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はじめに
おばんです!
今回は、心不全についてまとめていきましょう!
みなさんは”心不全”というものについてどれくらい知っていますか?
心筋梗塞や弁膜症などの心疾患はもちろんのこと、脳卒中患者においても認めることは少なくありませんよね?
時には心不全によって不整脈が出現し、心房内に血栓が出現し、飛んでいってしまうことで”心原性脳塞栓症”となってしまう場合もあります。
そのほかにも”心不全”に陥ってしまう要因は多岐にわたりますが、
”心不全”という状態がどんなものか?
”心不全”に陥った要因は何なのか?
増悪させてしまう因子は何なのか?
上記の疑問を解決せずに
急性期におけるリハビリテーションの介入を行ってしまうのは非常に危険です。
また、急性期だけでなく
回復期、生活期全ての病期においてこれらの知識は必要です!
この患者は
”脳卒中だから”
”整形だから”
みなさんはそう思っていても、
既往歴には”慢性心不全”
この言葉が記されているかもしれませんよ?
他の人と同じように負荷量をどんどん上げていっても良いでしょうか?
”自分の手で患者さんを良くするんだ!”という素敵な思いはそのまま大切にしてもらって
自身の介入によって患者さんの状態を悪くしてしまう危険性ということも
リハビリにはあることを理解して日々の臨床に取り組んでくれたら嬉しいです。
しっかりと心不全について学び、リスク管理や日々の練習における負荷量の選定などに生かしていきましょう!!
// /心不全におけるリスク管理
じっくり読む余裕がない方のために
はじめにこの記事の本題について話します!!
心不全のリスク管理に必要な項目をお伝えします!
急性期心不全の離床プログラムについて
日本心臓リハビリテーション学会が心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012 年改訂版)に準拠して作成したものがあります。

ログラム(2017 年版)
施設によってはこれを基にして病院ごとに離床プログラムを作成していたりするかもしれませんね。
僕の職場もですが、基本的に重症心不全の方は病態や基礎疾患(心筋梗塞とかね)が落ち着いてからリハビリ処方されることが多いです。
しかし、それでも病態が安定しているわけではないので医師や看護師だけでなくリハビリにおいても全身状態を見極めてリスク管理を行いながら介入することは非常に大切。
それではまとめていきますね!
基本的に、リハビリの中止・中断基準に従うのはもちろんなのですが、
自分はこれらの症状や検査の数値が悪化していないかを確認しながら
- リハビリを行なうかどうか
- 運動量を増やすかどうか
これらを決定しながら介入します!
下記の項目は心不全のみに焦点をあてていますので、そのほかの疾患を合併されている場合はそちらのリスク管理もしましょう!
介入前に調べられるもの
まずは介入前の情報収集から!昔から段取り8割と言われていますから非常に重要!!

- 身体所見(看護師さんや医師の記載などから)
体重が増加していないか
尿量が減っていないか
お通じの性状はどうかetc
- 胸部レントゲン
胸水が出現していないか・増悪していないか
心拡大が増悪していないか - 心電図モニター(スキャンしてカルテに読み込んでいるもの)
心房細動などの不整脈が出現していないか
頻脈や徐脈になっていないか - 薬品
ジゴキシンやβ遮断薬、利尿剤が増量されていないか?
その他にも心エコーやBNP(1月に1回しか算定できない)などあまり頻繁に測定されない(できない)データも前日・当日に取られているようでしたら非常に有用な情報なので要チェック!!
また、介入中に調べられるものについても看護師さんが記載しているようならチェックしておいて介入したときに確認してみましょう!
まずは、これらの情報を確認してその日の予定を大まかに決めています。
最終的な判断は実際にその他の自覚症状などを確認してからです。
介入中に調べられるもの
介入中に調べられる項目には色々あります!

