域がどういう形にみえるかまとめておきますね!!
図を見ていただくと分かると思いますが、
このように各支配血管が伸びた領域に血液が送られています!!

支配血管の領域は理論よりも視覚的に覚える方をおすすめするよ!!
ざっくりとポイントだけ説明すると…
”前大脳動脈”と”中大脳動脈”の境界に関しては
側脳室
この部位を境界にして分かれているので
見分けるための指標にするといいかもしれません!!
この”側脳室”は”軸状断”においても
前大脳動脈・中大脳動脈・後大脳動脈の境界を断定するための重要な指標になってくるのでぜひ覚えておきましょう!!
【脳スライス別】脳の血管支配領域を覚えよう!!

それでは、脳スライス別に脳の血管支配領域についてまとめていきましょう!!
まず、今回使用する脳スライスのレベルはこちらになります!
- 皮質レベル
- 半卵円中心レベル
- 放線冠(八の字)レベル
- 基底核(モンロー孔)レベル
- 中脳レベル
- 橋レベル
- 延髄レベル
この他にも、脳梁膨大レベルや側脳室下角レベルなどもっと分けられますが、今回はこれらだけでいかせてください。
”皮質レベル”における脳の血管支配領域

まずは、皮質レベルからです!!
皮質レベルの場合は…
前大脳動脈
中大脳動脈
後大脳動脈
この3つに血管によって支配されています!
分布はこのようになっています!!
前大脳動脈と中大脳動脈は脳を縦に裂くように分布していますね!
ポイントとしては完全に半分で分けるのではなく…
内側3分の1程度→前大脳動脈
外側3分の2程度→中大脳動脈
少し”中大脳動脈”領域の方が割合が大きいです!!
そして、その後方に位置するのが後大脳動脈領域になります!
後大脳動脈領域は…
後大脳動脈支配=後頭葉ではないので勘違いしないようにしましょう!!
✔︎要Check!!
このレベルでは、3つの血管支配となっていますが
さらにもっと上のレベルになると…
前大脳動脈領域と中大脳動脈領域のみ
前大脳動脈領域のみ
冠状断で確認すると分かるように、支配血管が前大脳動脈のみになります!!
その点については注意して読影するようにしましょう!
”半卵円レベル”における脳の血管支配領域

次は半卵円レベルになります!!
半卵円レベルも基本的には皮質レベルと同様で
前大脳動脈
中大脳動脈
後大脳動脈
この3つの血管によって支配されています!
位置関係もほとんど変わらず
前大脳動脈が内側3分の1程度
中大脳動脈が外側3分の2程度
この割合はほとんど変わりません!!
しかし、八の字レベルとの境界のレベルにおいては…
(側脳室がうっすらと見え始めるレベル)
中大脳動脈領域
この領域の範囲が大きくなるので注意が必要です!!

詳細は八の字レベルでまとめているのでそちらを参考にしてね!
”八の字レベル”における脳の血管支配領域

次は八の字レベルです!!
このレベルから血管支配領域に大きな変化を認めるようになります!
大きな変化というと…
”中大脳動脈領域”の領域拡大
はい、今まで前大脳動脈領域が大きかったですが
このレベルからは徐々に中大脳動脈の領域が大きくなってきます!

”領域展開”ってやつですね!?
支配血管としては…
前大脳動脈
中大脳動脈
(中心枝:レンズ核線条体動脈)
前脈絡叢動脈
後大脳動脈
これらで成り立っています!!
これらの領域の同定についてですが
先ほど登場した”側脳室”がいい仕事をしてくれます!
前角:前大脳動脈と中大脳動脈の境界
後角+頭頂後頭溝:中大脳動脈と後大脳動脈の境界
このようになっています!分かりやすいですよね?

側脳室のすぐ横、放線冠?の部分の色が違うのはなんでですか?
この領域は、”外側線条体動脈””前脈絡叢動脈”と言います!
(レンズ核線条体動脈とも言います)
外側線条体動脈は
いわゆる”穿通枝(中心枝)”と呼ばれ
中大脳動脈の枝にあたります!
今までは”終末枝(皮質枝)”という、皮質側を主に支配する枝でしたが
このレベルからは中心部を支配する枝が見られるようになります!
この血管は、その他のレベルだと”被殻や淡蒼球、内包前脚など”を支配していて
ラクナ梗塞やBAD、高血圧性脳出血の多発血管に該当します
前脈絡叢動脈は、内頸動脈からACA・MCAへと分岐する直前に分岐していて
主に”放線冠の後半部”や”内包後脚”を支配しています!
つまり、臨床上かなり重要な血管ですので要Checkです!!

