- 論文を見つけたが、批判的吟味の方法が分からない
- 批判的吟味の項目に知らない単語が多くて、一つ一つ調べるのがツラい
- もっとスマートに論文を読めるようになりたい!
- はじめに
- 批判的吟味をするための情報はここに載っている!
- 対象者の数やベースラインなどは妥当?
- 研究デザインのレベルは高い?
- 盲検化はされている?
- 統計的な解析方法は妥当?
- 結果と考察の整合性は保たれている?
- まとめ
Contents
はじめに
前回は、実際にPubMedで文献を探してみました!
みなさんは、自分がPICOで定式化したものと内容の近い文献を見つけることはできたでしょうか?
今回は、いよいよ大詰め。
批判的吟味についてどのように行うのかをまとめていこうと思います!
ネットで検索すると、PT協会などで
実際の症例を例としてどのように批判的吟味をしていくのかといった内容で
解説してくれているものがありますが、
知識武装なしでみると分からない単語が結構多めで、いちいち知らないワードを検索しながら読み進めていく必要があります。
今回の僕の記事では、EBPTを始めてみようと思った方が批判的吟味をする上で分からないワードがなくなるような記事にしていきたいと思います!
では、よろしくお願いします!
// /批判的吟味をするための情報はほとんど方法に載っている!
まず、どこを見ていくのかが分からない方向けに!
基本的に、その研究がどのようなデザインで、どんな点に注意して研究を行ってきたのかというところは全て【方法】の部分に載っています。
そのため、まずはじめに【方法】の部分に目を通しましょう。

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対象者の数やベースラインは妥当か?
まずは対象者の数やベースラインが妥当か見てみましょう!
対象者の数(サンプルサイズ)について
専門用語ではサンプルサイズと言われていますね!
ここで気をつけたいのが、サンプル数とサンプルサイズを混同してしまうこと!
サンプル数=群の数のこと。介入群とコントロール群との2群ならサンプル数は2。
サンプルサイズ=1つの群のサイズ。その群に何人いるかということ。

研究をするにあたっては、あらかじめ統計解析ソフトを使用して必要サンプルサイズを計算することができます。
その計算をあらかじめされており、それに則ったサンプルサイズであるということが記述されているかどうかを文中の【対象者】または【方法】などの項目から探してみましょう。
書かれていない場合は、単純にサンプルサイズの数がどれくらいかをみてみましょう。一般的に2群を比較したいとき、それなりの検出力を得るためには、互いに20人以上は欲しいと言われています。
2群が同数で比較されているか?
対象者の数が少ない研究に散見されますが、例えば介入群が8人でコントロール群は15人でうまく同数に分かれていない場合があります。
サンプルサイズが小さいことで検出力は低下しますが、2群のサンプルサイズに違いがありすぎても検出力は落ちると言われているので、2群の数がほぼ同数かどうかも確認しておきましょう!

ベースラインは2群共とも揃えられてる?
ベースラインとは、対象者の年齢や性別,疾患の重症度などの背景因子などのことです。
比較研究の場合には、このベースラインが違う場合、それぞれの特性(ベースラインの違い)が間接的に結果に影響を及ぼしてしまうことがあります。
例えば
運動麻痺の程度の割合が2群で違うとしましょう。片方は運動麻痺が軽度の方が多く集められていて、もう片方は運動麻痺が比較的重度の方が多くいるとします。
アウトカムを10m歩行速度やFACなどにした場合、どちらの群が数値がよくなりやすいでしょうか?
答えはご想像の通りです。
このベースラインが2群で偏りが生じていないかを確認しましょう。

文中の【方法】や場合によっては【結果】の項目中、もしくは表にされて明記されていると思います。
対象者の85%以上が効果判定の対象になっている?
これは、参加した対象者の中で脱落が何割になっているかを調べます。
脱落者の割合が多くなることで、解析されるサンプルサイズが減少するため、検出力が下がってしまう可能性があるからです。

これは文中の【結果】の項目中に記述されていると思います。
あとは、その脱落例を含めて解析しているかどうかについても検討する必要がありますが、現在脱落した例に対する解析については統一化されていないようです。
ここについては僕も今後勉強しようと思いますが、現状では脱落者に対する解析をしているかどうかを見ておくとだけ覚えていてください。
研究デザインのレベルは高い?
収集した論文を検討する上で、その研究の結果がどれくらい信憑性が高いことを言っているのかというところを把握しないといけませんね。
例えば、症例報告レベルだと、
「この患者さんに対してこういう風に治療したらめちゃくちゃよくなるよ!みんなやってみよう!!」と力説したとしても
「え、でもこの人にたまたま合った治療だったかもしれないし、そもそも発表している人も治療された人もそう思い込んでるだけじゃね?」
と言った意見も出てきてしまうわけです。
そのため、基本的な文献の探し方としては研究デザインのレベルが高いものから参考にした方が良いとされています。
もちろん、症例報告がダメと言うものではありません。そこは勘違いしないようにしましょう!
個別性に特化したものが症例報告であるので、もし自分の患者さんがかなり特殊なケースなどの場合は症例報告から参考にする必要があります
では研究デザインが高いものとはどんなものか?
1次情報でエビデンスレベルが高いのはRCT!
理学療法士協会がMinds 診療ガイドライン作成の手引き 2007を参考にして作成した”「理学療法介入」のエビデンスレベル分類”というものがあります。

