【実はシンプル?】急性期脳卒中リハビリテーションにおける理論的背景と介入戦略について!!

急性期脳卒中リハビリテーションの理論的背景と介入戦略について

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はじめに

みなさんおばんです!

今回は、
急性期脳卒中リハビリテーションにおける
大まかな介入戦略を理論的な背景をもとに説明していきます!!

この記事を読むと

  • 急性期における早期運動療法を導入するメリット
  • 負荷設定や回数設定の選択
  • 介入する際に注意すべきポイント

これらのことについて考えるためのベースが築けます

急性期脳卒中リハビリテーションに携わっている
新人セラピストや実習生には
必見の内容になっているのでぜひ最後まで見ていってください!!

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急性期における運動麻痺回復メカニズムとは? 

まずは1st stage recoveryについておさらいです!!

脳卒中ステージ理論

残存している皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高めることで、麻痺の回復を促進する時期となる 

原 寛美:急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実際 :臨床神経学 2011:51巻11号:1059-1061

上の図で示されていますが、

皮質脊髄路の興奮性は急性期の時期から急速に減少し、発症3カ月までには消失します。

つまり、急性期における脳卒中リハは
入院中に皮質脊髄路の興奮性をどんどん高めていくことが重要になります!

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【結論】急性期脳卒中リハでおさえておくべきポイント!

まずは結論から伝えてしまいます!!

急性期脳卒中リハでおさえておきたいポイントはこれ!

急性期脳卒中リハで押さえておきたいポイント!!
  • 遅くても2-3週間以内から機能練習を開始しよう!
  • 練習回数はどんどん増やしていこう!!
  • 麻痺側を使用してもらえるような工夫をしよう!
  • 非麻痺側に頼りすぎないよう難易度設定をしよう!

これらのポイントが重要になっていきます!!
もちろん、リスク管理優先ですのでそこはお間違えなく

それではその理論的な背景について説明していきます!

【急性期脳卒中リハのポイント①】筋萎縮や廃用性筋力低下を起こさない!

まずは、誰でも思うかもしれませんが
臥床期間を無闇に引き伸ばして、廃用性の筋力低下を合併させないようにしましょう!

廃用症候群は脳卒中片麻痺の最も重要な二次的合併症であり, リハビリテーション医学における最も基礎的な課題の一つ

大 川 弥 生 上 田 敏:脳卒中片麻痺患者の廃用性筋萎縮に関する研究 -「健側」の筋力低下について- リハピリテーション医学 vol.25 no.3 1988

この論文においては

片麻痺患者群と対照群

この2群で左右上下肢でのトルク値の平均値を比較したところ…

片麻痺群は正常群と比較して

上肢:肘屈曲63.6~80.7%,
   肘伸展 67.5~81.6%,

下肢:膝屈曲42.2~63.6%,
   膝伸展63.0~75.7%

このように低下していることがわかりました。

また、このようにも話しています。

発症後の期間がたつほど筋力が低くなるという有意の高い負の相関がある

大 川 弥 生 上 田 敏:脳卒中片麻痺患者の廃用性筋萎縮に関する研究 -「健側」の筋力低下について- リハピリテーション医学 vol.25 no.3 1988

このように介入期間と廃用性筋萎縮の相関関係も明らかになりました。

このことから、脳卒中患者において以下のことが分かります

急性期での早期介入
廃用性の筋力低下を予防する上で重要!!

【急性期脳卒中リハのポイント②】critical time windowの概念

”critical time window”についてご存知でしょうか?

