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はじめに
みなさんおばんです!!
ゆーだいです!
前回は運動学習における理論についてまとめました!
今回は、
運動学習を可能にしている脳の各領域についてまとめていきます!!
運動学習を通じて
脳の構成や機能についても多くのことが学べるので
最後までこの記事を読んでいただけたら嬉しいです!!
ではいきましょう!!
// /運動学習に関わる神経回路は大きく分けて2つ!!

私たちが運動を遂行するには…
✔︎随意運動の司令塔の役割を果たす
”運動皮質”
✔︎運動順序や運動の組み合わせを制御し
✔︎運動皮質からの情報と感覚情報を基に運動の適正化を図る
”大脳皮質−皮質下回路”
この2つによって”運動の遂行”が可能になっています
主に運動学習に関わってくるのは
大脳皮質−皮質下回路の方!
先に2つの機能の紹介しましたが…
運動順序や運動の組み合わせを制御する→基底核回路
様々な情報を統合して運動の適正化を図る→小脳回路
運動学習は主にこの2つの回路によって可能になります!!
// /運動学習を理解するために重要!基底核回路と小脳回路!!
先ほどから話している通り
大脳皮質-皮質下回路とは…
- 基底核回路
- 小脳回路
この2つの経路に大別されます!
1つ1つ簡単におさらいしていきます!!
まずは、基底核回路について説明していきます!
まずは基底核回路のおさらいから!!
まず基底核についてですが…
基底核は大脳皮質下にあり,大脳皮質,視床, 脳幹と結びついた一群の細胞集団である.
Saito N, Mushiake H, Sakamoto K, et al:Representation of immediate and final behavioral goals in the monkey pre-frontal cortex during an instructed delay period. Cereb Cortex 15:1535-1546, 2005
この文献で説明している細胞集団とは,
尾状核
被殻
淡蒼球
黒質網様部
黒質緻密部
視床下核
これらから基底核は成り立っています!
基底核回路の構成経路は?
まずは、構成経路をおさらいしましょう!!
基底核回路は大脳皮質の様々な領域から入力を受けますが
直接大脳皮質から入力を受ける細胞は2つしかありません!

- 線条体(尾状核+被殻)
- 視床下核
この2つになります!!
基底核回路はこの2つの細胞を経由して
他の基底核細胞や視床とのループを構成します!
大脳基底核の機能などについてはこちらをチェックしてください!!
基底核回路の機能は?
では次は、機能について!!
基底核回路にいくつかの種類があることはご存知ですよね?
図はこちら!


これらの大脳皮質−基底核ループは
Alexander らが 1986 年に提唱しました!!
基底核ループは
出力される大脳皮質の領域や経由される基底核細胞の違いで
大きく分けて5つの回路に分けられました!!
それぞれの特徴は別記事で紹介することにしまして…
今回は運動学習にとって重要な回路を中心に説明していきます!
基底核回路は運動学習にどのように関わってくるのでしょうか?
運動学習に基底核ループはどのように関わっていくのか?
さて、
大脳皮質−基底核回路のループについて説明してきましたが…
「結局、基底核回路はどんな形で運動学習に関わるの?」
と思ってきた方も多いと思うのでそれについてまとめていこうと思います!!
運動学習の初期は視覚ループが重要!!
運動学習の初期
つまり、新しい課題を獲得し始めた段階のことです。
この段階においては
視覚ループが重要な役割を果たします!!

視覚ループは1つの領域から出力されたループではなく…
前頭前野
前補足運動野
頭頂葉連合野
主にこれら連合皮質から出力され、ループを形成しているもののことを指します!
(挿入画像では分かりやすくするために前頭前野しかいれていません…)
運動学習の初期においては
この視覚ループによって
外的・内的空間の情報(空間座標)が処理
↓
運動前野で運動座標に変換
↓
1次運動野から運動出力
空間座標→運動座標への変換を経て運動が発現します!
その際
その視覚情報などの空間座標は運動座標で記銘(コード)されます。
記銘とは…
心理学的に説明すると
記憶、つまり憶えるための過程の1つです。
記銘→保持→想起
記憶はこのような過程を経て蓄積されていきますが…
記銘は記憶するための一番最初の段階になります!
運動学習が進むと補足運動野ループなどの運動ループが中心になる!
動作・動作手順が運動座標で記銘(コード)された後…
練習を繰り返し学習がさらに進んでいくと…
”保持””想起”の段階に移行します
この移行をループ間で例えると
空間座標→運動座標→運動発現
↓
運動座標→運動発現
つまり、初めは視覚情報が必要であった動作は
想起の段階に至ることで
蓄積された記憶の中から運動指令が出力されるようになります!
✔︎要チェック!
運動座標系とは?
簡単に説明すると…
”腕や足を動かすために必要な情報”
それは例えば、
どの関節が屈曲・伸展…する必要がある?
どの筋肉が収縮・弛緩すればいい?
このような情報になります!!
それぞれ
- 関節座標系
- 筋座標系
このように名前が付けられています!
つまり、
運動座標系とは、これらの総称になります!!
視覚ループから運動ループへの移行は
下の図のように
「パラレル・ニューラル・ネットワーク」の概念図で説明されています

