皮質脊髄路だけじゃない?運動麻痺の回復過程について10分で解説!【運動麻痺回復ステージ理論】

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はじめに

皆さんおばんです!!

脳卒中のリハビリテーションについて学んでいく上で
運動麻痺の回復過程やその神経回路について知ることは非常に有用!というか重要!!

なぜなら…

✔︎練習内容や実施回数の選定
✔︎練習中の環境調整
✔︎練習中の声かけのタイミング
✔︎介助方法や徒手による誘導の仕方

これらを自身で選択する上で、下地となる情報だからです!!

先輩がこんな感じでやってたから

これだけでは、”リハビリテーションのプロ”として少し寂しくありませんか?

理論的な背景もしっかり頭に叩き込んで
真摯に患者さんと向き合えるよう一緒に勉強しましょう!!

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運動麻痺とは?

運動麻痺とは

まず運動麻痺について定義など基本的な情報を簡単に!

運動麻痺とは…

中枢神経系や末梢神経の障害によって主に四肢などの運動機能が喪失している状態を指す

奈良勲ほか: 標準理学療法学 神経理学療法学. 医学書院,東京, 2013

本記事における運動麻痺は


”中枢神経系の障害によって四肢に生じた運動機能の喪失”

これに該当します!

運動麻痺=随意運動の障害

このように考えましょう

随意運動の経路は皆さんご存知の

”皮質脊髄路(いわゆる錐体路)”

随意運動の障害はこの経路のどこかが障害されれば出現します!!

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運動麻痺回復のステージ理論について

それでは、運動麻痺のステージ理論について説明していきます!

”運動麻痺のステージ理論”とは

Swayer OBらによって2008年に発表されました! 

急性期においては発症前の運動出力システムに依存する。

代替システムとして隣接する神経集団または遠隔の神経集団への接続を図り、新たな神経編成をしようとするが、急性期では至らない。

発症3ヶ月までに運動療法により、これらの新しく利用可能な皮質ネットワークで残存するシナプス(皮質脊髄路)の強化が行われ、可能な限り効果的な運動出力が生成される。

加えて、代替システムの再組織化が構築される。

ただし、6か月になると、これらのメカニズムは大幅に減少する。

Swayne OB ,et al:Stages of Motor Output Reorganization after Hemispheric Stroke Suggested by Longitudinal Studies of Cortical Physiology:Cereb Cortex 18:1909–1922,2008

直訳するとこんな感じです!!

現在だと、様々な文献や書籍で翻訳・肉付けされているので、
僕らでもこの理論についてわかりやすく説明してくれています。

特にこの図は皆さんもよくみると思いますが
各ステージごとの特徴と皮質脊髄路がどのような状態になっているのかを示してくれています!

運動麻痺回復ステージ理論 図
原寛美.脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.脳外誌 2012; 21(7): 516-526.より一部改変し引用

可視的にわかりやすいですね!

それでは各病期とその回復ステージについてまとめていきましょう!!

運動麻痺回復のステージにはどんなものがある?

上の図をみていただくとわかると思いますが、
運動麻痺回復のステージは…

発症~3ヶ月(1st stage recovery)

発症~6ヶ月(2nd stage recovery)

6ヶ月~  (3rd stage recover)

大きく分けてこの3つに分かれます!

これらの各ステージごとにその特徴や意識しておきたいポイントをまとめていきます

【皮質脊髄路の興奮性を高めよ!!】1st stage recovery

まずは”1st stage recovery”!

このステージについてSwayne OB et alは…

急性期の回復メカニズムは残存している皮質脊髄路を刺激し
その興奮性を高めることで(Corticospinal excitability)
麻痺の回復を促進する時期

Swayne OB ,et al:Stages of Motor Output Reorganization after Hemispheric Stroke Suggested by Longitudinal Studies of Cortical Physiology:Cereb Cortex 18:1909–1922,2008

このように説明しています!!

1st stage recovery=皮質脊髄路の興奮性を高める!

こんな感じに簡単に覚えられますね

つまり

急性期において運動麻痺を回復させるためのリハとは…

効果的に残存している皮質脊髄路を刺激し興奮させること

このようになるわけですが…

これに向けて僕らには何ができるでしょうか?

✔︎1st stageでやるべきこと!
  • 脳画像で皮質脊髄路の残存程度を予測
  • 皮質脊髄路が興奮しやすい介入方法を考える

この二つについてはまた詳しく別の記事にまとめていこうと思います!