日本語に翻訳すると、”重要な時間的枠組み”という意味のようですが…

この概念を提唱したJeff Biernaskieらは

40匹のラットを

  • 社会的住居群
  • ER(enriched rehabilitation)群
    →ER5(発症から5日目)、ER 14、ER 30
  • コントロール群

この3つの群にランダムで割り当て
5週間のリハビリテーションの有効性を検討しました。

critical time windowとは
下記文献より一部改変し引用

ER5は、社会的住居群とコントロールの動物の両方と比較して、シナプスや樹上突起の再生を有意に認めた。 ER14およびER30においては社会的住居群と差は認めなかった。 

Jeff Biernaskie et al:Efficacy of Rehabilitative Experience Declines with Time after Focal Ischemic Brain Injury. The Journal of Neuroscience,  24(5):1245–1254 2004

 

このことから、
発症から2-3週間以内
随意運動出力系の可塑的再組織化を最大限に引き出せる期間であるという理論が生まれました

また、これも有名な論文になりますが…

リスザルの脳虚血モデルにおいて
発症から1ヶ月以降からの介入群では
手指の運動野(M1)の支配領域は50%萎縮し,運動によって萎縮を克服できない

Scott Barbay  et al :Behavioral and neurophysiological effects of delayed training following a small ischemic infarct in primary motor cortex of squirrel monkeys .Journal of Neurophysiology 89: 3205–3214, 2003 

これらの論文から分かるように
急性期における早期介入は、
患者の機能予後をも規定してしまうような重要な役割を担っているようです!

脳梗塞発症のおよそ2~3週以内が運動野の再組織化を最大限に引き出せるようですね!

急性期に勤めている者としては、
早期介入や離床に伴うリスクなどもしっかり踏まえた上で意識していきたいですね!

【急性期脳卒中リハのポイント③】学習性不使用を起こさない

学習性不使用(learned non-use)という概念は
Taubらが提唱しました。

麻痺肢が使えないのは,
麻痺に加えて運動を抑制するように条件づけられた学習がされたためである

Taub E, Uswatte G, Elbert T : New treatments in neu- rorehabilitation founded on basic research. Nat Rev Neurosci 2002 ; 3 : 228.236

発症当初は患者は麻痺肢を使おうとします。
しかし、自分が計画した通りの実行できずその行動は失敗に終わります。

この経験を行動心理学的には罰(punishment)になります

それは、麻痺側の使用を抑制することにつながります。

一方で
健側を使用すればその行動が成功します

この成功体験は強化(reinforcement)されます。

麻痺側での失敗

非麻痺側での成功

この反応が繰り返されることによって
大脳皮質での体部位再現は縮小し,麻痺肢をさらに使わなくなるという悪循環が生じます。

こちらの図を見ていただくと
脳損傷後にリハビリをする場合としない場合でどのような変化が起こるのか分かります!

学習性不使用とは?運動位においても廃用性変化が生じる
Nudo RJ,Plautz EJ,Frost SB(2001) Role of Adaptive Plasticity in Recovery of Function After Damage to Motor Cortex Muscle Nerve 24:1000-1019より一部改変し引用

これまで、

critical time window
learned non-use

この二つの概念について紹介しましたが、

簡単に説明すると、
脳の運動野においても筋肉と同じように廃用性の変化が生じうるということです!!

✔︎要チェック

この概念をもとに治療につなげたのが”CI療法”です!

健側肢を拘束し,強制的に麻痺肢使わせることによって
ADLにおいても麻痺肢の使用頻度が増加
→麻痺側の成功体験が強化され,患者の心理的なモチベーションに変容を起こします!

詳細は本記事では取り扱わないので是非調べてみてください!!

【急性期脳卒中リハのポイント④】半球間抑制を強めない!!

半球間抑制

次に半球間抑制についてです!

半球間抑制とは…

通常、両側の大脳半球は脳梁を介して相互に抑制し合い、
均等に働けるように調整し合っています!

しかし、片側の大脳半球にダメージを受けると、

非損傷側からの抑制が強まり
損傷側の活動性は低下します

さらに発症後の日常生活やリハビリ中に

非麻痺側のみで動こうとすると、損傷側への抑制はより強大になります。

つまり、損傷側の一次運動野の活動性も低下し皮質脊髄路の興奮性向上が阻害されます

1st stageにおいては皮質脊髄路の興奮性が最も高まっている状態です
その興奮性を僕たちの介入によって阻害してしまうのはあまりしたくありませんよね!

