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はじめに

今回は脊髄損傷の障害像と急性期におけるリスク管理についてまとめていきます!!
急性期で脊髄損傷の方を担当する上で
その障害像とリスク管理についての知識は必須!
脳血管疾患等リハビリテーション料で算定できるのは
この脊髄損傷を始め…脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍etcと多々ありますが…
これらの疾患名を聞いた時にみなさんがハッと思い浮かぶ障害像としては…
運動麻痺や感覚障害、高次機能障害が中心ではないでしょうか?
脊髄損傷においては
運動麻痺や感覚障害に次いでもう一つ忘れてはいけないものがありまして…
知っている方もいる方もいるかもしれません!
最後の1つは…
自律神経障害
この自律神経障害についての知識を得ることは
急性期の脊髄損傷患者に介入する上では避けては通れません!!
自律神経障害は自律神経の損傷によって生じる障害の総称です!
自律神経が障害されることで離床の際やリハビリ介入時にどのような影響が及ぶのか…
全て把握できていますか?
この問いかけに対してすぐに頭に浮かんでこなかった方は
ぜひこの記事で一緒に勉強していきましょう!
脊髄損傷の障害像とは?【運動麻痺 感覚障害 自律神経障害】

脊髄損傷のその障害像とは…
冒頭でも説明していますが
運動麻痺・感覚障害・自律神経障害
この3つになります!!
脊髄のどの部位の損傷でこれらの障害が生じるかというと…
運動麻痺:脊髄側索を通る皮質脊髄路の損傷
感覚障害(温痛覚):脊髄側索を通る外側脊髄視床路の損傷
感覚障害(振動・位置覚):脊髄後索(薄束核、楔状束核)の損傷
運動麻痺と感覚障害は脊髄の側索や後索を通る神経繊維の損傷によって引き起こされます!
そして自律神経障害について!
自律神経障害:灰白質側角の損傷
自律神経の細胞体は灰白質の側角という箇所にあります!
しかし、この表記だと少し不十分なんです…
なぜ不十分なのか?
自律神経には交感神経と副交感神経があるからです!!
この2つの神経が協調しながら各臓器に作用することで
その場面に応じた身体の状態を変化させることが可能になります!!
リスク管理について話す前にこれら2つの神経について知っておきましょう!!
脊髄における交感神経と副交感神経について少しまとめていきます!
// /【自律神経は2種類!】交感神経と副交感神経の違いについて

交感神経と副交感神経の間にどのような違いがあるか皆さんは知っていますか?
もちろん、生理学的な反応は違います!!
ですが、それは神経の走行や神経伝達物質など様々な要因があるんです!
それらについてまとめていきましょう!!
違い①神経の走行
2つの神経の違いをまとめるとこんな感じです!


交感神経:灰白質側角から前根を通り、交感神経幹を経て各効果器へ(胸髄・腰髄)
副交感神経:灰白質中心管付近から前根を通り、骨盤神経として効果器へ(仙髄)
頸部レベルでは各脳神経核から発生する
さらにこの2つの大きな違いについて説明しましょう!
交感神経と副交感神経では2つ大きな違いがあります!
- 神経が出ている髄節や経路が違う
- 効果器に到達する神経伝達物質が違う
それでは交感神経と副交感神経の違いについてより詳しく説明していきます!!
交感神経の場合

交感神経の場合…
身体の中心(胸髄~腰髄)の側角から神経が出ていますが
脊髄をでた後に脊髄の横にある何かを経由しているのがわかると思います!!
脊髄の横にあるものは”交感神経幹”といって
交感神経の経由地点のようなものです!
左右1つずつ脊髄の前外側を頭蓋骨底~尾骨に沿うように存在します!!
この交感神経幹を使って交感神経は上位or下位の髄節の神経と交通可能となります!
- T1からでる交感神経→頭部に分布
- T2からでる交感神経→頸部に分布
- T3-5からでる交感神経→胸郭に分布
- T7-11からでる交感神経→腹部に分布
- T12―L2からでる交感神経→下肢に分布
このように胸髄~腰髄にかけて髄節ごとに様々な領域に分布することが 分かります!
また、この交感神経幹から直接発生して内臓へ走行する神経なども多くあるため
交換神経幹自体も自律神経活動にとって非常に重要な要素の一つです!
副交感神経の場合

