【意外に知らない】貧血の原因やリハビリにおけるリスク管理について

リハビリにおける貧血のリスク管理について
この記事を読んで欲しい人!

リスク管理について知りたい学生や若手セラピスト

貧血についてより詳しく理解してリスク管理に生かしたい方

貧血にどんなリスクがあるのか知りたい方

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はじめに

おばんです!!

前回は糖尿病のリスク管理についてまとめました!

今回は、一般の方にも身近な貧血についてまとめていこうと思います!

一般的にも認知されているものですので

小中学生ぐらいから貧血に対する知識は誰しも持っているはずです。

しかし、一般的に用いられているこの「貧血」というワード

全ての人が正しく使っているでしょうか??

「誰々が貧血で倒れた!!」

これ、学校などで誰しもが聞いたことがある言葉ですよね?

理由は色々とあるはずですが、

意識を失う=貧血

という認識に陥っていませんか?

今回は、医療職として正確に貧血という言葉を用いることができるように

また、貧血によって身体の中でどのような反応が起きるのかなどをわかってもらえたら嬉しいです!!

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貧血とは?

貧血について簡単に説明すると

何らかの要因で、

赤血球

ヘモグロビン

これらが不足することで引き起こされます!

血液検査において最初に注目する項目としては

みなさんご存知の

血色素(hemoglobin:ヘモグロビン)濃度です。

専門用語で”ハーベーが~”とか言ったりしますね!

一般的にはHb濃度が12g/dl未満から貧血と診断されて、10g /dl未満から内服薬などで治療が開始されます。

貧血の型にもよりますが、6~7g/dL 以下になるようなら輸血の対象となります。

ちなみに心疾患や呼吸器障害、慢性脳循環不全(動脈硬化や脳動脈狭窄)のある患者では、Hb値を10g/dl程度に維持することが推奨されているようです。

                  

ヘモグロビン濃度による貧血の診断と治療開始の目安

それに関連して

貧血が一過性脳虚血性発作(TIA)の要因となるような場合もあるようです。

Severe anemia in childhood presenting as transient ischemic attacks.

Young RSK, Rannels E, Hilmo A, et al

Anemia and intermittent focal cerebral arterial insufficiency.

Siekert RG et al

おそらく、Hbについてはみなさんも知識がある程度あるかとは思いますが、

リスク管理をする上では、その貧血が何によって引き起こされているのかを自身でも考えなければいけません。

貧血を正しく理解し、医療現場で利用するにはきっちりと貧血の要因を理解していく必要があります!

それでは、まずはじめに貧血にはどんな種類のものがあって、どのような症状が出現するのかをまとめていきましょう!!

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貧血の症状は?

一般的に知られている貧血による主な症状として知られているのは…

めまいや立ちくらみ

倦怠感や頭痛も知られているかも知れませんが…

あ、あとは氷をかじりたくもなるそうですね!科学的に証明はされていないようですが笑

ただ、これは一般的な話ですので、医療者として知っておいて欲しい症状は他にもあります。

自覚症状は、動悸、息切れ、めまい、耳なり、食欲不振、だるさ、頭痛など

他覚症状は、顔面蒼白、心肥大、心雑音、頻脈、浮腫、腹水など

貧血の症状は?自覚症状と他覚症状

                   

貧血の症状は?

次に貧血にはどんな種類があるのかまとめていきます!

貧血は以下のように分類されています!!

小球性貧血

鉄欠乏性貧血

慢性疾患・炎症による(二次性)貧血

など

正球性貧血

急性出血

再生不良性貧血

溶血性貧血

腎性貧血

など

大球性貧血

巨赤芽球性貧血

悪性貧血

など

自分もまとめてみてびっくりしたんですが、こんなにあるんですね~(もちろんここに書いていないけどもっとありました…)

今回は、比較的臨床で目の当たりにしやすいものので簡単にまとめています

分類方法によっても分け方が違うようですが、僕が伝えたいのはリスク管理についてですので、今回はこの方法でまとめていくことにしました。

貧血は大きく分けると3種類に分かれており、”平均赤血球容積”に応じて分けることが可能です。

                  

貧血の種類の分け方 平均赤血球容積

さて、貧血の簡単な分類の仕方もわかったことで、

この中から自分が急性期の臨床現場でよく遭遇する貧血についてまとめていきます。

それが以下の3つ!!

  • 鉄欠乏性貧血
  • 慢性疾患による(二次性)貧血
  • 急性出血による貧血

この3つの貧血を用いてリスク管理についてまとめていこうと思います!!

