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はじめに
おばんです!
Yu-daiです!!
今まで脊髄損傷の病態やリスク管理などを中心にまとめてきました!
関連記事はこちら!!
今回からは
機能回復やADL、歩行などの予後予測が可能になる
リハビリで用いられている評価法についてまとめていこうと思います!!
理学療法士としての介入の中心は
機能改善に着目した内容にどうしても偏りがちです
機能予後がかなり良好な場合はそれでも良いかもしれませんが
そうでない場合…
残存する機能を中心とした代償動作を獲得するために
その方法を患者と共に模索していかなければなりません!!
急性期で新人を指導していると
介入や練習内容がどうしても機能改善に偏っている傾向があります!

今後の機能やADLの予後がどうなっていくのか分からないと介入する側としても不安だよね
そこで、大事になってくるのが…
予後予測に用いられる評価を使用すること!!
皆さんも良く知っている評価法の結果を基にして予測することが可能です!
機能予後について知ることで、
- 機能改善を中心とした介入が良いのか
- 代償動作の獲得を中心とした介入が良いのか
もちろん介入時期や患者の希望などによって変化しますが…
比較的早期から代償動作の獲得に向けた介入についても考えられるようになります!!
それでは脊髄損傷患者の予後予測に用いられる評価についてまとめていきましょう!
// /頸髄損傷の機能予後に使用!【改良Frankel分類】
まずはFrankel分類について簡単に紹介します!!
Frankel分類とは?
Frankel分類は1969年にFrankelらによって報告されました!!
脊髄損傷者の
- 運動
- 感覚機能
- 歩行能力
これらを尺度として
機能残存パターンをA~Eの5段階に分類しました!!
Frankel分類 | |
---|---|
A (完全麻痺) | 損傷高位以下の運動・感覚の完全麻痺 |
B (不全麻痺) | 損傷高位以下の運動は完全麻痺で感覚は不全麻痺 |
C (不全麻痺) | 損傷高位以下の運動は不全麻痺だが実用性がない |
D (不全麻痺) | 損傷高位以下の運動は不全麻痺で実用性あり 歩行補助具の有無にかかわらず歩行可能 |
E(回復) | 神経学的脱落所見はない ※自覚的しびれ感,腱反射亢進はあっても良い |
このように分類されます!!
この分類は医師のカルテにも記載されていることも多いかと思います!
残存している機能について
大まかに表すことができるため簡便かつ使いやすいのが特徴!!
ただし、機能予後を予測するにあたっては
”改良Frankel分類”が使用されます!!
改良Frankel分類だと何が違うの?

改良Frankel分類だと何が違うの?

改良Frankel分類の場合はB~Dの項目がさらに細分化されるんだ!
胸腰椎不全損傷における改良Frankel分類はBradfordら(1987)が
頸髄損傷における改良Frankel分類は福田ら(2001)が考案しています!!
今回は頸髄損傷患者の機能予後によく用いられている
福田らの改良Frankel分類を用いた予後予測についてまとめていきます!
福田らの改良Frankel分類とは?
まずは福田らが考案した改良Frankel分類について紹介します!
A (motor, sensory complete) | 運動・感覚ともに完全麻痺 |
B (motor complete,sensory only) | |
---|---|
B1 | 仙髄領域のみの触覚保存 |
B2 | 仙髄領域だけでなく広範な範囲で触覚保存 |
B3 | 痛覚不全麻痺 |
C (motor useless) | |
---|---|
C1 | 下肢筋力1〜2程度 (過半数が2以下) |
C2 | 下肢筋力3程度 (仰臥位で膝立可) |
D (motor useful) | |
---|---|
D0 | 下肢筋力4〜5 歩行可能そうだが急性期管理で評価困難 |
D1 | 屋内・平地であれば10〜100m位可能 屋外歩行は困難 日常生活では車椅子を併用 (杖・装具使用可) |
D2 | 屋外歩行も安定し車椅子は全く不要 (杖・装具使用可) 上肢機能が悪く日常生活に部分介助を要する場合 |
D3 | 杖・手すり・装具を使用せずに完全な独歩で可能 上肢機能も含め日常生活に介助は不要 (軽度の筋力低下・感覚障害残存) |
E (normal) | 筋力低下・知覚障害なし (しびれや反射亢進はあっても良い) |
この表のようにB~Dの項目においてさらに細分化されることが分かります!
改良Frankel分類を用いた頸髄損傷患者の機能回復予測
それでは改良Frankel分類を用いた予後予測がどのようなものかまとめていきます!!
改良Frankel分類は, 四肢麻痺の機能障害を一層明瞭に評価できるだけでなく,急性期頸髄損傷の神経学的回復において予後予測に有用である.
福田文雄 植田尊善:改良 Frankel 分類による頸髄損傷の予後予測 リハビリテーション医学2001; 38: 29-33
急性期での改良Frankel分類による重症度の分類によって神経学的な予後が変化するというものですね!
それでは、こちらの論文から引用させていただいた
こちらの図を参考にしてまとめていきましょう!!
まずは分類A・B・CからD以上への回復例!!

次は分類A・B・C・D0からD2以上までの回復例について!!