運動学習によって空間座標系の過程が結合し、反復されることで
運動座標系においても動作の枠を超えて結合し、
空間系→運動系への変換が必要なくなり(並列的な処理)、連続的な運動が可能になる
視覚的フィードバックは
運動学習の初期段階では非常に有効な手段の1つですが…
依存性も高いことが言われているので、学習段階に応じた環境調整が必要になりそうですね!
強化学習に必要!!辺縁系ループ
もう一つ、運動学習に重要なループを紹介します!!
その名も
”辺縁系ループ”
このループの機能についてまとめると…
- 辺縁系 (扁桃体,海馬,視床下部,側頭葉など)からの興奮性入力もある
- 情動機能に関与する
- 同時に腹側被蓋野からのドーパミン作動性入力も受けている
→ドーパミンによる動機付けや報酬を通して強化学習の可塑性に関与する - 前頭前野系ループと共に,
認知情報の評価,情動や感情の表出,意欲などの高次脳機能や精神活動に関与
情動機能にも関与していますが
ここで重要視したいのが
動機付けや報酬を通した強化学習の可塑性に関与しているということ!

この反応の中心は…
側座核を中心とする尾状核の腹側部を中心に起こります!!
この部位には
前頭前野からの興奮性入力
腹側被蓋野からのドーパミン作動性入力
これらが入力されていますが
強化学習は
主に下のドーパミン作動性入力によって引き起こされています!
図にも書いていますが
中脳黒質緻密部のドーパミン系 A9
このドーパミンは
”報酬を用いた強化学習において重要な働きをする”
このように考えられています!
”報酬”とは…
ラットにおいては”餌”になりますし
ヒトにおいては”社会的報酬””金銭的報酬”になります!!
社会的報酬とは
”褒められること””賞賛されること”
リハビリ場面における報酬に最も多いのはこちらの社会的報酬になりますね!!

この強化学習で重要なことは報酬そのものの大きさではありません。
報酬価値予測誤差(Prediction error:PRE)によって決まります。
報酬価値予測誤差というのはこういうことです!
中脳ドーパミン細胞の神経活動は、 予期しない時に報酬が与えられると増加し、報酬が与えられることが予測できる場合には持続的に活動し、予測された報酬が得られなければ減少する。
虫明 元:運動学習 ―大脳皮質・基底核の観点から― 総合リハ・36 巻 10 号・973~979・2008年

つまり、
自分が予想していた報酬よりも大きな報酬が得られることで
ドーパミン細胞が興奮し、強化学習が進められます!!
強化学習には
positive PLE
negative PLE
このように2種類に分かれていますが、こちらについてはまた別の記事で!!
基底核回路については以上です!!
小脳回路の構成をおさらい!!
最後に小脳回路について説明していきます!!
小脳は、課題を繰り返す間に、感覚情報における誤差を検出して
長 谷 公 隆 :運動学習理論に基づくリハビリテーション 四條畷学園大学 リハビリテーション学部紀要 第 9 号 2013
その誤差を減少させる「誤差学習」を行う場である
このように
小脳回路も運動学習において
非常に重要な要素の一つなので最後まで見ていってください!
小脳回路はこのように構成されています!!
運動学習に重要な回路を入出力ごとにまとめるとこんな感じ!!
小脳には非常に多くの領域からの入出力があるので厳選してます!

こちらは大脳皮質からの下降性の入力になります!!

こちらは脊髄からの入力です!!
それでは今度は出力の経路について!

これは小脳で照合された誤差情報(運動情報)に限った経路です!
他には前頭前野に至る認知情報の経路やその他の脊髄へ向かう経路などもありますが…
ここについては今回は割愛します!!小脳についての別記事で詳しくやろうと思います。
運動学習・運動制御には必須!小脳回路の機能!!
最後に小脳回路の運動学習における機能について説明していきます!!
先に一言でいってしまうと…
- フィードフォワード制御
- フィードバック制御
ってことになりますが
理解を深めるためにこの下も読んでいただけたら嬉しいです!
運動指令は皮質橋小脳路を経て小脳でコピーされる

