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はじめに

前回は脊髄損傷患者における
- 自律神経過反射
- 起立性低血圧
これら2つの機序やリスク管理にまとめました!!
今回はその続きです!
今までの記事をみたい方はこちらをクリック!!
【看護師・リハビリ向け!】脊髄損傷の障害像と急性期リスク管理についてまとめたよ!①
【看護師・リハビリ向け!】脊髄損傷の障害像と急性期リスク管理についてまとめたよ!②
今回は…
- 体温調節障害
- 体液調節障害
この2つに視点を合わせてまとめていけたらなと思います!
それではいってみましょう!!
// /脊髄損傷急性期リスク管理③体温調節障害

まずはじめに体温調節障害について!
病院の中というのは気温が一定になるように管理されています
そのため、
個人差もありますが”暑い””寒い”という感覚は感じにくいような環境になっていると思いますが…
脊髄損傷患者、ことさら頸髄損傷患者においては…
このように主張される方は少なくありません!
実際、脊髄損傷患者は熱を放散することができなくなっているので
身体の体温が上昇しています!

体温が上昇するとどんな問題があるの?
このように思っている方もいると思いますが…
- 運動パフォーマンスの低下
- 思考能力の低下
- 熱中症の危険性
これらの可能性が考えられますね!
人にもよると思いますが、軽症の熱中症を経験したことがある方は少なくないと思います
なので、僕が先ほど挙げた可能性もイメージしやすいのではないでしょうか?
本記事のタイトルは”急性期”ですが、
この体温調節障害は急性期以外でも残存している可能性があります!
回復期
慢性期
急性期以外の病期で活躍されるセラピストにも知っておいた方がいいですね!
特に訪問リハなんかですと、
自宅の冷房が十分に効いてない場合もありますから
運動負荷によりさらなる体温上昇を助長させてしまう可能性もあります!

病期にかかわらず体温調節障害に対する配慮が重要ってことですね!
それでは体温調節障害についてまとめていきましょう!!
- 自律神経損傷による発汗調節障害・皮膚血流調節障害が原因
- T11orT12より高位の損傷により交感神経系の皮膚血管運動の機能が欠落する
- 損傷レベルによる影響が大きく、高位になるほど貯熱しやすく,体温上昇が顕著
- 運動習慣の継続により室温への適応能力が獲得される可能性がある
- 対処法として、”身体冷却”という方法がある
- 身体冷却は”体外冷却”と”体内冷却”に分かれる
- 体外冷却→身体浸水、身体への水噴霧、冷却衣服・機器の着用
- 体内冷却→冷水冷却
体温調節障害についてその病態を紐解いていくと…
発汗による体温調節の損失=発汗調節障害
皮膚血管運動による熱放散の損失=皮膚血流調節障害
これらが原因で体温が調節できなくなります!
発汗調節→汗腺
皮膚血流調節→皮膚血管
それぞれ詳しくみていきましょう!
ちなみに汗腺・皮膚血管ともに交感神経支配のみです!!
神経支配の詳細についてはこちらで説明しています!
発汗調節障害
まずは発汗調節障害からまとめます!
✔︎下肢汗腺の中枢はL1~L2に存在
✔︎L2 以下の損傷では発汗は可能、それ以上の損傷では発汗が限定される
汗腺についてはこのように言われているようです!
高位損傷者は 25°C以上かつ湿度30 ~ 80%の環境において,健常者と比較し発汗量が少ない
Gemmer, H. J., Engel, P., Gass, G. C., Gas,s E. M., Hannich, T., and Feldmann, G.:The effects of sauna on tetraplegic and paraplegic subjects. Paraplegia, 30: 410-419.
損傷レベルが T5 以上では,交感神経性調節機能不全から発汗機能が損なわれる.そのため T6以下の損傷者とは体温調節に大きな違いが生じる
Guttman, L., Silver, J., and Wydham, C. H. (1958) Thermo- regulation in spinal man. J Physiol, 142: 406-419.

損傷レベルによって発汗機能にも差を認めるようですね!
また、環境についても自分は30℃程度くらいから影響がでるかと思っていましたが、25℃くらいからのようです!
損傷レベルによる影響はもちろんですが、
環境については自分が快適だと感じても
患者さんにとってはそうではないかもしれないということを頭の片隅に留めておきましょう!
皮膚血流調節障害
次は皮膚血流調節障害について!
✔︎皮膚温が33 ~ 34°C程度であれば皮膚血管の反応レベルは低い
(中立温度領域 )
✔︎T12~L1 以下の損傷においては運動負荷・温熱負荷に対して皮膚血流量の変化あり
皮膚血管の収縮・拡張により
皮膚血流量を増減させることで熱放散量が調整されます!
皮膚血管反応には反応レベルが低い”中立温度領域”という皮膚温の領域があります!
この領域を越えてくると、皮膚血管が拡張して熱放散量が上昇するわけです
汗腺の時と同様で、
損傷レベルによって皮膚血管への影響に変化が生じることは覚えておいた方がいいですね!!
C5からT10 までの被験者において下肢の血管拡張がなく深部体温の有意な上昇を認めた.T11~T12 ではわずかな血管拡張,L1 では健常者と同様の血管拡張を認めた.
Cooper, K. E., Helen, M. F., and Guttmann, L. :Vas motor responses in the foot to raising body temperature in the paraplegic patient. J Physiol., 136: 547-555.
一方,T7・8 とT11において皮膚血管運動に大 きな違いを有する