これらの表のポイントを整理してみます!!
B3(痛覚が残存した)とB1・ B2とを比較した結果
B3の方が歩行可能レベルまで回復する割合が多い
D2以上になる例はB3でも約半数程度
B3と同様で歩行可能レベルまで回復する割合が比較的多い
C1とC2の間にも回復割合に有意な差を認めている
C2以上においてはD2以上へと到達する可能性が高い
このように、
- 少なくともB3以上であれば歩行可能となる確率が高い
- C2以上であれば屋外歩行も可能となる可能性が高い
これらのことがわかります!!
// /脊髄損傷のADL予測に使用!【改良Zancolli分類】
次はZancolli分類についてです!!
Zancolli分類とは?
Zancolli分類は
アルゼンチンの手の外科医Zancolliが
頚髄損傷四肢麻痺の上肢機能再建術の適応と術式決定の目的に報告しました!!
その報告はこちら!!
E:Structural and dynamic basis of hand surgery, functional restoration of the upper limbs in complete traumatic quadriplegia. 155-174, Lippincott, Philadelphia, 19689) Yoshimura O, Maejima H: Possibility of Independence in ADL for Patients with Cervical Spinal Cord Injuries-An Evaluation based on the Zancolli Classification. Hiroshima J Med Sci 47(2): 57-62, 1998
正式名称は
”Zancolli上肢機能分類”

分類方法としては図のように
C5~C6
C6~C7
C7~C8
C8~Th1
この4グループに分け
それぞれを運動機能によってAとB2つのサブグル ープに分けています
機能髄節レベル | サブグループ | 分類 |
---|---|---|
C5~C6 | A:腕橈骨筋機能なし B:腕橈骨筋機能あり | C5A C5B |
C6~C7 | A:手関節背屈力弱い B:手関節背屈力強い Ⅰ.円回内筋の機能なし 橈側手根屈筋の機能なし 上腕三頭筋の機能なし Ⅱ.円回内筋の機能あり Ⅲ.円回内筋の機能あり 橈側手根屈筋の機能あり 上腕三頭筋の機能あり | C6A C6BⅠ C6BⅡ C6BⅢ |
C7~C8 | A:尺側指完全伸展可能 B:全指伸展可能だが母指の伸展弱い | C7A C7B |
C8~Th1 | A:尺側指完全屈曲可能 B:全指完全屈曲可能 Ⅰ.浅指屈筋機能なし Ⅱ.浅指屈筋機能あり | C8A C8BⅠ C8BⅡ |
このような分類方法を基にして医師は手術適応の判断などを行っています!!
しかし、
今回の本題である機能予後の予測については
Frankel分類と同様でさらに改良したものがよく用いられています!

この分類方法でも十分そうじゃない?
C6を細かく分けているから車椅子でのADLを獲得できそうかどうかもわかるよね!

確かにそう思うよね!
だけどこれから紹介する改良Zancolli分類を発案した吉村先生達はこのように述べています!!
寝返り,起き上がり,移乗,移動,更衣,排泄などの動作が自立するか否かの判断に重要な肩甲帯筋群の評価がない.
吉村 理 ら:改良 Zancolli 分類による頚髄損傷者のADL自立の可能性 広島大学保健学ジャーナル Vol. 1(1):73~77,2001
また従来肘伸展筋である上腕三頭筋はC7髄節筋であるが,Zancolli分類 ではC6髄節残存群のサブグループとしているのは混乱をまねき,あくまで上肢機能再建術のために作成された分類であると理解すべきである.
- 基本動作やADLの獲得に欠かせない肩甲帯筋群(C1~C4)の評価がない
- 上腕三頭筋がC6に分類されている
この2つの問題点を指摘し、これらの欠点を補うために作成されたのが
”改良Zancolli分類”です!
吉村らが発案した改良Zancolli分類とは?
改良Zancoli分類のポイントについてまとめてみましょう!
Zancolli分類にないC1からC4の運動機能を加えたこと
C1~Th1までに存在する8筋の筋力を網羅し頸髄損傷における全高位を示すことが可能
8筋とは以下の筋肉になります!
- 頚部筋(僧帽筋・胸鎖乳突筋)
- 三角筋
- 上腕二頭筋
- 手根伸筋
- 上腕三頭筋
- 指伸筋
- 指屈筋
- 骨間筋
頸髄損傷によって起こりうる
全ての高位を8つの筋のみで評価することが可能になりました!

改良Zancolli分類を用いた頸髄損傷患者のADL到達度予測
この分類法を使用しADLの予測を行うわけですが
例を挙げるとこのようになります!!


こちらの表の内容は他にもあり、これはほんの一部になります!
改良Zancoli分類によるADL獲得の可能性については
高位ごと
ADL項目ごと
これらの中でかなり詳細に細分化されています!
図で示したものは基本動作を中心とした内容を抽出しただけで
まだまだたくさんのADL項目について検討されています!
気になった方は、下に論文のURLを載せておきますのでぜひご覧ください!!
https://core.ac.uk/download/pdf/222932239.pdf
まとめ
今回は脊髄損傷患者における予後予測について
”機能回復予測”
”ADL到達予測”
これらの項目について改良Frankel分類と改良Zancoli分類を用いた方法を紹介しました!!
次回は
脊髄損傷患者における歩行能力の予後予測についてまとめようと思います!
気なる方はぜひみにきてください!!
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予後予測についてはまだよく知らないし
急性期はとにかく離床をすすめて廃用をださないようにしないと…