まずは、皮質橋小脳路について!!
運動皮質からの運動指令は皮質脊髄路を介して運動として出力されるだけでなく
”要求されている運動反応”として
運動前野から小脳半球まで皮質橋小脳路(前頭橋路+橋小脳路)を介して送られ
小脳半球でコピーされます!
このことをefference copy(遠隔コピー)と呼びますが、
コピーされた情報は小脳において
”フォワードモデル (forward model )”
つまり、”予測された結果に関する感覚情報(predicted-SC)”として記憶されます!!
運動学習の理論編でお話しした”再認スキーマ”がこれに当たります!
小脳の外側部,小脳半球と外側核は大脳小脳とも言われ,大脳皮質からの入力が橋核を経由して入力され,外側核からの出力は視床核を経て大脳皮質へ送られる.
山口 峻司:運動制御の神経回路と試行錯誤学習 山形大学紀要(工学)第32巻 平成山22年 2月
外側核=歯状核のことです!!
このように、大脳皮質からの入力は橋核を経由して
橋小脳路を通り、歯状核に到達します!!
小脳に集められた感覚情報はフォワードモデルと照合される
小脳核に到達した情報は下オリーブ核に送られ
もう一つの入力経路である、オリーブ小脳路からの情報と照合されるわけですが…
オリーブ小脳路からはどのような情報が入力されるのでしょうか?
オリーブ小脳路(下オリーブ核)には様々な領域から情報が入力されています!
- 赤核(を介して大脳皮質や脊髄からの情報)
- 上丘
- 前庭核
- 三叉神経核
- 被蓋前野など
運動学習においては特にこの情報が重要です!
”運動の結果に関する情報(SC)”
これは”固有受容器情報”と定義されていますが…
わかりやすく説明すると
筋紡錘、腱紡錘、関節内圧、皮膚伸張などの運動情報のことです!!
この情報を脊髄→小脳→赤核→下オリーブ核→小脳という流れで伝えてくれます!!
姿勢制御に重要と言われている感覚ですね!
この情報が下オリーブ核で運動モデル(内部モデル)と照合されます!!
照合された情報に誤差が生じた場合は運動モデルは書き換えられる!

フォワードモデルに 基づく
「意図された運動に関する SC(感覚情報)」
フィードバックされた感覚情報から構成される
「実行された運動に関する SC」
これらに誤差が生じていた場合…
”誤差信号 (error signal) ”が登上繊維を介して
小脳の平行線維(parallel fiber)のシナプス伝達効率を持続的に抑制します!
これを”長期抑圧 (long-term depression:LTD)”と言いますが…
この抑制は
登上繊維と平行繊維がほぼ同時に活性化することで起きやすいと言われています!
この長期抑圧の結果…
誤差が修正され、運動指令がより理想的になるよう
視床を介して大脳皮質、赤核を介して脊髄に戻されます!!
ちなみに登上繊維からの入力信号のことを”教師信号”と呼びます!!
これが教師あり学習”などの名前の由来です!
覚えていると次の記事が理解しやすくなると思いますよ~!
小脳で学習された運動の記憶はどこに保存される?
「運動学習で習得した技能はどこで保存されるの?」
こんな疑問を持たれている方もいるんではないでしょうか?
小脳には学習した運動を記憶として保存する機能もあります!
1 時間の練習によってまず小脳皮質 のプルキンエ細胞に運動記憶ができるが,それはわずか 1 日で 消えてしまう。ところが一日 1 時間の練習を1 週間続けると,今度は小脳核にひと月くらい持続する長期の運動記憶ができる.
永 雄 総 一 :小脳による運動学習機構 理学療法学 第 42 巻第 8 号 836 ~ 837 頁 2015 年
つまり,練習を繰り返すことにより,見かけ上運動記憶がプルキンエ細胞から小脳核の神経細胞へシナプスを越えて移動することになる.この現象を,記憶痕跡の移動と呼ぶ
短期間の記憶→プルキンエ細胞
長期間の記憶→小脳核
このように
短期記憶・長期記憶の違いによって保存される小脳の部位が変わってくるようです!!
運動の習得にはこの”記憶痕跡の移動”が不可欠になります!
この現象を引き出すには、
反復課題を継続的に行なっていく必要があるので
課題の難易度設定や実施回数の設定などはしっかり行なっていきたいところですね!!
まとめ
それでは本記事のまとめです!!
- 運動学習に重要な神経回路は大脳皮質-皮質下回路
- 大脳皮質-皮質下回路には基底核回路と小脳回路の2つの回路がある
- 基底核回路のうち運動学習には視覚系ループと運動系ループが重要!
- 強化学習には辺縁系ループが関わっている!
- 大脳からの運動指令は小脳でコピー・記憶される(遠隔コピー)
- コピーされた情報は下オリーブ核で様々な感覚情報と照合される
- 誤差がある場合は登上繊維がプルキンエ細胞に作用し大脳皮質に戻される!
- 小脳で学習された短期記憶はプルキンエ細胞、長期記憶は小脳核に保存される
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運動学習について学ぶ際におすすめの書籍!!
記事中にも登場したSchmidt先生の著書!!
和訳されているもの!
文字数が多いですが、理論的な内容以外にも運動パターンなど臨床に活かせる内容は多い!!
個人的にはこちらの方が分かりやすかったです笑
運動学習についての解剖生理を説明されているのと
脳卒中や小脳性の失調、末梢神経障害などなど様々な神経系疾患に対する
具体的な介入方法が記載されています!
”注意”と書いていますが、この書籍は脳卒中系の方に対してのものではありません!
健常者に対する介入について記載されています!!
空間座標(視覚情報)から運動座標への変換(直列的な処理)が必要で、
1つ1つの動作が独立し連続していなかった
→空間座標と運動座標の組み合わせを覚えている時期