Contents
はじめに
おばんです!
前回の記事からそのまま飛んできていただいた方も
この記事から読んでくださっている方も訪問ありがとうございます!!
前編からみたい方はこちら!
さて、本記事は補足運動野・運動前野を賦活させる介入方法にはどんなものがあるか?
という内容のものになりますが、
ここから話す内容としては”運動学習”についての内容が中心になります!
「なんだ、運動学習かー」とすぐにこのページを閉じずに最後まで読んでいただければ
運動学習だけではなく、
どんな運動や指導が運動前野・補足運動野を活性化しやすいのかが分かるようになる!
読者の皆さんが行っている練習内容の中で工夫すべき点を見出し臨床に活用できるようになる!
これらのことが判明していくと思うので最後まで読んでくれたら嬉しいでーす!
// /運動前野と補足運動野は『運動学習』で賦活される!
前回の内容で運動前野と補足運動野においては…
”運動学習”
これがキーワードになってきそうでした…
一口に”運動学習”といってもその種類やアプローチの仕方は数多くあります!
自分もこの記事を書くにあたって、似たような名前に惑わされながらも
以前よりもさらに運動学習について学ぶことが出来ました!!
”運動学習”自体についてはもう少し別の記事で詳しくやろうと思います!
今回は要所をまとめていきますね!!
皮質脊髄路と同様?運動イメージ・運動観察の重要性

まず重要なのが
運動イメージを患者に持たせること!
運動を
”観察する”
”イメージする”
これを意識して行わせることで
高次運動野は活性化すると言われています!!
運動イメージ中において補足運動野や運動前野、小脳、頭頂葉などの運動関連領域は賦活される
M Lotze et al: The Musician’s Brain:Functional Imaging of Amateurs and Professionals During Performance and imagery Neuroimage. 2003
このように”運動イメージ””運動観察”の両方が
運動前野と補足運動野の活性化を促します!!
どっちが良いの?と思うかもしれませんが、それは場合によるようです!
運動学習の初期段階において運動課題を学習するための戦略としては
Roberto Gatti et al:Action observation versus motor imagery in Learning a complex motor task:A short review of literature and a kinematic study Neuroscience Letters Volume 540 37-42 2013
運動観察が運動イメージよりも優れている。
このように運動学習の初期段階においては
実際の課題を見せてあげたり
動画を撮影したりしてあげることが良さそうですね!
他にも初期段階に重要なことはたくさんあります!!
それは別の記事に書きますが、Twitterでも簡単に紹介もしています!
自己ペースと外的ペース運動を使い分けよう!

自己ペース運動と外的ペース運動についてご存知でしょうか?
これは
課題開始や停止のタイミング
課題実行中のテンポやリズム
課題実行中に変化点を加えるetc
これらを患者自身かそれ以外で行うかによって分けられます!
患者自身で能動的にコントロールさせる=自己ペース運動
外的な刺激(声かけやメトロノームなど)でコントロール=外的ペース運動
自己ペース運動では、補足運動野‐被殻‐視床‐1次感覚運動野に強い機能連関が認められている。
谷脇 考恭:運動発現の脳イメージング 自己ペース運動と外的ペース運動-の脳内基盤- 認知神経科学Vol.8No.3 2006
また、外的ペース運動では、小脳前葉‐歯状核‐視床‐ 運動前野‐1次感覚運動野に強い機能連関が認められている。
補足運動野を賦活させたい→自己ペース運動
運動前野を賦活させたい→外的ペース運動
課題実施中についての工夫点として利用できそうですね!!
フィードバック制御とフィードフォワード制御を使い分けよう!!