疾患の状態把握や離床・運動療法に伴うリスク管理を並行して介入を進めることは
難しいこともありますが、

この期間は患者の機能予後を決定づける非常に重要な期間!
しっかり、準備をして臨んでいきたいですね!!

急性期におけるリハビリ介入の理論的な背景などについてはこちらの記事でまとめています!

1st stage recoveryまとめ
  • 残存している皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高める時期である
  • この興奮性は発症から3ヶ月程度で消失してしまう
  • 画像評価や予後予測をした上で適切な刺激を入れていく必要がある

【皮質ネットワークが再組織化される?】2nd stage recovery

このステージは、

皮質脊髄路の興奮性に依拠するのではなく
皮質間の新しいネットワークの興奮性(Intracortical excitability)に依拠する時期

原 寛美  急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実際:臨床神経 2011 51:1059-1062

このステージにおいては、皮質間の抑制が解除されると言われています

皮質間の抑制=半球間抑制のことです

非障害側から障害側への抑制が解除されることで、
障害側の残存する皮質脊髄路を中心として新しい神経ネットワークが構築されます

勘がいい人はわかると思いますが、
ここからは着目すべき神経回路は皮質脊髄路だけではないんです!

運動出力に関与する皮質間のネットワークには
一次運動野はもちろん

  • 高次運動野(6野)

それらに連結する

  • 大脳基底核
  • 小脳など

これらが関わっています!!

つまり、この期間は…

残存している皮質脊髄路に加えて


高次運動野(運動前野や補足運動野など)からの
二次的な皮質領域の動員が増加します

それに加えて、

1次体性感覚野とも連結します!!(1次運動野と合わせて感覚運動野とも言われていますね) 

脳損傷後,運動の機能回復に関して,大脳レベルでは,一次運動野だけでなく,補足運動野 や運動前野などの運動関連皮質が両側性に関与しており随意的運動の頻度と質により可塑的変化を起こし脳地図が変化する 

井上 勲 運動機能回復を目的とした脳卒中リハビリテーションの 脳科学を根拠とする理論とその実際:相澤病院医学雑誌 第8巻:1-11(2010)

以上

これらの神経回路が
皮質脊髄路を補うようにして新たなネットワークが構築されていきます!

それでは、この時期に僕らには何ができるでしょうか?

✔︎2nd stageでやるべきこと!
  • 脳画像で損傷が皮質脊髄路以外に及んでいないかをチェック
  • 各神経路を刺激するにはどんな介入が有効かを検討する
  • 間違った運動パターンを学習させない

他の神経路を意識した介入方法などについては、
別の記事で詳しくやっていこうと思っています!

この時期は、比較的意識障害も改善され
患者自身も障害を受容し(人によりますが…
それを克服しようと試行錯誤しはじめます

しかし、その時の運動パターンや運動出力は”正常ではない”場合が多いです。

いわゆる

”代償動作”

これを生じさせながら目的を遂行しようとします

”正常ではない”運動パターンや運動出力を繰り返し行うことで、
もしかしたら本人が設定した”目標”は達成するかもしれません
(例:麻痺側の上肢で目の前のコップを取るとか)

”目標”を達成することで、その成功体験は”強化”されていくので
本人はその動作を繰り返して行うようになります。

繰り返し行うことで、脳はその”正常ではない”運動パターンや運動出力を学習していきます

この誤った学習を繰り返し、それに準じたネットワークが構築されると、
その動作は慢性化していき、それ以降の動作の修正には困難を極めます

また、2nd stageは半球間抑制が解除され、障害側の大脳皮質の興奮性はどんどん高まってくる時期です。

この時期に、適切な運動出力ができないと
必要以上に大脳皮質の興奮性を高め、痙縮の増強を引き起こしてしまう可能性もあります

これらの要因が積み重なることで、
長期的には身体のどこかが変形したり、痛みの要因になってしまう場合もあります。

そのため、この時期にセラピストが介入し

患者の”運動イメージ”と実際の運動のギャップを埋め合わせしながら
正常に近い運動パターンや運動出力を学習させていかなければなりません!


そのため
視覚や体性感覚などからのフィードバックを多用して

運動イメージと感覚情報の統合を行っていけるようなアプローチを選択する必要があります

ここら辺についてはまた別の記事で詳しくまとめていこうと思います!

2nd stage recoveryまとめ
  • 半球間抑制が解除され、新しい神経ネットワークが構築される
  • ネットワークの構築には高次運動野や1次体性感覚野なども関わってくる
  • このステージは発症から6ヶ月頃まで持続する
  • この時期に誤った動作を学習させてはならない
  • 視覚や感覚などを用いて適切な運動パターンや運動出力の学習を進める必要がある

【シナプス伝達が効率化?】3rd stage recovery

これで最後になります!