- 自覚症状
前回介入後に強い倦怠感が持続していなかったか
安静時から呼吸困難や息切れ、頻呼吸が出現していないか
運動時における上記の症状が以前よりも増強していないか
- 身体所見
足部の浮腫が増大していないか
四肢に冷感が出てきていないか
足部の皮膚色が青紫になっていないか
顔面蒼白していないか
- 心電図
頻脈・徐脈になっていないか
一過性心房細動・心房細動へ移行していないか
心室性期外収縮が増加していないか
- SpO2モニター
経皮的酸素飽和度の数値が低下していないか
こんなところでしょうか?
リハビリのガイドラインには
リハビリを中止にする基準や中断する基準は明確なものがありますが、
最も難しい判断は運動量の調整についての判断!
- リハビリステージを進めて良いのか
- 同様の負荷量で行うのか
- 負荷量を減らすべきなのか
これらの判断をするためにも上記でまとめた項目を総合的に判断して決定していくことが必要です。
まずは、一つ一つ確認して評価!
評価して判断がつかない場合は先輩や医師に相談しましょう!!
どういう所見や症状があるのかをまとめられていないと相談された側としても判断に困るので、自分にできることは最低限行なって聞きましょ!
ここら辺は経験則に基づいた判断に迫られる場面も少なからずあるので、新人や若手の頃は判断ができなくても恥じる必要はありません!
リスク管理についてまとめさせていただきましたが分かりやすかったでしょうか?
ここからは心不全の病態や先ほどのリスク管理で挙げた項目の少し詳しい部分を話していこうと思います。
最後まで読んでくれたら嬉しいです!
// /心不全とは

心不全とは、”疾患名”でないことはご存知ですか?
心不全とは
“心機能低下に起因する循環不全”と定義され、
心臓が全身の組織における必要量に応じて、血液を十分に送り出すことができない状態です。
かなり簡単にいうと”心臓が弱っている”状態ですが
定義については頭の片隅に置いておきましょう。
ちなみに心臓は
1回の心拍出(1回拍出量)で約70ml
1分間あたり心拍数が70回程度と仮定するなら、70ml×70回=4900ml
1分間で約5Lもの血液を心臓から送り出しています。
運動によって必要量が増えるとそれに応じてその量を増やしていきます。
発症の仕方によって
”急性心不全”
”慢性心不全”
に分けることができます!
慢性心不全とは?
先に慢性心不全についてからまとめていきます!
慢性心不全は下記のように定義されています
慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない状態であり、肺・体静脈系または両系にうっ血を来たし日常生活に障害を生じた病態
慢性心不全治療ガイドライン(2010 年改訂版)
簡単に説明すると、
心機能低下に起因した循環不全によって
労作時呼吸困難や四肢の浮腫などの症状が長期間(慢性的に)認められる状態です。
上記のような症状によって、自宅内外での活動量低下やQOLの低下などを障害してしまいますが
時には、急性増悪を起こしたり、致死性不整脈が出現し”突然死”を引き起こす可能性があります。
詳しい機序は急性心不全で説明しようと思うのでここでは割愛します!
急性心不全とは?
急性心不全とは、
心臓に器質的および・あるいは機能的異常が生じて急速に心ポンプ機能の代償機転が破綻し、心室充満圧の上昇や主要臓器への灌流不全をきたし、それに基づく症状や徴候が急性に出現した状態
急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版)
急性心不全は大きく2つに分けられます
”新規発症の急性心不全”
”慢性心不全の急性増悪”
急性期においては、感覚的に下の慢性心不全の急性増悪で入院される方の方が多いように感じます
実際の研究でも
急性心不全患者の87%が新規発症ではなく慢性心不全の急性増悪であった
Gheorghiade M, Filippatos G, Luca LD, Burnett J. Con- gestion in acute heart failure syndromes: an essential tar- get of evaluation and treatment. Am J Med 2006; 119: S3-S10.