次はフィードバックとフィードフォワードと運動前野・補足運動野との関係についてです!!
フィードバック・フィードフォワードについて
よく分からない人もいると思いますので
詳しく説明していきますね!
フィードバックとは?
目的とする動作と実行されている運動の誤差を知り修正しながら行う運動制御
フィードバックには種類がいくつかあります…
患者自身の視覚や感覚など患者自身で感じられるもの→内的フィードバック
リハ職種からの指摘(聴覚的フィードバック)など→外在的フィードバック
外在的フィードバックのうち…
課題と同時に行うフィードバックは
”同時的フィードバック”
課題終了後に行うフィードバックが
”最終的フィードバック”
課題実行中の鏡や声かけetc→同時的フィードバック
課題の後に動画を見せるetc→最終的フィードバック
運動パフォーマンスが高くなるのは最終的フィードバック
工藤孝幾ら:運動学習における視覚フィードバックの評価―同時フィードバックと最終フィードバックによるトレーニングの効果の比較―.体育の科学,27(8):592-597.(1977)
視覚的フィードバック群と聴覚的フィード バック群の両群において感覚運動皮質、補足運動野、小脳が活動していた.
長谷川直哉ら:.視覚フィードバックと聴覚フィードバックによる動的バランスの学習効果の違い.理学療法学 42(6):474-479,2015.
フィードバックを利用することで補足運動野は活動するんですね!!
フィードフォワードとは?
すでに記憶されている情報から目的とする運動に必要な運動指令を脳内で計算しておき、フィードバック情報に頼ることなく運動を遂行する制御
フィードフォワードはいわゆる”予測的姿勢調整”に関わってきます!!
補足運動野と運動前野で生成される運動プログラムには
姿勢制御のプログラム
随意的な巧緻運動のプログラムこの双方が含まれる.
前者は皮質-網様体投射と網様体脊髄路(内側運動制御系)を活動させて,予期的姿勢調整を誘発する.
高草木 薫:大脳皮質・脳幹-脊髄による姿勢と 歩行の制御機構 Spinal Surgery 27(3)208-215,2013
後者は巧緻運動のプログラムと一次感覚野からの感覚情報をもとに,一次運動野で運動指令が生成される.
このように補足運動野・運動前野もフィードフォワード制御に関わりがあるということですね!
補足運動野と運動前野の賦活にはどちらが効果的?

少し本題からずれました!
ここからが本題!!
この2つの制御が適用されるにはある一定の条件が存在します!
フィードバック制御の場合はこちら!!
数10~100msec程度のフィードバック時間の遅れがあるため,理論的にフィードバック制御が可能な運動は,数秒以上の遅い運動だけである.したがって,自然な速い随意運動をフィードバック制御だけで制御することはできず,後述するフィードフォワード制御が必要になる.
道 免 和 久:運動学習とリハビリテーション バイオメカニズム学会誌,Vol.25.No.4(2001)
つまり、フィードバック制御を用いるのようにするためには
例えば、ペグボードを用いた上肢練習や立位バランス練習などの
比較的動作速度が緩徐なものに限られます!!
例えば、歩行の獲得を目指す場合にはこれだと厳しそうですよね??
加えて、(外在的)フィードバックを多用しすぎるのは
課題のパフォーマンスの低下を引き起こす一因にもなります!
外在的フィードバックを頻繁に与え過ぎることで学習者はそれに依存してしまい、内在的 フィードバックの 1 つである運動感覚を利用した能動的な動作の修正を行わなくなる。その結果、外在的フィー ドバックを伴う練習中においてはパフォーマンスが優れているものの、外在的フィードバックがない保持テスト では正確な運動を行えないことが多い。
筒 井 清次郎 :運動学習におけるフィードバック頻度と注意の方向づけに関する経験差 ―サッカーのループパスによる的当て課題を用いて― 教科開発学論集 第 2 号 2014年
このように
声かけなどの外在的フィードバックの使いすぎは
実用的な動作の獲得を阻害してしまう可能性があります…
そこでもう一つの運動制御であるフィードフォワードの出番になります!
フィードフォワードは運動学習の最終過程である”自動化”にはなくてはならないものです
”自動化”とは今まで学習した課題が意識しなくても”自動的に”行えている段階です!
歩行で例えるなら、
患者本人が一歩一歩足の着く位置を確かめながら歩く→フィードバック制御
上記のことは考えずにただ歩く→フィードフォワード制御
このようになります!!
実用的な動作の獲得を目指す上で私たちが本人に獲得して欲しい段階としたら2つ目ですよね?
以上のことから、可能であれば
フォードバック制御→フィードフォワード制御
この順序を意識した指導をしていきたいところです!!
✔︎要チェック!
理学療法士としては
最終的に起立や歩行などにつなげていきたい!という気持ちが強いので
フィードフォワードを推していきたいですが
”フィードバックは良くない”と言っているわけではありません!!
脳卒中発症直後の方にいきなりフィードフォワード制御を求めるのは難しいです。
なので要は
”ターゲットにする運動制御を学習段階・動作獲得状況に応じて変えていこう”ということ!
歩行練習の場合…
歩行練習開始直後
→歩容を確認させながらゆっくりとした速度で練習させながら学習させていく。
学習した歩容が徐々に形になってきた
→歩行速度を上げて歩き方を意識させずに練習させる。
※この際、声かけなどの外在的フィードバックを極力行わない
このように行っていく必要がありますね!!
脳卒中リハの歩行練習において
CPGの賦活を意識した場合は0.7~1.4m/sec.と
通常歩行(1.2m/sec.)よりも速めに行うことを推奨されていますが
運動速度を意識することは運動学習の面からも非常に重要なことですね!!
褒める(強化学習)ことの可能性!

