【セラピスト必見!!】半側空間無視とは?USNの病態・発現メカニズムについて10分で解説!!

半側空間無視の病態や発現メカニズムについて
// /

はじめに

おばんです!!Yu-daiです!

新人セラピストや学生向けに
”脳卒中”や”急性期におけるリスク管理”などを中心とした
知識の発信をさせていただいています!!

Yu-dai

今回は半側空間無視(USN:unilateral spatial neglect)について
その病態について少しまとめていきます!!

新人理学療法士

僕としては動作分析などを優先的に勉強したいんですけど
僕ら理学療法士が率先して半側空間無視について学ぶべき理由はなんですか?

半側空間無視は高次脳機能障害の1つに分類されます!
一般的に高次脳機能はIADLを中心として我々の生活を阻害しますが…

高次脳機能障害を有している者は,日常生活では基本的なADLに比べIADLの自立度が低く, 共通して「銀行・役所などの用事」が困難であった. 大部分 (97%) で家族が介護を担い, 半数の者が毎日外出しているものの社会的活動に乏しかった. 

遠藤 てるら:東京都における高次脳機能障害者調査について 第2報-生 活実態調査報告- リハビリテーション医学2002; 39: 797-803

半側空間無視は移動能力に対して大きく影響する場合があります!!

半側空間無視がある症例は実用歩行や歩行練習到達レベルが低い傾向にある.

北里堅二,入江泰子 他:半側空間無視を有する脳卒中片麻痺患者の歩行能力―実用移動能力と歩行練習到達レベルの比較 PTジャーナル・第37巻第1号・2003
Yu-dai

USNを有している場合には実用歩行だけじゃなく、歩行練習自体の到達度も低いようだね。

また、室内歩行の獲得にも影響を及ぼします!

室内歩行が自立するためには半側空間無視の症状がないこと
車椅子レベルに止まってしまうのは半側空間無視の症状があることが因子の1つに含まれた.

Paolucci S.  · Bragoni M et al:Quantification of the Probability of Reaching Mobility Independence at Discharge from a Rehabilitation Hospital in Nonwalking Early Ischemic Stroke Patients: A Multivariate Study Cerebrovasc Dis 2008;26;16-22

以上の先行研究から考えて、
僕たち理学療法士が患者様の移動手段の獲得を目指して介入していく上で
半側空間無視についての知識も必要になってくると考えられます!!

理学療法士が半側空間無視について勉強する理由!!
  • 室内歩行獲得に大きな影響を及ぼすため
  • 実用歩行のみならず歩行練習自体にも影響を及ぼすため
新人理学療法士

歩行にも影響がでるのであれば
僕ら理学療法としても歩行獲得のために介入すべきですね!!

// /

半側空間無視とは?

まずは簡単に半側空間無視についてどんな症状かまとめていきましょう!!

半側空間無視の症状
  • 片側ばかりみている
  • 片側から出現した対象に気づけない
  • 目の前に置かれた食物に気づかずに食べ残してしまうetc

Yu-dai

日常生活においてこれらのような症状が出現するよ!

新人理学療法士

患者さんによってその程度や症状を呈す場面が全然違くて
対応に困ってしまうことがよくあります

半側空間無視とはこのように定義されています!!

USNは感覚障害や運動障害では説明できない反応の低下や欠如を示す現象を指し、現在では、無視空間に対する「注意」の欠損を示す病態として、脳損傷後に起こる高次脳機能障害の一つとして広く認知されている。

森岡周:高次脳機能の神経科学とニューロリハビリテーション  協同医書出版社 2020

半側空間無視は注意障害の1つとして分類されています!!

  • 全般性注意障害
  • 方向性注意障害→半側空間無視

詳細はこちらに書いているのでもっと知りたい方はこちらをチェック!

注意障害の分類と評価バッテリーについて
Yu-dai

つまりは、”一定の方向に存在する対象”に注意が働かなくなっている状態が半側空間無視ということだね!!

// /

半側空間無視の病態について

ここからは半側空間無視の病態について簡単にまとめていきます!!