このように多いようですね。
急性心不全の病態についてはその要因や状態が症例ごとに異なっているため一様に述べることは困難といわれています。
”新規発症の急性心不全”については、
- 急性冠症候群心筋梗塞や不安定狭心症などの広範囲の虚血による機能不全
急性心筋梗塞による合併症(僧帽弁閉鎖不全など)
右室梗塞 - 重症の弁狭窄
- 弁逆流症:心内膜炎・腱索断裂
- 高血圧症
- 不整脈の急性発症(心室頻拍、心房細動やその他)
- 大動脈解離
- 急性心筋炎
- 産褥性心筋症
- 肺高血圧症
- 肺塞栓症
- 心タンポナーデ
- 先天性心疾患(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症など)
- たこつぼ型心筋症
- 高心拍出量症候群(貧血、敗血症、甲状腺中毒症など)
このようにたくさんの原因が挙げられます。
基本的な考えとしては、上記のような疾患などによって新機能が破綻してしまうのが
”新規発症の心不全”です
では、慢性心不全からの急性増悪とは一体どんな機序で引き起こされてしまうのか?
次はそれらについてまとめていきます!
慢性心不全からの急性増悪に至る機序としては以下のようになります!

難しかった用語についてはこの目次の一番下にまとめていますのでみてください!
心不全発症にともなう病態としては、
”収縮不全”
”拡張不全”
この2つに分けられていますが、
近年の研究では
”拡張不全”でも収縮機能が低下していると示唆する研究がでてきており、
またその逆も然りのようです(収縮不全でも拡張機能が低下する)
そのため、現在は
拡張不全と収縮不全は独立した病態ではなく、1つの連続した病態であることを考えていこうという意見もあります。
これについては、また別の記事で詳しく書いていこうと思います。
慢性心不全から急性増悪させてしまう増悪因子について以下にまとめました。
- 水分・塩分摂取過多
- 感染症(敗血症・肺炎)
- 重度脳卒中
- 腎機能低下
- 服薬コンプライアンスの低下(自己中断など)
- 術後
- アルコール多飲
- 喘息
- 過労、不眠、情動的・身体的ストレス
いかがですか?
心不全の状態に陥ってしまう理由は心疾患という直接的な理由だけではなく
感染症や脳卒中などの様々な要因が元になってしまう場合もあります。
今回の私の記事においては、心不全患者におけるリスク管理についての内容になっていますが、
私自身脳卒中を主に担当していることもあり今後の記事で”急性期脳卒中患者”における心不全の急性増悪に視点をおいたものも書こうと考えています。
今までの記事の中で理解するのに難しかった単語がなかった方はここをクリックすると次の目次【心不全に認める症状】に飛べます!
神経体液性因子の活性化とは?
収縮不全・拡張不全によって心拍出量が低下するために,主要臓器への灌流が低下し,それを代償するために,神経体液性因子が活性化します。
活性化しその活動が亢進することで臓器への血流を保とうとします。
神経体液性因子とは?
上のように血行動態を調節する因子として
- 神経性調節機構(交感神経)
- 体液性調節機構(RAAS:レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)
この二つの機構を総じて神経体液性因子と呼びます
神経性調節機構は血管に作用して(血管収縮による末梢血管抵抗の増加)血圧を上昇させるだけでなく、レニンの産生を促進してRAASの作用を強めます!
体液性調節機構による昇圧の機序については以下の図にまとめておきました!

レニン・アンジオテンシン・アルドステロンとは?