強化学習とは”報酬”を伴う学習のことです!
動物ですと、報酬は”餌”や”果物”だったりします!
報酬を伴う学習は効果的である
N. Abe et al.: Optimizing debt collections using constrained reinforcement learning, in Proceedings of KDD’10 (2010)
最近ではこのように言われておりますが、
ヒトの場合だと、
社会的な報酬(=褒められること)が学習を促進させる
Sho K. Sugawara :Social Rewards Enhance Offline Improvements in Motor Skill PLOS ONE November Volume 7 2012
このように褒めれることで学習が促進されると言われています!

また、褒められること(社会的報酬)によって
前頭前皮質内側部、尾状核や被殻などの領域が活性化する
Keise Izuma et al:Processing of Social and Monetary Rewards in the Human Striatum Neuron 58, 284–294, April 24, 2008
このように言われています!
前頭前野や尾状核、被殻などの基底核は、補足運動野と繊維連絡を通じて運動制御に関わってきます!
Parkinson病など大脳基底核が障害される疾患においては
前補足運動野や補足運動野の活動低下と系列運動学習の障害との関連
この関係性について報告されているものがあるほど、
基底核と補足運動野のつながりは強いです。
ここからはあくまで私見ですが
褒めること(強化学習)は
運動学習を促進するだけではなく、 基底核を通して前補足運動野や補足運動野に対しても良い変化を与える可能性があるのかもしれません。
まとめ
以上で補足運動野・運動前野を賦活させる介入方法についての後編も終わりです!!
前編・後編全体を通してのまとめをします!
- 運動前野や補足運動野は運動に意味をもたせ,運動を行う目的を決めるための領域
- 運動前野は感覚情報(主に視覚)と前頭前野の運動プランを合わせ運動野に出力する
- 補足運動野は感覚情報に基づいた運動選択・実行、記憶に基づいた順序運動を調整する
- 運動前野活性化→”新しい課題に取り組ませる””同じ課題でも変化をつける”
- 補足運動野活性化→”同様の課題を反復させて習熟させる”
- 運動イメージと運動観察は(残存する)皮質脊髄路、運動前野・補足運動野の賦活に重要
- 運動学習の初期段階においては運動観察の方が優れている
- 最もいいのは運動観察・運動イメージを併用すること
- 補足運動野を賦活させたい→自己ペース運動 運動前野を賦活させたい→外的ペース運動
- 運動特性の改変の有無にかかわらず運動の手順や方法、目的を明確化する必要性は高い
- フィードバック運動制御による学習は運動速度が遅い課題や学習の初期段階に用いるべし
- フィードフォワード運動制御による学習は運動の自動化を狙っている段階で用いる
そもそも補足運動野と運動前野を賦活させないと理由はなんなの?と思われている方は
こちらの記事をご覧ください!
この記事が参考になった方は下のバナーをクリックして応援していただけたら嬉しいです!
Twitterのフォローもよろしくお願いします!!
運動学習について理解を深めるためにおすすめの書籍
運動学習の神経生理学的なところから学ぶことが可能で、実際の臨床応用についても記載がされている良書です!!
個人的には良書です!
Amazonのレビューでも高評価!
こちらも理学療法士向けの運動学習についての本!
タイトルの通り、筋トレについてが中心です
応用的な内容を期待している人には物足りないかもしれません…
学生には取っ掛かりやすいんじゃないかなと思います
それと、トレーナーの方や運動指導者の方にも見ていただきたいですね!