次の基底核レベルにおいては、大血管ごとに様々な枝がでてくるから覚えておこう!
”基底核レベル”における脳の血管支配領域

次は基底核レベルです!!
”松果体レベル””モンロー孔レベル”とも言います!

ここは、内包や被殻、視床など
重要な神経繊維や神経ネットワークが多く通過している部位がたくさん存在するよ!
この部位から各大脳動脈の中心枝が登場してくるので
支配血管領域がさらに細分化されます!!
たとえ隣接する部位であっても、その血管支配は部位ごとに違ってくるのでしっかりと覚えていきましょう!!
まずは、皮質領域についてです!!
皮質領域はこのレベルでも”側脳室”の上角・下角が各血管支配領域の境界の指標となります!
中大脳動脈領域がほとんどを占めているのが分かると思います!
次に”基底核”や”視床”などの血管支配
これらについて説明します!!
ここからさらに重要になりますよ!

そんなに基底核や視床って大事なんですか?

大脳基底核は、運動プログラムに基づいて、必要な運動を促通・不要な運動を抑制する意思決定の役割を担っているよ!運動順序の学習、運動プログラムの抽出・切り換えなども行なっていて僕らが生活をする上ですごく重要な部位なんだ!!
視床もその働きをまとめるとその重要性が分かります!
- 感覚情報の中継地点
- 運動制御
- 視覚
- 情動
- 覚醒
視床についてもう少し詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです!

基底核や視床の重要性がわかったところで話を戻すね!!

図でも示していますが…
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球
- 内包前脚
- 内包膝部
- 内包後脚
- 視床
これらの部位は隣接していますが、
このようにそれぞれ別の大脳動脈によって支配されています!!
基底核におけるポイントとしては…
尾状核→レンズ核線条体動脈
被殻・淡蒼球・内包前脚・内包後脚の一部→レンズ核線条体動脈
内包後脚の一部→前脈絡叢動脈
視床→後大脳動脈(視床の各動脈)

視床に血管支配の詳細についてはまた別の記事で説明するね!!
また、臨床上重要なのが”前脈絡叢動脈”
”前脈絡叢動脈”は通常…
後交通動脈分岐部から内頚動脈分岐部の間の内頚動脈の外側壁から分岐する
このように言われています!
(発生学的に中大脳動脈から起始・後交通動脈から分岐するなど様々な報告もされているようです)
図の通り、前脈絡叢動脈は内包後脚を灌流していますが
その全てではなく、後方3分の2程度と言われています!!
AchAは,側頭葉内側面,視索,外側膝状体外側部,淡蒼球,大脳脚中1/3,内包後脚の後方2/3,視床の一部などを栄養し,その血流障害はAbbie 症候群に代表される,対側の片麻痺,感覚障害,半盲などの重篤な神経学的後遺症を生じる.
片岡 大治,飯原 弘二:穿通枝の外科解剖―ICG videoangiography と神経内視鏡の有用性― 脳外誌 24 巻 1 号 2015 年 1 月
一方で、前方3分の1は”中大脳動脈”の中心枝域によって
灌流されていることを覚えておいてください!!

この内包後脚の支配血管が違うことはそんなに大事なことなんですか?
内包には皮質脊髄路をはじめとした様々な投射繊維が集中して走行しています!!
特に、内包後脚に関しては
外側皮質脊髄路の各繊維が走行しているのが有名で…
- 顔面
- 上肢
- 体幹
- 下肢
このような順番で配列されています!!
〈〈詳細はこちら!!〉〉

つまり、言いたいことはこういうこと!
顔面や手指→中大脳動脈に支配されている可能性が高い
体幹や下肢→前脈絡叢に支配されている可能性が高い
この血管支配領域の違いは脳梗塞症例において、
機能予後の推測をする材料の1つになり得ます!!
最終的には実際の臨床症状と照らし合わせるのが重要です!!
画像だけで判断はしないようにしましょう
”中脳レベル”における脳の血管支配領域

次は中脳レベルにおける支配領域についてまとめていきます!!
このレベルにおいては…
- 前大脳動脈
- 中大脳動脈
- 前脈絡叢動脈
- 後大脳動脈
- 上小脳動脈
これらの動脈による支配領域があります!!
上の図を見てください!

どうやって見分けていけばいいんですか?
まずは前頭葉の部分からです!!

このレベルの前頭葉の領域はかなり小さいですが
2つの血管によって支配されています!
外側:中大脳動脈
内側:前大脳動脈
この割合は人や画像によって多少変化する可能性があるので
MRAなどの画像情報も踏まえて、推測するといいと思います!
次は側頭葉・後頭葉の領域です!