エビデンスレベルが最も高いとされるのは、2次情報であるメタアナリシスやシステマティックレビューですね。
1次情報レベルで最もエビデンスレベルが高いものは
ランダム化比較試験(RCT)によって解析した研究
他は、図のような結果になっています。
吟味している論文がランダム化比較試験を行っているかどうかが一つのポイントです。
ランダム化比較試験(RCT)って?
ランダム化比較試験というのは、
対象者を介入群とコントロール群に分ける際に
”研究者自身で割り振りを決めずに、コンピューターなどを使いランダムに割り振っていくこと”
この作業をすることで、選択バイアス(偏り)というものが起きにくくなり、質の高い結果となりやすいです。
「ランダム化比較試験を行っているかどうかを判別するにはどこをチェックすれば良いの?」
と感じる人がいると思いますが、
論文でいうと方法の中に”対象者”という項目や論文によっては”ランダム化比較試験”もしくは”無作為化比較試験”という項目が作られてありますので、それらの文中に書いています。
ランダム化か準ランダム化か
ランダム化比較試験にも対象者をランダム化する方法の違いで2種類に分かれます
コンピュータで乱数を発生させ,割り付け表を作成する方法
くじ引きやサイコロの結果などで割り付け表を作成する方法
この2種類に分かれます。
みなさんが想像する通り、ランダム化の方が選択バイアス(偏り)は起こりにくく、エビデンスレベルが高いです。
上記で説明した項目中におそらくどのようにランダム化をおこなったかを記述しているのでチェックしてみましょう。

ただ、準ランダム化でもエビデンスレベルが低いというわけではないですし、国内では現状としては準ランダム化を採用している文献も多いようです。
盲検化はされている?
次に”盲検化という処置が施されているか?”という点をチェックしましょう!
これも方法の”対象者”の項目に記載されていると思います。
盲検化とは?
英語論文だと、blindingとかmaskingと呼ばれていますね。
ランダム化で選択バイアスを無くしたとしても、次は検査・測定でバイアスが発生するかもしれません。
検査・測定者がその対象者が介入群かコントロール群か知っている
被験者が自分が介入群かコントロール群か知っている
この場合、検査・測定者が先入観を持って判断する可能性や、被験者が自分が介入群かコントロール群か知ってることで研究に参加する姿勢や測定時のパフォーマンスに影響を及ぼしてしまう可能性があります。
上記のようなバイアスを取り払うために行うのが盲検化です。
盲検化には何種類かあります。
一重盲検化と二重盲検化がある
盲検化する対象の数によって名前が変わります。
被験者だけ知らない→一重盲検化
被験者と検査者どちらも知らない→二重盲検化
このように種類が分かれてきます。
当然、二重盲検化の方がバイアスが生じる可能性は低いです。

中には、データを分析する分析者も知らない三重盲検化も存在するようです。
統計的な解析方法は妥当?
これは用いられている統計手法が調査したいアウトカムの尺度などと合致しているかどうかを確かめないといけません。
ただ、この記事で書こうとすると文字量がとんでもないことになりそうなので、また後日別の記事で記載しますね。
結果と考察の整合性は保たれている?
整合性とは、矛盾がなく主張などが一貫していることを指します。
論文においては、その著者が考察で説明している内容と実際に測定しているアウトカムやその結果が対応しているかどうかを確認します。
例えば、考察で転倒について書いているのに、転倒に関するアウトカムがない場合は転倒に関する考察は飛躍している可能性があり、整合性が保てれていません。

また、用いられている文献なども考察と無関係なものや、考察したい部分と微妙にずれているようなものを引用していないかを確認しましょう!
また、前述している脱落者や盲検化できなかった要因などを検討しているものもあるのでそれについても確認すると良いと思います!
まとめ
批判的吟味についてのまとめについては以上です!
実際にこの記事をみながら自分がみている論文の批判的吟味の参考にしていただけたら幸いです!!
次回は、いよいよ最終章の”臨床適用の検討”についてまとめていきます!
参考になった方は、下のボタンを押していただけたら嬉しいです!!