そのほかの貧血については後日、別の記事でまとめていきますのでご了承ください

鉄欠乏性貧血

はじめに鉄欠乏性貧血について!

入院していない人も含めれば貧血において最も多いタイプですね!!

一般的には、食事で十分な鉄分を摂取できていなかったり、女性の場合は婦人科疾患に伴う過多月経などで認められます。

鉄欠乏症性貧血特有の他覚症状として爪が割れやすい、爪の上が凹型のスプーン様爪というものがありますので自分でも確認してみてください。

鉄欠乏性貧血の判別方法

基本的には医師が診断してくれますが、セラピスト自身も判別方法が分かっていると正確なリスク管理につながっていきますので頑張って覚えましょう。

判別方法としては、血液検査があります。 

平均赤血球容積(MCV)の値を確認しましょう!

MCVが80fl以下であるならば、小球性貧血に分類されます。

そこからさらに

血清フェリチン(Ferritin)の低下(≦10mg)

総鉄結合能(TIBC)の増加

これらが認められれば鉄欠乏性貧血です!

                      

血液検査における鉄欠乏性貧血の診断の仕方

フェリチン(貯蔵鉄)…全ての細胞に存在する蛋白。トランスフェリンによって運ばれてくる鉄を細胞内に貯蔵したり、鉄が必要な場合は利用できるように速やかに調節する。

血清フェリチン…血清中にあるフェリチン。体内のフェリチン量に比例すると言われているため、フェリチン(貯蔵鉄)を推定できる。貯蔵鉄の量を反映して増減する。鉄欠乏性貧血の場合は血清フェリチン値は早期に低下するため早期診断に有効とされる。

鉄結合能(TIBC)…トランスフェリンと結合している鉄(血清鉄)とトランスフェリンと結合していない鉄(不飽和鉄結合能)の総和。簡単にいうと血清中にあるトランスフェリン全体の濃度を示す。

鉄欠乏性貧血になる原因は何?

鉄欠乏性貧血であると断定できるのなら

主な要因としては

  • 鉄の摂取量不足
  • 鉄の需要増加

が挙げられます。

需要増加とは

  • 発育期(生後5ヵ月~3歳位まで)
  • 成長期(12~20歳位まで)
  • 妊娠期
  • スポーツ選手 などに多く認められます。

食生活の改善や鉄剤の使用で改善する可能性があります。

慢性疾患による(二次性)貧血

次は慢性疾患による貧血について判別方法などをまとめていきます!!

急性期病院においてはこの貧血が最も多いです。

英語表記だと、ACD(anemia of chronic disease)と呼ばれています。

炎症性サイトカインの過剰産生と、鉄の利用を妨げるヘプシジンにより貧血が起こると言われています。

急性期でなくても、主な対象が高齢者である場合には基礎疾患を保たれている方も多いです。がん患者さん(造血系はまた別ですよ!)や慢性疾患を持たれている患者さんが多い病院・施設においてもこの貧血は身近なもののはずです。

慢性疾患による貧血の判別方法

慢性疾患による貧血の診断基準

では、判別方法を!

この貧血も小球性貧血の仲間ではあるので、途中までは一緒です。

小球性貧血に分けた後、

血清フェリチンが正常または増加、TIBCが正常または低下の場合

血清鉄(血清中の鉄の量)の低下を認めれば慢性疾患によるものであると断言できます。

                   

貧血になる要因は?

慢性疾患による貧血が起きるの機序

慢性炎症により、活性化された細胞からサイトカインが過剰分泌され、それによって肝臓においてヘプシジンが過剰に産生されます。

へプチジンは十二指腸の粘膜における鉄の吸収が抑制したり、肝臓や脾臓にある網内系細胞によって貯蔵鉄(フェリチン)を血清鉄(トランスフェリンと結合した鉄)に動因できなくするため、その結果貧血になります。

細胞内の貯蔵鉄は使用されず増えるため血清フェリチンもそれに比例し増大します。

                   

急性出血による貧血

最後に急性出血による貧血です。

これも急性期においては多いですね。

僕が主に担当する脳卒中患者においては、発症後、消化管にできた潰瘍や穿孔による出血などによって引き起こされることがあります。

脳卒中治療ガイドライン2009によると、

脳卒中患者の約3%に胃潰瘍などの消化管出血が発症

重症の脳卒中患者や高齢者ではより高率

このように言われています。

脳卒中患者に対して抗潰瘍薬である、ファモチジン(侵襲ストレスに対して)やランソプラゾール(急性ストレス潰瘍および急性胃粘膜病変)が頻繁に使用されているのはこのためなんですね!