最後は3rd stage recoveryについて!!

3rd stage は6ヶ月以降の話でしたよね!

6 カ月以後も持続して徐々に強化される機能は,リハビリテーションにより惹起されるシナプス伝達の効率化 Training-induced synaptic strengthening である 

原 寛美  急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実際:臨床神経 2011 51:1059-1062

このように

2nd stage recoveryで再構築された新しいネットワークにおいて
それらがより反応しやすくするためのシナプス伝達がより効率化されます

効率化されることでネットワークはより強化され
2nd stageで学習した動作を容易に行えるようになります…

この説明からも分かると思いますが
この3rd stageは…

  • 1st stage
  • 2nd stage

この2つのステージを経て初めて成り立ちます!!

 1st stage で 良好な帰結を経ずして,2nd stageさらに,3rd stageへと移行することはありえない.したがって急性期からのリハビリテーションの連続性と,さらに stage 理論を意識したリハプログラムの施行と成否が求められる.

原 寛美  急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実際:臨床神経 2011 51:1059-1062

もっと言えば
急性期~回復期の間で、1st stage recoveryを意識した介入が行えないと
2nd stageへも移行しづらくなってしまうということですよね…

1st stage recovery=急性期

2nd stage recovery=回復期

3rd stage recovery=慢性期

このようなイメージで分けて考えてしまっているのは良くないということですね!!


3rd stage recoveryまとめ
  • 6ヶ月以後から継続する
  • 新しいネットワークにおけるシナプス伝達の効率化が起こる
  • 1st stageと2nd stageに適切な介入ができていないと適切な効率化は起こりにくい

✔︎要チェック!

シナプス伝達の効率化について少し詳しく解説しますね!

シナプス=神経細胞同士が結合して情報伝達を行っている場所です

シナプス伝達は、神経伝達物質(アセチルコリン等)と呼ばれる
化学物質を分泌することで情報をやり取りします

脳卒中におけるリハビリテーションにおいては
神経を再生させるのではなく

シナプス伝達の効率化=神経の可塑性変化

この変化を促すことで麻痺の改善を図ります

シナプス伝達の効率化には
シナプスにおける2つの変化が関係しています

1.形態的変化
適切な運動療法を繰り返すことにより,中枢神経系では神経栄養因子の発現が高まり,それが刺激となって樹状突起(dendrite) を伸長させ,分枝(arbolization)を促進して,さらにその枝 には,棘(spine)を増加させ,新しいシナプスを形成する (synaptogenesis)。

2.機能的変化
シナプスの可塑的変化 により,シナプスの伝達効率が高まった状態では,放出される 神経伝達物質が増量するか(シナプス前メカニズム),あるい は,受容体の発現が高まり反応しやすくなる(シナプス後メカニズム)ことが想定されている。

石 田 和 人 ら 脳の機能回復と神経可塑性 理学療法学第40巻第 8 号 535 ~ 537 頁:2013

つまり、
1st stageと2nd stageで
適切な運動パターン・出力を意識させながら運動を反復し、
神経繊維の末端をしっかり成長(発芽)させて新たな神経回路を作っておく

3rd stage(約6ヶ月以後)には
神経伝達物質の増加や受容体が増加するため
それまでに成長していた神経回路がさらに使いやすくなる

こんなイメージでしょうか?

このことからも、1st stageと2nd stageで適切な介入をすることの重要性がはっきりと分かりますね!

まとめ

今回は
運動麻痺回復のステージ理論についてまとめてきました!!

有名な理論ですが、教科書に書かれている定型文だけでなく
その背景も含めてしっかり読み解いていかないといけないことがわかりましたね!

定型分だけでは
高次運動野や1次体性感覚野などの
皮質脊髄路以外の神経回路も運動麻痺の改善に重要だという情報は得られなかったと思います!

もっと細かく話したい内容については別の記事にしていこうと思うのでぜひそちらもよろしくお願いしますね!!

本記事のまとめ
  • 運動麻痺回復のステージ理論には3つステージがある
  • 1st stageでは残存している皮質脊髄路の興奮性を高める必要がある
  • 2nd stageでは新たな脳内ネットワークを構築するために適切な運動パターン・出力を学習する必要がある
  • 3rd stageでは再構築された脳内ネットワークが強化される
  • 1st stage、2nd stageで適切な介入ができていないと3rd stageは成り立たない

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