USNは視空間情報処理に関わるネットワークに障害が起きることで出現する.

森岡周:高次脳機能の神経科学とニューロリハビリテーション  協同医書出版社 2020
Yu-dai

病態を理解する上で、この”視空間情報”というところがポイント!!

私たちが見たもの(視空間情報)は以下のように脳に伝わって処理されています!!

視覚情報の処理経路

網膜→視床・外側膝状体→1次視覚野

ここまでは、視覚情報を送っているだけに過ぎませんが…

1次視覚野→2次・3次視覚野→4次視覚野・5次視覚野

1次視覚野からさらに情報の処理をされながら
4次視覚野と5次視覚野に伝達されそれぞれの領域で認知的な処理がされます!!

臨床において、半側空間無視と混同されがちな症状として

”同名半盲”があります

同名半盲とは、脳損傷後の視覚障害の代表で視野の一部が欠損する神経学的な症候視索や視放線、後頭葉の損傷などによって生じる。

何を言いたいかというと…

  • 同名半盲:網膜から1次視覚野に至る経路が損傷し出現
  • USN:2次・3次視覚野以降の情報処理を担う領域の損傷によって出現

このように分けられます!!

新人理学療法士

つまり、半側空間無視は高次の情報処理をになっている領域の機能不全で生じるんですね

Yu-dai

4次視覚野と5次視覚野とそこへの経路について説明するね!!

4次視覚野について!!
  • 側頭葉に存在する
  • 4次視覚野から下側頭葉に至る
  • この経路を腹側経路(ventral stream)と呼ぶ
  • 物体の形態認知が行われる
5次視覚野について!!
  • 頭頂葉に存在する
  • 5次視覚野から上頭頂小葉・頭頂間溝に至る
  • この経路を背側経路(dorsal stream)と呼ぶ
  • 空間認知を担う

上の図やボックスの内容の通り
1次視覚野まで到達した視覚情報は二手に分かれて頭頂葉と側頭葉で違った情報の処理がされます!!

側頭葉・頭頂葉で処理された情報は
最終的に前頭葉に送られ、認知されることで

視覚で捉えた環境や対象が認識されます!

Yu-dai

追加情報が少し長くなったけど
半側空間無視は側頭葉や頭頂葉に存在する視覚情報を処理する領域の機能不全によって生じるということが分かるね!!

半側空間無視出現の神経メカニズム

半側空間無視出現メカニズム

次に半側空間無視の出現に際した神経メカニズムについてまとめていきます!!

今まで、多くの人が半側空間無視の発現メカニズムの仮説を提唱されてきました

左右の大脳半球は脳梁を通じて抑制し合うことで情報のバランスがとれており、左右空間に注意を向けることができるが、右半球損傷によって、そのバランスが崩れ、左半球の活動が抑制されなくなることで左半球が支配している右空間に注意が偏ってしまうことにより半側空間無視が出現する。

Kinsbourne M:Mechanisms of Unilateral Neglect Ady Psychol 45:69-86,1987.

Kinsbourneの提唱したものは
”半球間の相互作用の機能不全に基づいたUSNの出現”です!

右半球両側の空間に対する注意を制御すると言われていますが、左半球右空間への注意を制御するのみと言われています!(Mesulam MM,1999)

この半球間の差異から、
”右半球が損傷→右空間への注意が偏る”ということを説明しているようです!

実際、臨床においても左側と右側の損傷例を比較すると
右側の損傷例の方が無視の程度が重度で、残存期間も長いことが多いです!!

次は注意ネットワークについてです!

右半球の腹側注意ネットワークが損傷することで、腹側注意ネットワークとネットワークを形成する右背側注意ネットワークの働きが低下し、それにより左背側注意ネットワークの働きを機能的に抑制することができなくなるため視線が右側に偏倚する。

Corbetta M et al:Spatial neglect and attention networks. Annu Rev Neurosci 34:569-599,2011.

半側空間無視の原因は、腹側注意ネットワークの損傷によって生まれる注意の解放障害である。

Karnarth HO:Spatial attention systems in spatial neglect. Neuropsychologia 75:61-73,2015.

