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はじめに

おばんです!Yu-daiです!!
前回は低Na血症についてまとめました!
今回は高Na血症についてその病態やリスク管理などについてまとめていこうと思います!!
ICU入室患者において、ナトリウム異常がある場合…
✔︎ICU死亡率が増加
Georg-Christian Funk et al:Incidence and prognosis of dysnatremias present on ICU admission Intensive Care Med. 2010;36:304-11.
✔︎ ICU滞在日数が増加
✔︎院内死亡率が増加
もちろん、急性期以外にもナトリウム異常は出現します!!
むしろ、集中的な治療が終了した後の方が全身管理は甘くなりますからリハビリの方でも注意が必要です!
Naについて理解しておく必要性がわかったところでしっかりまとめていきましょう!

Na血症について学んでいくには身体の中が”水分不足?”or”水分過剰?”
これらについて頭の中で抑えたら理解しやすいと思うよ!
それじゃあ一緒に学んでいこう!!
血清Naとは?

Naは人体の生命活動に重要な電解質の一つです!!
その他にもKやCαなど多くの電解質がありますが
Naのみが持つ大きな性質があります!!
細胞内や骨に圧倒的に多く存在し、細胞外・血清にはわずかしか存在しない
→血管内において水の増減や血漿浸透圧の変化が生じても細胞内または骨と血清との間で電解質の移動が生じるため、影響が緩衝される
細胞内にはわずかしか存在せず、細胞外・血清に多く存在する
→血管内の水の増減を緩衝できないため、血管内の水の増減や血漿浸透圧の影響を直接受ける

つまり、Naは水分摂取の程度や点滴とかで簡単に影響を受けるってことですか?

その通りだよ!!だからDr.は点滴や利尿剤を使用してNaを調整するんだよ!!
KとかCaに関しては高濃度に調整された高張液を投与されることもあるんだけどね。
さらに、血清Naは血漿浸透圧を規定する上で最も重要な因子です!
血漿浸透圧とは?
血液中の浸透圧(溶液が水を引き込む力)であり
✔︎血漿浸透圧(Na・血糖値・BUNによって規定)
✔︎膠質浸透圧(アルブミンによって維持)
この2種類があり、どちらも血管内に水分を保持する働きがあり、細胞外液量を規定する
一応、血漿浸透圧の式を載せておきます!
血漿浸透圧=Na×2+血糖/18+BUN /2.8
血漿浸透圧は、
糖尿病コントロールが不良であったり、腎機能が極端に悪くなっている場合を除けば
ほぼ血清 Na 濃度により形成されていると言っても過言ではありません!

たったこれだけですけどNaってこんなに重要な電解質だったんだと考え直しました

そうだね!
臨床では、Naが~だから、ここに気をつけてね!!って感じくらいにしか指導されないことの方が多いんだけど改めて自分で勉強し直すとどれだけ重要なものかがわかってくるよね!
話を戻しましょう!
先ほど、”血漿浸透圧は細胞外液量、つまり細胞外液の容積を規定する”と紹介しました。
細胞外液とは?
体液は細胞膜を介して”細胞内液”と”細胞外液”に区分される
細胞外液は毛細血管壁を介して”組織間液”と”血漿”に分けられる
細胞外液は以下の働きがある
①循環血液量の維持
②栄養素や酸素を細胞への運搬
③老廃物や炭酸ガスを細胞外に運び出す
細胞外液は
3/4 を占める組織間液(間質液)
1/4 を占める血管内(循環血漿)
この2つに分けられます!
間質液が増加した状態が浮腫
循環血漿が減少した状態が血管内脱水
循環血漿が極端に減少した状態がショック
このように間質液や循環血漿の増減によって様々な症状が出現します!
全てとは言えませんが、活動性の出血や感染症などの理由を除けばNa の量や分布の異常によってこれらの症状は引き起こされていると言えます!
Naについて覚えておいてほしいポイントとしては…
- 他の電解質と違い、体内の水分量の影響を受けやすい
- 血漿浸透圧はほぼ血清Naによって形成される
- 血漿浸透圧は細胞外液(間質液・循環血漿)を規定する因子である
- 間質液の増大=浮腫
- 循環血漿の減少=血管内脱水
この前提を覚えながら次にいきましょう!!
// /高Na血症の病態とリスク管理

高Na血症を呈した時の症状はこちら!
急性高Na血症 | 慢性高Na血症 |
---|---|
口渇 | 左記のような症状が軽微に認められる |
無気力 | |
虚脱 | |
痙攣 | |
横紋筋融解 | |
意識障害 | |
錯乱 | |
昏睡 |
体液量減少型(水・Na両方の欠乏)の場合は循環血液量が減少したことで
✔︎血圧低下
✔︎頻脈
✔︎過呼吸
これらの呼吸や循環動態への影響も及ぼす

基本的には低Na血症の時と同じような症状がでるんですね?