T11 または T12 より上位の損傷の場合は
皮膚血流調節障害が生じている可能性が高い
このように考えておいた方が良さそうですね!
体温調節障害への対処法
- 体外冷却→身体への水噴霧、冷却衣服などの導入指導
- 体内冷却→冷水飲用促し

冷水は1~4°Cくらいのものを用いると良いようです!
最近は熱中症対策グッズ(体外冷却)は豊富にあります!!
自分で試してみたりして、良かったものを患者さんに提案するのもいいかと思います!
ネッククーラーやズボンクーラーなどは比較的安価ですし、試してみるといいですね!!

僕らセラピストには体温調節以外にできることはないの?

確かに僕らが最も貢献できることと言ったらやはりリハビリですから
環境調整だけでは少し歯痒いですよね…
このような研究結果が示唆されています!
24ヶ月または48ヶ月の継続的な運動の実施は,
三上功生・蜂巣浩生・武田仁:継続的な運動が脊損者の温熱環境適応能力に及ぼす影響.日本生気象学会雑誌.53(4):145-164.
C7および T5 損傷者の室温への適応能力の獲得の可能性がある
被験者が取り組んでいた運動の内容は被験者ごとに任されていたようなので
さらなる検討の余地がありますが…
運動を継続することによって運動機能以外の機能も改善するということが示唆されたので
それを含め運動継続の重要性を患者さんに伝えたらいかがでしょうか?
そして、十分なリスク管理や上記対策をした上でリハビリを行なっていきましょう!!
// /脊髄損傷急性期リスク管理④ 腎機能・体液調節障害

最後が腎機能・体液調節障害について!!
脊髄損傷患者においては
腎機能障害・体液調節障害を認める場合があります!

脊損患者の場合、排尿障害はあるけど尿は普通に作られてますよね?
腎機能悪くなるなら尿自体作られないのでは??

尿を作る機能についてはホルモンによる調節になるので
自律神経障害があっても作用し続けるんですよ
ここでいう腎機能障害というのは…
Na(ナトリウム)排泄調節障害のことです!!
起立により腎交感神経活動が約 53%上昇し,ナトリウム排泄量が約 59%低下する.
田島 文博:脊髄損傷者に対するリハビリテーション Spinal Surgery 30(1)58‒67,2016
逆に心臓への静脈還流量を増やす頚下浸水では,腎交感神経活動は 43%減少し,ナトリウム排泄量は 3.4 倍に増加した.
交感神経により腎臓におけるナトリウム排泄量が調節されています!!
そのため、
脊髄損傷患者においては
Na排泄量を調節(減少させること)ができません
つまり
”低ナトリウム血症”が引き起こされる場合があります!!
低ナトリウム血症によって
意識障害が出現する場合もあるため生化学検査をチェックしておく必要があります!!
低ナトリウム血症に対してリハビリにできることはありませんが…
脊損患者で意識障害を呈していた場合には
何が原因なのかを考えるクセをつけておきましょう!
脊髄損傷患者が意識障害を呈していたら?
こちらは少し番外編
脊損患者は脳卒中と違って意識清明なことが多いですが、
場合によっては介入時に意識障害を呈しているかもしれません…
- 発熱によるもの
- 血圧低下によるもの
- 脳出血を呈している
- 低Na血症によるものetc
これら全て
今までまとめてきた脊髄損傷患者における合併症によって引き起こされる可能性があります!
最終的な診断をするのは医師ですが、
なぜ意識障害が起こっているのかを自分でも考えて
事故につながる介入だけはしないようにしましょう!!

なぜ、意識障害が生じているのかわからない場合には先輩や他職種にすぐ相談しよう!
まとめ
いかがだったでしょうか?
これで脊髄損傷患者におけるリスク管理についての記事は終わりになります!
自律神経が作用する臓器によって症状は違いますが、
最終的に意識障害を呈す可能性があることは全てに言えることです
それではまとめです!!
- 体温調節障害の要因は発汗調節障害・皮膚血流調節障害
- 胸椎・上部腰椎レベル以上の損傷で認める
- 症状の程度は損傷レベルに依存、高位になるほど貯熱しやすく,体温上昇が顕著
- 対処法として、”身体冷却”という方法がある
- 身体冷却には”体外冷却”と”体内冷却”がある
- 腎機能・体液調節障害により低Na血症となる可能性がある
- 自律神経障害による様々な生体調節機能が障害され意識障害を呈する可能性あり
- 意識障害の理由は様々なため原因がなにかを考えて介入しよう
- わからない場合は先輩や他職種に相談しよう

いきなり全てを理解することは難しいですから、わからない場合には必ず相談!
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