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はじめに【 運動麻痺 について知識整理をするメリット】
この記事は 運動麻痺 の種類・分類方法についてまとめたものになります!!

おばんです!!Yu-daiです!
自分自身の知識の研鑽や日々のアップデートを目的に
新人セラピストや学生向けに
”脳卒中”や”急性期におけるリスク管理”などを中心とした
知識の発信をさせていただいています!!
知識発信はBlogが主ですが、TwitterやInstagramもやっています!!
今回は、”運動麻痺”についてリハビリで使える知識をまとめていこうと思います!!
- ”運動麻痺”の種類が分かる
- ”運動麻痺”の分類方法が分かる
- ”上位運動ニューロン”・”下位運動ニューロン”の違いが分かる

臨床では、”運動麻痺”と一括りにしがちだけど
実は様々な表現方法があるのでそれぞれしっかり定義を確認しておきたいよね!
皆さんは、”運動麻痺”に様々な分類の仕方があるのをご存知でしょうか?
僕の場合、現在担当することが多い疾患が脳卒中なので
運動麻痺=随意性・分離運動の程度による分類
こんな意味で表現しがちなんですが、
実際の臨床現場だとその他にもたくさんの意味を有している言葉です!!
便利な言葉ですが、自分の中でその”運動麻痺”の分類や定義、機序などをしっかり理解して用いることで患者さんや他職種、PT学生に対してより”端的”に”分かりやすく”説明やディスカッションができるようになると思うのでぜひこの機会に覚えておきましょう!!
// /運動麻痺 とは?

まずは、 運動麻痺 についてその定義を確認しておきましょう!!
医学用語としての麻痺は、中枢神経あるいは末梢神経の障害により、身体機能の一部が損なわれる状態をさす。麻痺には、運動神経が障害される運動麻痺と、感覚神経が障害される感覚麻痺(知覚麻痺)がある。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Wikipediaからの引用で申し訳ありませんが、運動麻痺の定義はこんな感じになっています!!
ただ、もう一つ付け加えるとすると、運動麻痺は”筋”の障害によっても生じます!!

運動麻痺は”神経系””筋組織”のいずれかの障害によって起きるということだね!
主に、
これらの障害によって”筋肉の随意的な運動機能が低下または消失した状態”を麻痺といいますが…
筋緊張の亢進などによる運動障害に対して使用することもあります!
運動麻痺の定義はこんな感じになりました!
定義について整理できたと思うので次にいきましょう!
運動麻痺 の原因と鑑別方法

次は”運動麻痺”の原因についてまとめていこうと思います!!

運動麻痺と聞いて多くの人が連想するのは”脳卒中”だよね?
それ以外にも運動麻痺の原因となる疾患は多いので確認しておこう!!
- 脳梗塞
- 脳出血
- くも膜下出血
- 急性硬膜下血腫
- 急性硬膜外血種
- 慢性硬膜下血種
- もやもや病
- 脳挫傷
- 脳腫瘍
- 多発性神経炎
- 頸髄損傷
- 筋疾患など
皆さんが臨床で比較的出会いやすい疾患はこんなところでしょうか?
その他には…
✔︎脊髄小脳変性症
✔︎筋萎縮性側索硬化症
✔︎重症筋無力症
✔︎筋ジストロフィー
これらの疾患も存在します!!
医師はこれらの多種多様な原因の中から筋の運動機能低下・消失してしまったものを探し出すわけですが、どのような方法を以って鑑別していくんでしょうか?

医師の話ではあるけど、どうやって疾患を特定していくのか理解しておけば病態の理解にもつながるし、介入のタイミング、負荷量調節のタイミングなどの判断をする材料にもなり得るから結構重要だよ!
鑑別方法は以下の通りになります!!
- 問診(筋力低下の部位・既往歴・家族歴・薬歴・飲酒歴)
- 病状把握(発疹・発熱・筋肉痛などの各疾患に特徴的な症状がないか)
- 血液検査・画像検査
- 身体所見(神経症状・筋力低下・筋萎縮・反射・感覚障害・運動失調)
- 歩容・歩行能力
こんな感じですね!!
自分の担当した患者様が神経難病などが疑われている場合などはしっかり下調べをして介入に臨みましょう!!
基本的な病態は皆さんご存知”病気がみえる”などにも載っていますし、情報の取捨選択ができればインターネット検索でも見つけることが可能です!
それでは、本題である”運動麻痺”の分類方法について説明していきましょう!!
運動麻痺の分類方法

運動麻痺の分類方法ですが、色々あるので紹介していきますね!!
- 筋の随意性による分類
→”完全麻痺”or”不全麻痺” - 筋緊張の状態からの分類
→”痙性麻痺”or”弛緩性麻痺” - 病変部位による分類
→”上位運動ニューロン障害”or”下位運動ニューロン障害” - 麻痺の身体分布による分類
→”単麻痺”or”片麻痺”or”四肢麻痺”or”対麻痺”or”限局性麻痺”
これら4つになります!!
ここからは、それぞれの分類の仕方やその特徴について説明していきます!
筋の随意性による分類
”随意性”を完全に失ってしまったかどうかで分けることができる分類法ですね!!