確かに意識障害をはじめとした神経症状という点では一緒かな?
ただし、その機序は少し違くて
高Na血症は
血漿の張度(つまり濃度)が上昇することで
脳細胞の脱水が進行し、脳萎縮が生じることで生じます!
場合によっては、
急性の(急激な)脳細胞萎縮によって
- 脳容積の減少
- 血管の破綻
これらが生じた結果以下の疾患を呈します!!
脳出血,くも膜下出血, 硬膜下血腫

高Na血症の場合はもしかしたら脳卒中の発症にもつながってしまう可能性もあるんですね…
出血に至らなくても脳の萎縮は起きてしまうのか〜

僕の個人的な経験としては、純粋な高Na血症によるものは臨床においてそう頻繁には遭遇しないよ!
どちらかと言えば、”浸透圧性脱髄症候群”という病態に遭遇する可能性が高いかな!!
入院患者の約 2%に起こり、低Na血症よりもその発症頻度は低い
Combs S, et al : Dysnatremia in patients with kidney disease. Am J Kidney Dis 63 : 294―303, 2014.
浸透圧性脱髄症候群(ODS)は,ヒトにおいては橋中心髄鞘崩壊に代表される中枢性の脱髄疾患であり,多くの場合低ナトリウム(Na)血症の治療時に血清Na 濃度が急速に補正されることによって生じる重篤な合併症である
椙村益久:低ナトリウム血症補正に随伴する浸透圧性脱髄症候群の治療 最新医学Volume 67, Issue 10, 2523 – 2530 (2012)
”浸透圧性脱髄症候群”は主に急速な血清Naの供給によって生じる病態です!!
つまり、医原性の合併症によるものが多いため低Na血症の補正には以下の条件が推奨されているようです!
点滴による補正速度を8 meq/L/day もしくは 16 meq/L/48hrs.以内に抑える
話がずれました!
高Na血症は水とNaの増減の違いによって大まかに以下の3つの病態に分かれます!
- 細胞外液量減少型(低張性体液喪失によるもの)
- 細胞外液量正常型(水欠乏によるもの)
- 細胞外液量増加型(Na 負荷によるもの)
では、これらについてまとめていきましょう!!
細胞外液量減少型(低張性体液喪失によるもの)の高Na血症
細胞外液量減少に伴う高ナトリウム血症は
何かしらの理由で細胞外液を喪失した結果生じますが、
ナトリウムよりも大量の水分が身体から失われたときに生じます!!
その理由ですが…
- 腎性水喪失
- 腎外性水喪失
大まかに分けると以上の2つの型に分類されます!
- 浸透圧利尿
- ループ利尿薬
- 薬剤
- 高Ca血症
- 低K血症
- 高齢者
- 下痢
- 嘔吐
- 胃液吸引
- 発汗過多
- 熱傷
- 外傷
急性期においては…
脳卒中→浸透圧利尿薬(グリセレブやマンニトール)
心疾患→ループ利尿薬(フロセミド)
このように各疾患ごとに利尿薬を使用する頻度は多いため、これらの使用の有無やその結果血清Na値に変化が生じていないかなどのチェックはセラピストの方でも必要と思われます!!
(既往に心疾患があったり治療によって心不全が引き起こされた場合には脳卒中でもフロセミドは使用されることはあります!)

なんで、高カルシウム血症で高Na血症になるんですか?

高カルシウム性腎症といって、血清Cαの増加で尿中Cα排泄が増加したことによって腎臓に対してのカルシウム負荷が増大することによって引き起こされるようだよ!
その他の電解質の数値も要チェックです!!
細胞外液量正常型(水欠乏によるもの)の高Na血症
次は水欠乏によって引き起こされるタイプの高Na血症についてまとめていきます!
一般的にこのタイプの高Na血症では身体の中で…
血清ナトリウム値→変化なし〜やや低下
水→著明な減少
このような変化が生じるのが特徴です!
”細胞外液量減少型”と同様で”細胞外液正常型”も…
- 腎性の水喪失
- 腎外性の水喪失
大きく分けてこの2つのパターンに分かれます!!
- 中枢性尿崩症
- 腎性尿崩症
- 高Ca血症
- 低K血症
- 高齢者
- 不感蒸世増加
- 発熱
- 呼吸器感染症
- 人工呼吸器
- 飲水制限
- 口渇中枢障害

人工呼吸器を装着している方はなぜ水喪失しやすいんですか?

教科書的には意識障害や高齢者と同様で口内摂取ができないためと言われているね!
急性期で働いていると
大多数の方は点滴加療も同時に行われているからそんなことはないように感じるけど、経過が長くなって点滴の数が少なくなったりすることで生じることはありそうだね!
同様の理由で口腔中枢障害(嚥下機能障害や気切後)の方についても注意が必要だね!!
細胞外液量増加型(Na負荷によるもの)の高Na血症
このタイプの高Na血症が考え方としては一番シンプルです!!
Na負荷(過剰負荷)による高Na血症は…
- 重炭酸Na輸液
- 高張食塩液輸液など
基本的にはこれらの輸液の過剰投与による医原性のものが多いようです!

え、それじゃあどれだけ輸液されているのが適切なのか僕らは知っておかなくちゃいけないんですか?

個人的な見解だけど
流石にそれは頑張りすぎだと思うな!
セラピストとしては”どうしてNa異常が生じているのか?”という点についてデータや治療内容などから推測をたてて、それを基にした離床・介入計画を立てるというのが重要だからね。
仲の良い医師や看護師さんがいれば輸液の投与量なども含めてNa異常について質問しながらディスカッションすれば良いんじゃないかな?
まとめ
今回は、高Na血症についてまとめてみました!!
低Na血症と比較すると発症頻度は少ないですが、合併症の中には非常に危険なものもあるのでしっかり患者さんがどのような状態になっているのかを確認しながら介入しましょう!
高Na血症が疑われた患者さんを担当した際には以下の点をチェックしよう!!
- 電解質を大量に喪失するようなイベントや既往はないか
- 患者への投薬・輸液の種類や量などはどのように変化しているか
- 患者が積極的に水分摂取できている状態かどうか
- その他の電解質異常や全身状態の変化はないか
- 意識障害とともに運動麻痺などの神経症状が新たに出現していないか
高Na血症の背景にどのような疾患やリスクが潜んでいるのかを理解しておくことで
リハ介入において適切な判断をとることができるのでしっかり把握しておきましょう!!
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どうして急性期からNa異常をコントロールしなければならないんだ?