”腹側注意ネットワーク”は予期していない外部刺激に対して注意を向ける際に活性化すると言われる注意ネットワークの1つです!!
つまり、Karnathらが言いたいことは腹側注意ネットワークの損傷によって予期なく刺激された対象に対して注意を向けることができない病態がUSNの原因の根幹ではないかと提唱してます!

注意のネットワークについてはこちらの記事で解説しています!

注意機能の定義と脳部位・神経ネットワークについて
Yu-dai

こうしてみると、CorbettaとKarnathの提唱した内容は、半側空間無視が受動的な注意システムである”腹側注意ネットワーク”の障害によって生じているという点で共通しているね!

今までの流れだと”腹側注意ネットワーク”に目が行きがちになるかと思いますが…
空間に対する注意を正常に行う上では
✔︎腹側注意ネットワーク
✔︎背側注意ネットワーク

この2つのネットワークは非常に重要です!!

実際、ADLにおいてはこの2つのネットワークの機能が協調して働くことが重要だと言われています!!

ADLにおいては、これら2つの注意システムがバランス良く機能することが重要である。

森岡周:高次脳機能の神経科学とニューロリハビリテーション  協同医書出版社 2020
Yu-dai

この2つのネットワークについて理解を深めることで半側空間無視における重症度や残存期間に左右差が生じていることが分かるようになるよ!!

Corbeta M,Patel G,Shulman GL:The Reorienting System of the Human Brain: From Environment to Theory of Mind. Neuron. 2008 May 8; 58(3): 306–324.より改変し引用

上の方で引用させていただいていたCorbetta Mら(2008)は
背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークを図のようにまとめました!!

トップダウン注意=意図的に対象を選択して集中する→背側注意NW

図をみると
トップダウン的な注意を行う際、
視覚から頭頂葉→前頭眼野の順でその領域が活性化されます。


また、左方向へ注意を向ける場合は右側の背側注意NW、右側へ注意を向ける場合は左側の背側注意NWと両側半球が関与するようになります!

新人理学療法士

ボトムアップ注意はまた違うネットワークでコントロールされていそうですね!

ボトムアップ注意=刺激に対して即時的に注意を向ける→腹側注意NW

ボトムアップ注意の場合、外的刺激が入った際に”側頭-頭頂接合部(TPJ)”が活性化し、”下前頭回・島皮質、中前頭回”まで情報が送られ活性化します!
右中前頭回が活性化することで、視線を再方向化(reorienting)します。

これらのネットワークがボトムアップ注意には重要なことはもちろんですが、さらに注目してもらいたいのが、右側のみに存在していること!!

Yu-dai

半側空間無視の原因として腹側注意ネットワークが挙げられている理由がここにありそうだね!!

特に”TPJ”はトップダウン注意からボトムアップ注意への切り替えを行なっている重要な場所です。
損傷されるとトップダウン注意からボトムアップ注意への円滑な切り替えが阻害されることになります!

その他にも背側注意NW・腹側注意NWを形成する経路である白質繊維(上縦束:SLF)も重要なのですが、それはまた別の記事にまとめていきます!

まとめ

新人理学療法士

半側空間無視の病態やメカニズムについてまとめることで少し理解できた気がします!!

Yu-dai

そうだね!!
今回は左右半球の関係や頭頂葉・側頭葉など脳の局在的な話を中心にしたけど
SLFなど触れていない箇所もあるからまた別の機会にまとめていこう!

最終的には治療への活かし方まで整理できるようになると理想的だね!!

いかがだったでしょうか?
今回は半側空間無視の病態と
発現メカニズムについてまとめました!

次回は”半側空間無視の責任病巣や神経ネットワーク”を中心にまとめていき、より知見を深めていこうと思います!!

こちらの記事が参考になった方は下のバナーをクリックしていただけたら嬉しいです!
TwitterやInstagramのフォローもお待ちしています!!


理学療法ランキング

高次脳機能について普段から勉強している書籍はこちら!!

勉強になった方はシェアしてくれたら嬉しいです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です