随意性ってなんて表現するのが適当ですか?
辞書で『随意性』について検索すると…
『束縛や制限を受けないこと。思いのままであること』
『身体の一部などにいて、思いのままに動かせる状態』
このような意味があります!!
一般的には、脳卒中に伴う片麻痺を呈した患者に対して
自分の意思で思った通りにどの程度動かせるか。
こんな意味を込めて『随意性を評価する』というと思います!!

つまり…
全く自分の思い通りに動かせない≒筋収縮が生じない→『完全麻痺』
程度は異なるが全く動かせないというわけではない→『不全麻痺』
ってイメージで覚えて貰えばいいかな!!
完全麻痺・不全麻痺について
まず、完全麻痺について!!
完全麻痺は筋収縮が生じないと説明しました!
臨床では、”脊髄損傷患者”に対して使われることが多く、専門用語として『コンプリート』とも表現されますね。
一般的に、Danielsらの徒手筋力テスト(MMT)における段階 0 が『完全麻痺』の状態ではありますが、より厳密に『完全麻痺』かどうか確認するのは”筋電図”で筋収縮が本当に全く生じていないのかを確認する必要があります。
MMT段階 0は、『触知と視診によっても全く無活動』という表現だからですね。
ですが、実際の臨床現場において全例に対して行えるわけではないですから画像所見と理学所見を組み合わせての判断になるかと思われます!!

『末梢神経障害』患者に対して筋電図を用いて筋収縮が生じていないかどうかを測定することは勤務先で良くありますね!!
脳卒中による片麻痺患者に対してですが
”ブルンストロームステージ”でいうstageⅠ『弛緩性麻痺』という表現があるので完全麻痺よりもこちらで表現されることがメジャーだと思います。
ちなみに後述しますが、弛緩性麻痺は”上位運動ニューロン”の損傷急性期に生じるので脊髄損傷患者にも『弛緩性麻痺』は使用しても全然大丈夫です。
次に、不全麻痺についてです!
『完全麻痺ではない』運動麻痺=不全麻痺って感じで大丈夫かと思います!!
随意収縮に差はあれど収縮が生じるということですね!
そのため、正常に近い程度から完全麻痺に近い程度まで幅広く使用されます。
”完全麻痺”と同様で臨床の多くの場面では、脊髄損傷患者に対して良く用いられている表現ですね。
脊髄損傷患者では、その重症度を分類するためにASIA impairment scale(以下AIS)を用いて評価されます!
A(完全):仙髄領域(S4~S5)に知覚または運動機能が残存していない。
B(不全):仙髄領域(S4~S5)を含む神経学的損傷レベルより下位に知覚は残存しているが、運動機能は残存していない。
C(不全):神経学的損傷レベルより下位に運動機能は残存しているが、Key muscle の半数以上が Manual Muscle Test(MMT)3 未満である。
D(不全):神経学的損傷レベルより下位に運動機能は残存し、Key muscle の半数以上が MMT3 以上である。
E(正常):知覚・運動機能は正常である。
この評価を見ると分かると思いますが、B〜Dまで表現上は全て『不全麻痺』です!!幅広く用いられていることがよく分かると思います!
脊髄損傷に関する情報が知りたい方はこちらの記事がおすすめ!
筋緊張の状態からの分類
次はこちらですね!!
”痙性麻痺”
”弛緩性麻痺”
麻痺に伴う『筋トーヌス(緊張)の異常状態』でこの2つに分別されます!
痙性麻痺=”筋緊張が亢進した状態”
弛緩性麻痺=”筋緊張が減弱した状態”
この2つの筋緊張異常状態は
損傷される神経の部位によって変わってくるようです!!
痙性麻痺は筋トーヌスの亢進したもので上位運動neuronの障害が原因であり,必ず脳または脊髄の病変によるものであり,下位運動neuron障害または筋疾患ではみられない。弛緩性麻痺は筋トーヌスの減弱したもので下位運動neuron障害によることが多いが,上位運動neuronの障害時にも出現する。即ち,脳,脊髄の急激な病変による場合,初期は弛緩性麻痺を示すことが多い。この最もよい例は脳卒中による片麻痺の急性期の場合である。
大友 英一:姿勢・位置異常アトラス1 弛緩性麻痺 Brain and Nerve 脳と神経 29巻1号,6-7,1977
つまり…
✔︎痙性麻痺
→”上位運動ニューロン損傷
✔︎弛緩性麻痺
→”上位運動ニューロン損傷急性期”or”下位運動ニューロン損傷”
それぞれこのような組み合わせになりますね!!

