姿勢制御に対するリハビリのアプローチや介入方法

姿勢制御に対するアプローチ

 

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はじめに

以前、皮質網様体脊髄路や予測的姿勢制御と反応的姿勢制御の違いについて記事にしましたが、

【5分で分かる】網様体路・橋網様体脊髄路・延髄網様体脊髄路の違い | Re:wordblog

今回は、姿勢制御を考慮したリハビリテーションの介入・アプローチ方法を考えていけたらなと思います!

では、よろしくお願いします!!

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姿勢制御の評価

介入の前に評価を行いましょう。

僕も含め学生や若手セラピストは「バランスが悪い」の一言で姿勢制御を片付けることが多いような気がします。

バランスの定義については以下で話しています。

バランスの定義ってなに?【バランスを構成する要素】 | Re:wordblog

 

脳画像や実際の姿勢制御を評価して、バランスのどの要素が低下しているからバランス能力が低下しているのかを確かめましょう。筋力が問題であるのなら初めは筋トレを中心とした介入をしないとですし、しっかりと目的を明確にするために評価してください。

脳画像をみる

まずは、脳画像から各姿勢制御に影響が出てくるかどうか評価しましょう。

皮質網様体路とそれぞれの網様体脊髄路の経路や大脳や小脳など関連している脳の部位に血腫や梗塞巣、または浮腫がないかを確認しましょう。

皮質網様体脊髄路の経路について詳しく知りたい方はこちらの記事に書いています。

皮質網様体路や網様体脊髄路が完全に障害されている場合は急速な改善は得られ難いという予測がたてられますし、浮腫であれば、浮腫が落ち着いてくるにつれて急速な改善を得られる可能性が高いと予測することができます。

 

姿勢・動作観察 と 体幹・四肢近位筋の触察

ここは理学療法士の腕の(いや、目の)見せ所ですね!

皮質網様体脊髄路が正常に働いていれば、適切な筋緊張が得られているので、座位や立位において骨盤は正中位~前傾位に保てるはずです。

円背の患者さんなど関節拘縮や骨的な制限がある方には難しいかもしれませんが…

あとは、臥位や立位で筋緊張が低下しているかどうかを評価してみましょう。

また、姿勢や動作だけでなく、重心がどう動いているかをみても良いかもしれません。重心移動時や歩行の予備動作としてわずかですが、運動方向と逆側に重心が移動します。あくまで主観的になってはしまいますが…

定量的に評価する場合は、重心動揺計や両足に体重計を置くなどして測定することもできますが、もっていない施設もあると思いますし、やれたとしても転倒のリスクもあります。なので、行いたい場合には先輩などにその時だけ手伝ってもらったりするのが良いと思います。

 

(側方への能動的な体重移動の割合と歩行能力が関連しているという報告もあるのでいつかそのことについても記事にします。)

立ち直り反応がでるか確認する

これは主に反応的姿勢制御が機能しているかどうかを評価します。

片脚立位やタンデム姿位など、患者の能力に応じてバランス課題を課しましょう。

立位で難しい人には座位で強い外乱を加えて立ち直り反応が認められるかで評価しましょう。

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介入の基本

若手のセラピストや学生さんたちは姿勢制御のための介入というとどういったものを想像しますか??

姿勢制御は随意運動とは違って、フィードフォワード・フィードバック機構などの複雑な過程を要します。

その複雑な過程を脳で瞬時に処理してスムーズな姿勢制御を可能としている理由は

幼い頃からの反復練習によって学習・記憶されることで獲得してきているからです。

 

疾患や障害によって運動制御システムがうま く働かない場合には,随意的な運動・動作が困難となるため,機能回復(運動制御能力の向上)のためのトレー ニング(リハビリテーション)が必要となる。 

では、本題である運動制御能力の向上はどのように行なっていくのが良いのでしょうか?

 

1982年にCarrとShepherdによって考案された運動再学習プログラム(Motor Relearning Program) というものがあります。

それを潮見先生はこのようにまとめています

1)患者が特定の運動課題を意識して練習すること

2)筋活動を引き出し,運動をコントロールできる能力を自覚させること

3)課題を学習し技術を獲得できるように練習をより自動的に行える水準まで高めること

潮見 泰藏 脳傷害後の機能回復と運動学習 理学療法科学 21(1):87–91,2006

これを僕はこのように理解して練習に取り入れています。

 

・運動課題前にどのような運動を行い、どういった点(足や手の位置、骨盤や体幹などのアライメント)に気をつけて行えば良いかを教示する。

・難易度調整(例:起立動作→初めは各相ごとに分ける、座面の高さを変える、介助する)

・視覚(鏡)や聴覚(口頭指示)、徒手誘導などで適宜フィードバック

・実施速度や環境の変化した状況づくり、実際の生活を想定した環境で行わせるなどの様々な条件で行う

 

 

潮見先生は文献でいろいろな例を挙げてくださっているので気になった方は上の文献を引っ張ってきて勉強しましょう。本も出版されています。

APAで意識しておきたい点① 運動速度を意識する

それでは基本を押さえたところで、

ここからは、予測的姿勢制御を念頭においた介入時に

見逃しがちだけど意識して指導をしていった方がいいことについて説明していきます。

まずは運動の実施速度

 

ずっと、運動のスピードをゆっくりのまま練習を行わせていませんか?

ゆっくりと運動した場合には主動作筋に先行したその他の筋肉の収縮は認められないと言われています。

 

つまり、姿勢制御を意識した介入の場合は課題に慣れてきて、理想的な姿勢での課題実行ができたタイミングで実施速度を変化(速くする)させていきましょう。

上肢の角速度70~90deg/s2の点を超えると、ハムストリングスは潜時と上肢加速度との間に優位な相関を認めた。さらに、ハムストリングスの筋放電開始から100msの間の振幅値は上肢加速度と優位に相関していた。

Lee WA et Al

Effects of arm acceleration and behavioral conditions on the organization of postural adjustments during arm flextion.

APAで意識しておきたい点②:重心の位置

急速両上肢挙上を行う課題において、被験者は安静立位姿勢時の重心位置が踵から足長の40~55% の範囲に分布していた。課題実施中に安静立位姿勢の重心位置よりも極めて大きく前方(67%)に移動することでその外乱刺激に対しておもりを持つ場合・待たない場合に関わらず、上肢を除く身体部位の後方移動が先行的に生じた。

藤原ら    体力科学40:355-364,1991
急速上肢挙上時の立位姿勢調節に対する身体重心の前後方向の位置と重錘負荷の影響

この文献などから言えますが、上肢のリーチ練習やカーフレイズなどの課題実行時には、可能な限り重心位置を変化させるように意識させて練習を行った方が効率がいいと思われます。

ただ、自ら重心を不安定な位置に持っていく行為ですので、転倒などのリスク管理をしっかりとした上で実施させましょう。

 

まとめ

以上で姿勢制御にたいするアプローチや介入方法の提案でした!

単純な筋出力の強化も大切ですが、高齢者や脳卒中患者に対しては姿勢制御を念頭においた介入も必要だと思います。

基本動作の練習などでも改善をさせたいターゲットを明確化することで、同じ課題でも姿勢や実施速度など様々な視点から工夫することで対象者の方専用にカスタマイズできると思いますので、ぜひ取り入れてみてください!!

 

勉強になった方はシェアしてくれたら嬉しいです!

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