副交感神経は脳幹と仙髄から神経枝が出ており、脳神経の一部と関わりを持っています!
主に胸・腹部臓器を支配
上の説明を見たときに
脳神経の中でも迷走神経がほとんどの臓器を支配しているのが理解できるでしょうか?
その割合はおよそ75%!!
この75%には
気管・肺・心臓・胃腸・腎臓etc
生命活動に必要な臓器は全て含まれています!!
特に心臓や肺などはリハビリ介入時のリスク管理には非常に重要!
ちなみにその他の神経支配代表として…
動眼神経・顔面神経・舌咽神経→瞳孔、唾液腺
仙髄→骨盤神経
このようになっています!
高位頸髄損傷者でも迷走神経は中枢性の制御を受けることが可能
これは迷走神経
つまり胸部・腹部の臓器への副交感神経は高位頸髄損傷でも影響がないということです!!
なので交感神経や骨盤神経などの仙髄由来の副交感神経と違い
中枢からの制御が途絶えることなく支配臓器の制御は可能になります!
つまり、脊髄損傷におけるリスク管理を考えた上では
- 交感神経
- 仙髄由来の副交感神経
これらの制御が困難になった結果どのような現象が起こるのかを考えていくとリスク管理について理解しやすそうです!!
違い②神経伝達物質の違い
次に神経伝達物質の違いですね!!
こちらの図をご覧ください!
神経伝達物質は…
アセチルコリン
ノルアドレナリン
この2つの神経伝達物質が存在します!!
交感神経と副交感神経の違いとして…
交感神経の節後繊維でのみノルアドレナリンが神経伝達物質として使われる点です!!
つまり、最終的に効果器へ作用するための神経伝達物質が…
交感神経:ノルアドレナリン
副交感神経:アセチルコリン
このように違ってきます!!
一部例外として…
- 交感神経節後繊維でアセチルコリンを受容する効果器がある場合
→例:汗腺・立毛筋 - 節後繊維がなく脊髄から直接効果器へ伝達される場合
→例:副腎髄質(副腎髄質からはノルアドレナリンやアドレナリンが分泌)
これらの例外については把握しておく必要があるでしょう
他にも神経伝達物質がありますが、今回はこの2種類について知っていただくだけで良いかと思います!!
これらの神経伝達物質を心臓やその他の臓器の受容器が受け取ることで作用します!
各臓器に対する自律神経(交感神経・副交感神経)の効果について
次に自律神経によって生じる各臓器への効果がどのようなものかサラッとおさらいしておきましょう!!

リスク管理にとって特に重要になってきそうな臓器は…
- 血管系
- 心臓
- 呼吸器
- 胃腸etc
こんなところでしょうか?
次の記事でこれらの臓器を中心としたリスク管理について説明していきますね!!
まとめ
ここまでのまとめです!!
- 脊髄損傷の場合、主な障害像として運動麻痺・感覚障害・自律神経障害が挙がる
- 急性期脊髄損傷患者に対するリスク管理を行う上で自律神経障害について理解することは必須
- 自律神経には交感神経と副交感神経がある
- 交感神経は主に胸髄~腰髄レベルから神経をだし、神経幹を経て各臓器へ伝達する
- 副交感神経は脳神経の一部、仙髄レベルから神経をだし、直接各臓器で伝達する
- 脳神経においては迷走神経が全臓器の75%を副交感神経として支配している
- 交感神経はノルアドレナリン、副交感神経はアセチルコリンを神経伝達物質として用いる
- 交感神経と副交感神経で各臓器を刺激した効果は違う
次回でリスク管理について詳しくまとめていきます!!
気になる方はそちらの記事もみにきてくれたら嬉しいです!
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主に頸部より上の臓器を支配