半球間抑制という理論からリハビリの介入について考えると…
非麻痺側での”過剰な努力”を誘発しないために

  • 課題の負荷設定
  • 介助方法の工夫
  • 口頭指示や視覚的なフィードバックの活用など

これらを意識した介入が必要ですね!!

【急性期脳卒中リハのポイント⑤】ワーラー変性を抑制しよう!!

残存皮質脊髄路の興奮性が低下する要因として関連するのが

”ワーラー変性”

ワーラー変性とは…

神経細胞が死滅ないし近位部の軸索が断裂すると、軸索は遠位側へ向かって変性し、それによって乏突起神経膠細胞からなる髄鞘が変性・脱落する

内野 晃:椎体路(皮質脊髄路)のワーラー変性 臨床放射線Vol.61 No.1:265-271 2016

つまり、皮質脊髄路に置き換えると、

テント上病変を発症した後にワーラー変性が生じることで

脳幹レベルにおける神経繊維の変性が起こるということです

ワーラー変性は、

組織学的には以下のように進行すると言われています!

急性期:軸索の腫脹と断片化、ミエリン鞘の破壊

亜急性期:有髄線維の喪失と泡沫状マクロファージの浸潤

慢性期:変性した線維が消失し、線維性神経膠症に置き換わる

Mastusue E,et al : Wallerian degeneration of the corticospinal tracts : postmortem MR-pathologic correlations. Acta Radiol 48 : 690-694,2007.

 

では、このワーラー変性は脳画像ではどれくらいの期間で起きるのでしょうか?

テント上病変のある33人の患者において
脳幹レベルでの皮質脊髄路のワーラー変性は、
T1・T2画像において異常な高信号領域として描かれる可能性がある。

同側脳幹の高信号は、発症後5週間からと早期に認める。33例すべてでは10週間後に完全に明らかになった。

画像変化は3~6か月で最も強かった。

同側の脳幹の萎縮は、8ヶ月で現れ、すべての症例で、発症後13ヶ月で認められた

Inoue Y, Matsumura Y, Fukuda T, Nemoto Y, Shirahata N, Suzuki T, et al. MR imaging of Wallerian degeneration in the brain stem: temporal relationships. Am J Neuroradiol 1990;11:897–902. 

つまり、

同側の脳幹における画像所見は
早い人で1ヶ月ちょっとから認めるようになるようです!

また、障害部位やその大きさによってもワーラー変性に影響してくるようです!

梗塞の場所やサイズなどでワーラー変性の有無の間には明確な関係があることがわかった。
運動皮質の大部分が障害された場合、
少なくとも中脳レベルまで、時には橋レベルまでワーラー変性を認めた。
小梗塞の患者においてはワーラー変性は認められなかった。

Stovring J: Wallerian degeneration of the corticospinal tract region of the brain stem: demonstration by computed tomography. Radiology 149: 717, 1983

ワーラー変性の有無は機能予後を予測する因子の一つにもなっている重要な項目です

現在、ワーラー変性を阻止するための有効な手段については
一定の見解が得られていない状態ですが…

これらの知見と今までの概念をもとに
いわゆる、”神経繊維における廃用”というイメージを持って


早期からリハビリテーションを行うことで

皮質脊髄路の興奮性を高めていく

これが重要なことではないでしょうか?

まとめ 

いかがだったでしょうか?

今回は概念・理論的背景が中心になっていますので
実際に人ではどうなの?というところはわかりません…

ですが、
これらの背景から様々な治療法が確立されてきていることもまた事実

この知識が頭に入っていると

練習中の環境設定や介助方法などの選択などが根拠を持って行えるようになるのでぜひ活用してみてください!!

それではまとめです!

本記事のまとめ
  • 急性期における運動麻痺の回復を図るためには”皮質脊髄路の興奮性を高める”ことが必要
  • 廃用性の筋力低下や筋萎縮を起こさないようにしよう
  • 発症から2〜3週間以内には運動療法を導入しよう
  • 残存している機能を見極めながら麻痺側を使用して学習性不使用を防ごう
  • 半球間抑制を強めないように非麻痺側を過剰に使用させないようにしよう
  • リスク管理は忘れずに!!

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