この部分の血管支配領域の探し方としては…
”側脳室下角”
上の画像でいう、三角形の形をした青色の部分ですね
ここを基準にして推測していくといいです!
側脳室を基準に…
前方:前脈絡叢動脈
内側:後大脳動脈(終末枝)
外側:中大脳動脈(終末枝)
※側頭葉の領域(傍錐状回)まで
この部位においては
大脳皮質よりも”脳幹・小脳”に目が行きがちですから
意外に脳葉や血管支配の同定の仕方がわかっていない事も多いです!
ですが、これらの領域に損傷が及ぶと、様々な高次脳機能障害が出現します!
見方が分かればそう難しくはありませんからこの機会に覚えておきましょう!!
〈〈中脳レベルにおける側頭葉と後頭葉の見分け方についてはこちらの記事でまとめています!〉〉
最後に脳幹(中脳)・小脳です!!

中脳:後大脳動脈中心枝
小脳:上小脳動脈
中脳レベルまでは、脳幹も小脳もシンプルな血管支配になっています!!
橋レベルからは…
- 脳底動脈
- 前下小脳動脈
- 後下小脳動脈
これらの動脈の支配領域が登場するので頑張りましょう!!
”橋レベル”における脳の血管支配領域

次は橋レベルになります!!
橋は上部・中部・下部に分かれています!!

色々分かれていると言っても同じ橋のレベルですからそんなに変わりませんよね?
同じ橋でも…
橋上部
橋中部
橋下部
高さによって血管支配領域の見え方が全く違ってきます!!
ちなみに画像の橋は上部〜中部の間の高さを想定して支配領域を表しています!

特に小脳に注目!!
3つの動脈の領域がどのように変わっていくかチェックしておこう!
今回、橋の上部や下部の高さでのイラストが手に入らなかったので
画像を皆さんにお見せすることができませんが…
側頭葉における血管支配領域は
下のレベルにいくほど”中大脳動脈”領域が拡大します
小脳部分においては…
橋上部では”上小脳動脈”がほとんどの領域を支配しています!
中部・下部に進むにつれて
”前下小脳動脈””後下小脳動脈”の領域が拡大していきます
延髄レベルに到達する頃には
小脳の領域のほとんどは”後下小脳動脈”が支配するようになっています

上図の”境界領域”についても少し説明するね!!
境界領域とはそれぞれの血管同士の境界に位置している領域です!!
”分水嶺梗塞”の際に梗塞が生じやすい部位になるので余裕がある方は覚えておきましょう!
※分水嶺梗塞については別記事で説明していきます
橋に関しては、”脳底動脈”でまとめていますが
実際には脳底動脈の枝によって細分化されます!!
この枝による違いは”BAD(分枝粥腫型梗塞)”について理解する上では重要!
脳幹部の詳細な血管支配については別記事にまとめていきます!
”延髄レベル”における脳の血管支配領域

最後に延髄レベルです!!
延髄上部と下部で前下小脳動脈の有無に違いがありますが
基本的には小脳のほとんどの領域を後下小脳動脈が灌流しています!!
延髄は様々な動脈によって支配されています!
橋と同様に各動脈でさらに領域を細分化できます!
こちらについても別記事にまとめていこうと思います!
興味があったらまた読みに来てください!!
まとめ

これで、脳の血管支配についてはバッチリかな!!
お疲れ自分〜!

血管支配を覚えることは脳画像を見る上で非常に重要!!
でも、脳葉の見分け方や部位の同定方法も含めた合わせ技で読影しないと障害像を把握することが難しいかもしれないよ!
脳画像は覚えることがたくさんあり大変だとは思いますが
1つ1つ自分の知識に取り込んで臨床に生かしていけるよう一緒に頑張りましょう!!
この記事が少しでも皆さんの臨床や学習に貢献できたら嬉しいです!!
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〈〈各脳葉の同定方法はこちら!!〉〉
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- 脳機能や解剖学の知識を画像・イラストを用いて解説してくれる
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よくあるスライスごとの部位の位置関係や出現する症状だけを記載しているだけじゃありません。
その探し方まで記載してくれているので臨床での再現性が高い内容だよ!!
脳梗塞の分類など、病態についての情報も記載されているので汎用性も高いです!

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つまり、皮質脊髄路や上縦束などの神経繊維の走行などもこの教科書で勉強することが可能です!!
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おそらく実習前の図書館では争奪戦必至になる可能性があるので
(僕の学生時代の人気書籍はそうだった笑)
バイト代などであらかじめ購入しておいて実習前はスマートに過ごしましょう笑
確かに、脳画像の見方に関しては
まだ、なんとなくここ?くらいにしか分からないです…
学ぶべき理由はなんなんですか?