- レニン:腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞から分泌される。血液中にある暗示お天使ノーゲンからアンジオテンシンⅠという物質を作る
- アンジオテンシン:アンジオテンシンⅠとアンジオテンシンⅡがある。
アンジオテンシンⅡは全身の血管(動脈)収縮に働きかけたり、
副腎皮質ホルモンであるアルドステロンを分泌させる - アルドステロン:腎臓に働きかけてNaの再吸収を促し、循環血液量を増加させる
アルドステロンについては良い働きだけではありません。
アルドステロンの過剰産生やその活性化によって心臓のリモデリングや心筋の繊維化を引き起こしてしまいます。
急性期の心臓へのアルドステロンの取り込みと1カ月後の左室リモデリングの間には有意な相関を認める
Relationship between tumor necrosis factor a production and oxidative stress in the failing heart of patients with dilated cardiomyopathy. J Am Coll Cardiol. 201;37:2086-2092. Hayashi M et al
リモデリングとは?
リモデリングとは、心臓が血行力学的な負荷に対応して、その構造と形態を変化させることをいいます。
代表的なものは”左室リモデリング”です
具体的に説明すると、心筋梗塞が発症することで、梗塞部の壁運動が低下するため
それを代償するべく左室容積を増大させたり(心拡大)、その結果、左室へのストレスが増大する事に対して残存している心筋の肥大化や神経体液性因子の活性化が起こります。
その結果、
心筋が伸びきって代償できなくなる
心筋の繊維化(硬くなる)によって心筋が膨らみにくくなる
これらを経て、
心不全に陥ってしまったり、慢性心不全の急性増悪などにも関わってきます。
リモデリングにはこのように関連因子があったり
左室リモデリングに関与する因子は,心筋梗塞のサイズ、前壁梗塞、再灌流療法が遅れた症例or再灌流療法不成功例、再灌流療法後も造影遅延がみられるなどが挙げられる
Natural history of left ventricular size and function after acute myocardial infarction. Assessment and prediction by echocardiographic endocardial surface mapping. Circulation 1990; 82: 484–494 Picard MH et al
予後規定因子であったりもします
急性心筋梗塞発症後早期における左室駆出率や左室のサイズが予後規定因子であることが示されています。
Severity of left ventricular remodeling defines outcomes and response to therapy in heart failure:Valsartan heart failure trial (Val-HeFT) echocardiographic data. J Am Coll Cardiol 2004; 43: 2022– 2027 Wong M et al
なので、この”リモデリング”について学ぶことは患者さんの予後を予測する上でも非常に重要ですので皆さんも調べてみてください!
ちなみに
研究の歴史が浅いものの”右室リモデリング”も存在します。
右室リモデリング を呈しやすい代表的な疾患としては肺高血圧症があります。
ここら辺についてはどんどん深掘りしていく必要があるので、今回はここら辺にしておきます…
心不全に認める症状
以下は、
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参考にしてまとめさせてもらっています!
順番に説明していきます
まずは、こちらから!
自覚症状と身体所見
自覚症状や身体所見は
- ”うっ血によるもの”
- ”低心拍出量によるもの”
この2つに分かれています。
うっ血によるもの
- 自覚症状
呼吸困難
息切れ
頻呼吸
起坐呼吸 - 身体所見
ピンク色泡沫状痰
喘鳴
水泡音聴取
Ⅲ音やⅣ音聴取
- 自覚症状
右季肋部痛(大体横隔膜くらいの高さにある肋骨周辺)
心窩部不快感(俗にいうみぞおち、左右の季肋部に挟まれる)
消化器症状(食思不振・胸焼けなど) - 身体所見
頸静脈怒張
浮腫
腹水
肝腫大
胸水
消化器症状(腹部膨満、下痢、下血など)
低心拍出量によるもの(LOS:Low output Syndrome)
LOSとは、心臓の収縮力の低下に起因した心不全のことを指します。
意識障害(ボーッとする)
不穏
記名力低下(忘れっぽくなった)
冷汗
四肢の冷感
蒼白
低血圧
末梢部チアノーゼ
乏尿(0.5~1.0ml /kg /時間or1日400ml以下)
既往や背景因子
患者の既往の疾患や背景因子について調べましょう
- 患者の既往に心疾患や心不全増悪因子がないか
- 心疾患の家族歴はないか
- 利尿剤の使用歴がないか
- 心毒性のある薬剤(抗癌剤など)を使用していないかetc
これらに該当しそうな項目がないか調査します
カルテに記載がない場合は、本人や家族、他職種などにも聞いて見逃さないようにしましょう!