さて、急性出血による貧血の見分け方ですが、

先ほどの二つと違い

急性出血のみ、正球性貧血に分類されるため

平均赤血球容積(MCV)の値は正常になります(81≦MCV≦100)

今回は詳しく書きませんが、正球性貧血には溶血性疾患・再生不良性貧血・腎性貧血など様々な要因がありますので、それらと分類する必要があります。

正球性貧血であることが判明したら、

次は網赤血球絶対数の増加があるかどうか確認しましょう。

増加していればさらに、溶血所見であるLDHや間接ビリルビン、ハプトグロビンが上昇していないかを確認します。

溶血所見がなければ、急性出血による貧血の可能性が高いです。

                 

血液検査における急性出血による貧血と診断するための項目

分類の仕方は以上になります!!

貧血の全てではないですが、分類の基本は理解できたでしょうか?

次の項目でこの記事最後になります!

リハビリにおける貧血に対するリスク管理は?

さて、ここまで特に急性期病院でよくみられる貧血についてまとめてきましたが

最後は、貧血に対するリスク管理をどのようにしていけばいいのかをまとめていきます。

急性期においては、比較的頻回に血液検査をするでしょうから、その血液検査の結果をもとに貧血を呈しているかどうかを確認しましょう。

貧血に陥っている場合は、上記で説明している分類方法をもとに、どの種類の貧血なのかを把握します。(既に医師が診断している場合もあります)

急性出血の可能性がある場合

医師や看護師さんのカルテ情報から血便や下血がないか確認しましょう。

活動性の出血が認められるような場合には積極的な介入によって更なる出血を引き起こして、貧血症状だけでなく、血液流出による血圧低下や、最悪出血性ショックへ移行させてしまう場合もあります。

鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血の場合

基本的には、血液検査におけるHb濃度の値介入中の自覚・他覚症状をみながら、リスク管理を行っていきます。

Hb濃度が 8~9 g/dlくらいまでは無症状の場合が多いように感じます。

自覚症状が出現していなくて、頻脈や著明な頻呼吸がなければ普通に介入することもあります。

さらに低下し、

7g/dl 以下になると頭痛,耳鳴り,めまいなどの自覚症状を認め

6g/dl以下になるとさらに症状は悪化。さらに貧血の状態が持続すると心拍数の増加などで代償していた心臓に負担がかかるため心不全症状を呈するようになります。

自分の感覚上、数は多くないものの貧血による心不全で入院される患者さんも中にはいます。

さすがに、この数値まで低下してくると自覚症状を認めることが多いですし、運動負荷によって意識障害(脳への酸素供給不足で)や心不全を助長する可能性が高くなってくるので、

たとえ自覚症状がでにくくて、頻脈なども中止するほどではない場合であっても医師に運動療法を継続するべきか相談してから介入するようにします。

心不全になっていないかは、胸部レントゲンで心胸郭比、毎日の尿量の推移、体重増加、浮腫の程度などを確認する必要がありますね。

基本的にはリハビリの中止基準に則ってリスク管理を行なっていけばいいと思いますが、それに該当しない場合は、医師と相談しながら行なった方が良さそうです。

以下にリハビリの中止基準から貧血が関連しそうな項目を抜粋してまとめるので確認してみてください。

リハビリの中止基準

以下は、リハビリテーション医療における安全管理•推進のためのガイドラインを基にまとめています!!

積極的なリハを実施しない場合

安静時脈拍40/分以下または120/分以上

安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上 

心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合

著しい不整脈がある場合

リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合 

座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合

安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

途中でリハを中止する場合

中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現 した場合

脈拍が140/分を超えた場合

頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合 

運動により不整脈が増加した場合

意識状態の悪化

いったんリハを中止し,回復を待って再開

脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。(ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える)

脈拍が120/分を越えた場合

軽い動悸,息切れが出現した場合

また、その他の注意が必要な場合もあります。

  • 体重増加している場合
  • 倦怠感がある場合
  • 下肢の浮腫が増加している場合

以上になります!!

何度も言いますが、これに該当していなくても重度の貧血症状を呈している場合には主治医と相談してリハビリの介入を行いましょう!!

患者さんの安全は自分が守る!

自分の身は自分で守る!!

まとめ

今回は貧血についてまとめました!

カルテ情報から患者の自覚症状・他覚症状を含め、しっかりアセスメントしていくことが重要でしたね!!

また、医師や看護師との連携も重要です!!

しっかりリスク管理を行なった上で、リハビリを患者さんに提供していけるようにしましょう!!

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