『上位運動ニューロン障害』の場合は、基本的には痙性麻痺になるけど
初期は弛緩性麻痺→痙性麻痺に移行するものもあるからそこは注意が必要だね!!
病変部位による分類
次はこちら!!病変部位による分類です!
運動神経には大きく分けると2種類存在しますが、そのどちらに病変があるのかで分類される方法になります!!
2種類の運動神経というのがこちら!
- 上位運動ニューロン
- 下位運動ニューロン
前者の障害による麻痺を『中枢性麻痺』
後者の障害による麻痺を『末梢性麻痺』
このように表現したりもしますね!!
上位運動ニューロンとは…
大脳皮質から内包,脳幹,脊髄を経て脊髄前角細胞に至る手前までの経路(皮質脊髄路)
大脳皮質から主に脳幹部に存在する脳神経核の手前までの経路(皮質延髄路)

簡単に言えば上位=脳〜脊髄の中を通る神経だね!!
上位運動ニューロン
↓
下位運動ニューロン
このように上位から下位へ向けて活動電位を発生させる頻度(発火頻度)を調節しますが
✔︎発火を促す作用
✔︎発火を抑制する作用
2つの作用があります!!
これら相反する2つの作用があるため
上位運動ニューロンが障害を受けると、単純に筋出力が低下するだけでなく
その抑制的な作用が障害されることにより『運動の質的な変化』が生じます。
先ほど紹介した『痙性麻痺』はその代表ですね!!
”病的共同運動”や”連合反応”なども質的な変化になります。
下位運動ニューロンとは…
- 橈骨神経麻痺
- 正中神経麻痺
- 尺骨神経麻痺
- 腓骨神経麻痺
- 脛骨神経麻痺
これらの神経のように『脊髄前角細胞から筋に至るまで』の経路までの神経をことを指します!

厳密には脊髄前角細胞もあるけど、基本的には脊髄の外で腕や足を走行している神経ということを覚えておこう!
下位運動ニューロンは,上位からの指令を受けて『筋を収縮させる信号を送るだけ』の作用になります!
筋を収縮させる信号が筋に届かなくなるだけなので、『単純に筋が収縮しなく』なります。
ちなみに、上位運動ニューロンと下位運動ニューロン両方が損傷した場合
筋緊張などの所見としては、下位運動ニューロンの障害による症状が中心になります!!
上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害の鑑別法
上位運動ニューロン・下位運動ニューロンについて言及したので
この2つの障害の鑑別方法についてまとめておきます!!
上位運動ニューロン | 下位運動ニューロン |
---|---|
痙性麻痺 | 弛緩性麻痺 |
病的反射『陽性』 | 病的反射『陰性』 |
筋萎縮なし | 筋萎縮あり |
線維束性収縮なし | 線維束性収縮あり |
麻痺の範囲は比較的広い | 麻痺の範囲は比較的狭い |
麻痺の身体分布による分類
こちらで最後です!!
身体分布による分類方法ですね!!
簡単にいうと…
運動麻痺がどこにあるか
これで名前が変わってきます!!
何種類かあるので紹介していきますね!
身体分布 | 麻痺の名称 | 主な原因 |
---|---|---|
一側の上肢or下肢のみ | 単麻痺 | 下位運動ニューロン障害 脳卒中局所病変 脊髄一側性病変 |
一側上下肢 (顔面・体幹含む) | 片麻痺 | 上位運動ニューロン障害 |
両側下肢 | 対麻痺 | 胸腰椎脊髄病変 |
両側上下肢 | 四肢麻痺 | 頸髄損傷 脳性麻痺 |
単麻痺より狭い範囲 | 限局性麻痺 | 末梢神経損傷 |
以上の5種類になります!!
主な原因も一緒に書いていますが、『両片麻痺』など記載したもの以外にもごく稀に遭遇する運動麻痺症例もあったりします。
基本的には『麻痺が生じている部位』によって名前を使い分けると覚えてもらっていいですが、その原因は様々なので、その病態などをしっかり把握してから介入するようにしましょう!!
本記事のまとめ

これで以上になります!!
運動麻痺の分類方法のまとめはこんな感じです!
- 筋の随意性による分類
→”完全麻痺”or”不全麻痺” - 筋緊張の状態からの分類
→”痙性麻痺”or”弛緩性麻痺” - 病変部位による分類
→”上位運動ニューロン障害”or”下位運動ニューロン障害” - 麻痺の身体分布による分類
→”単麻痺”or”片麻痺”or”四肢麻痺”or”対麻痺”or”限局性麻痺”
分類方法やその定義について
理解した上で”運動麻痺”の用語を使用していきましょう!!
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