心電図
次は心電図について!
心不全となる経緯には色々あります
まずはもともと心不全に陥ってしまうような心疾患
例えば心筋梗塞などの心疾患が基にあっての心不全へ移行しているような場合は、
その基礎疾患によって生じる不整脈や波形の変化がすでに出現しているかもしれません。
そういうものがなかった場合
心不全によって引き起こされる可能性のある心電図上の変化を紹介します!
- 心不全の初期において
心ポンプ機能が低下しているため心拍出量が少なくなります。
この時、上で説明している神経体液性因子によって心拍出量を維持するための調整が入りますが
まず1つ目が体液性調節機構によって”利尿を低下”させ心拍出量を増やします
2つ目が神経性調節機構、つまり交感神経によって”心拍数を増やし”心拍出量を増やします
この2つ目の作用によって”洞性頻脈”になる場合があります。 - 心不全によって心房が拡大してきた場合
心房内での興奮伝導の不均一化し、リエントリー(興奮の旋回)が起こりやすくなります。
簡単にいうと、”心房細動”が起こりやすくなります。
実際には、
心房細動のトリガーと言われている
”肺静脈の入り口”からの異常興奮が心房細動の発生とその継続に重要と言われています。
その異常興奮がどのように引き起こされているかというと、どうやら自律神経、特に交感神経の興奮によるもののようです。
内因性自律神経の神経節(ganglionated plexi : GP)は,肺静脈(PV)と心房組織に神経線維を出す。GPの過剰活動は神経線維末端から過量な神経伝達物質の放出を促し、結果として PV、心房に異所性興奮、リエントリーを引き起こす。
心房細動と自律神経機能:GP アブレーションの意義 平尾見三
初めは、発作性心房細動のような一時的なものですが、
これが心臓のリモデリングや繊維化が進行するにしたがって
持続・永続化することで心房細動が完成します。
少し脱線しますが、
心臓に関わる科ではもちろんですが、脳卒中においても一過性心房細動によって脳梗塞が引き起こされて、入院する方はいらっしゃいます。
Pafか~ならそんなに気にしなくても大丈夫かな!
と思わず、
自身の介入や今後のその人の暮らし方によっては完全な心房細動に移行する場合もあるので、しっかり運動量の調節や退院時の指導を徹底して悪化防止に努めましょう!
胸部X線
みなさんは心不全を疑った際、
胸部X線においては真っ先に心胸郭比(CTR)をみている方も多いのでは?
CTRはレントゲンを前額面上で確認して以下の計算式で計算します
CTR=(心臓の横幅)÷胸郭の全長×100
正常値は35~50%です。
さらに詳細に分けたくなっちゃうコアな方は
- 左心系の拡大
- 右心系の拡大
これらを見分けてみましょう。
それには矢状面上で
IVC(下大静脈)が
見える→右心系の拡大
見えない→左心系の拡大
循環器画像技術研究会『カテーテルスタッフのための心血管画像学テキスト 」
このように見分けられます!
さらに、心陰影が拡大するのに加えて
肺静脈拡張像がみられた場合は心不全である可能性が高くなると言われています。
Wang CS, FitzGerald JM, Schulzer M, et al. Does this dyspneic pa- tient in the emergency department have congestive heart failure? JAMA 2005; 294: 1944-1956
また,肺炎などの呼吸器疾患との鑑別に有用で,肺うっ血の重症度も判断できるようです。
- 軽度の肺水腫(肺静脈圧15~20mmHg←スワンガンツカテーテルで測定)
肺尖部への血流の再分布所見 - 間質性肺水腫(肺静脈圧20~30mmHg)
perivascular cuffing(肺血管周囲の浮腫)
カーリーA・B・C線
peribronchial cuffing(気管支周囲の浮腫) - 肺胞性肺水腫(肺静脈圧30mmHg以上)
butterfly shadow(蝶形像)
- 胸水が出現していないか?
vanishing tumor(一過性腫瘤状陰影)
costophrenic angle(肋骨横隔膜角)の鈍化
これだけ挙げましたが、もしレントゲンで区別がつかない場合は胸部単純CT検査でさらに詳細に調べる必要があります。
肺の見方については図なども作成してまた別の記事にしたいと思います!
以上が心不全を疑った際、まず初めに検査する項目でした!
基本的に医師の先生がみてくれて電子カルテに記載してくれてますが、
これらの項目も自分でみれることによって心不全のリスク管理につながっていきます!!
上記の検査で
何か1つでも疑わしい項目があった場合には、先生方は以下の項目で心不全を精査します。
心不全の確定診断はどうするのか
- BNP・NTproBNP
- 心エコー
- 胸部CT・MRI
- 運動・薬剤負荷試験
- 心臓カテーテル検査
結構たくさんありますね!
主科が心臓の科であれば上記の様々な検査を組み合わせて総合的に判断して確定診断を行なっていますが
脳卒中の現場で働いていると、よく目にするのは
- BNP
- 心エコー
比較的容易かつ迅速に測定が可能なこれらの検査によって評価している先生方が多いように感じます。
これでも、疑わしいときは心臓の科にコンサルトをかけてより詳細に調べるといった流れ。
BNPとNTproBNPは何をみているの?
上述している検査で心不全を疑われた場合、
急性・慢性心不全ガイドラインにおいては
まずこの検査を行うべきと記載されています。
BNPとは、心臓の主に心室で合成され、分泌されるホルモンです
日本語では”心室性ナトリウム利尿ペプチド”と呼ばれています。
血漿の中のBNP濃度は、心不全の重症度とともに上昇し,NYHA心機能分類などと相関すると言われています。
そのため、BNPは心不全かどうかに加え、重症度をみる指標にもなります。
NT-proBNP(ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント)は
BNP前駆体というBNPになる前の状態から
BNPと1:1の割合で分解酵素によって切断され、血中に分泌されます。
そのため、BNPと同様に心不全の診断に用いられるようになりました。
BNPと決定的に違う点については、
”生理的活性作用”がないこと!
つまり、下記で話しているBNPと同じように身体に作用を及ぼすことはありません。
それでは、BNPの主な作用を紹介しておきます!(心房から分泌されるANPも同じ作用です)
- 利尿・ナトリウム利尿作用
- 血管平滑筋弛緩作用
- レニン・アルドステロン分泌抑制作用
簡単に説明すると、
利尿作用→循環血液量を下げる
血管平滑筋弛緩作用→血管抵抗を下げる
この二つの作用で、心臓の負担を軽くします。
そして、上でも紹介していたRAASに対する拮抗作用!
レニン・アルドステロン分泌抑制作用→アルドステロンによる心筋の繊維化を軽減
他にもこんな作用もあります!
- 交感神経活性化抑制
- 肺動脈拡張
- 冠動脈血流量の増加etc
奥が深いな〜BNP…
心エコーでは何をみているの?
心不全の診療において心エコーはもっとも重要な診断的検査と言われています。
この検査によって大まかにこれらのことが分かります。
- 心機能評価
- 血行動態評価
- 原因疾患の診断
- 重症度評価
- 病態変化
- 治療効果判定
心エコーについては今後、どこの項目がどんなことを意味しているのかをまとめた記事を書きます!
まとめ
はい、いかがだったでしょうか?
今回は心不全におけるリスク管理についてまとめました!!
さすが心臓だけあって
まとめる項目が多かった…笑
書ききれなかった検査の詳細などはまた別の記事にしていきます!!
最後まで見てくれてありがとうございました!!
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