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- 心臓の収縮能を調べたい方
- 収縮能を調べる際の注意点を知りたい方
- LVEF以外の収縮能の評価を知りたい方
Contents
はじめに

おばんです!
Yu-daiです!!
今回から心エコーについて勉強して行こうと思います!
心エコー検査は
心リハの分野でははもちろんですが
多分野でも重要な情報です!
脳卒中分野においては
- 心不全・心疾患発症による不整脈出現→心原性脳梗塞
- 治療による慢性心不全の急性増悪
上記のような理由で
心臓についての情報収集が必要になります!
こちらについては以前の記事に書いています!
人によっては脳卒中の発症により
不整脈や弁膜症などの心疾患が発見される場合もあります
しっかり情報収集せずに介入した場合…
心不全を増悪させてしまったり
最悪の場合は
致死的不整脈を誘発して亡くなってしまうこともあります
患者さんにそのような危害を加えないためにも
しっかり、ここで学んでいきましょう!
今回の記事では、その中でも最もメジャーな
LVEF(左室駆出率)がでてきます!!
心臓の収縮能を表す有名な指標ですが、
その数値を確認するにあたっては
気をつけなくてはいけない事項があります!
ぜひ最後までみていってください!!
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心臓における左室収縮能の評価
それでは本日の本題である
左室収縮能についてまとめていきます!
左室収縮能をみたいときはまずここをみましょう!
左室駆出率(LVEF)とは?
たぶんほとんどの人は聞いたことのある用語ですよね!
左室収縮能をみたいときは
ます左室駆出率(left ventricular ejection fraction;LVEF)に目を向けましょう!
臨床ではEFって省略されて会話に出てきますよね!
正常値は55%以上になります!
EF=SV/LVEDV×100(%)で計算できます!
SV(Stroke volume)は1回拍出量という意味です
1回拍出量は
SV= LVEDV – LVESVで計算できます
LVEDVとLVESVはそれぞれ
左室拡張末期容積(LVEDV:left ventricular end-diastolic volume)
左室収縮末期容積 (LVESV:left ventricular end-systolic volume)
日本語でこのように表されます!
1回心拍出量は左室拡張末期容積に依存すると言われています。
ちなみに
1回拍出量は以下の項目によって規定されます
- 前負荷
- 後負荷
- 心拍数
- 心収縮力
その中でも”前負荷”は
前負荷=左室拡張末期容積
このように同義で扱われており関連があります!
前負荷を規定する因子として
- 静脈灌流量
- 心房収縮力
この2つが挙げられています
後負荷については後の方でまた出てきますので
覚えておいてくださいね!
LVEFはBモードとMモードでどちらが正確なの?
心エコーの結果を見ると
Bモード
Mモード
この2つのモードごとに
LVEFが記載されている場合があると思います!
どっちがより正確な値になるの?
と思う方もいるかと思うので説明していきますね!
まずはそれぞれの特徴から!!
- Brightness;輝度の略
- 基本的な心臓の縦横の断面像が得られる
- 心臓の大きさや周囲,壁や弁,異物などが観察できる
- MはMotion:動きの略
- Bモードで得られた断層像を用いて経時的にその動きを表示
- 心臓壁・弁の動き・内腔の変化を時間ごとに表すことが可能
では、結論から!
LVEFは
Bモードの方がより正確と言われています!!
理由を説明しますね!
Mモードでは左室の形態が回転楕円体と仮定して測定しています!
回転楕円体とは
楕円を縦もしくは横に回転させてできた球体のことです
回転楕円体は3辺のうち2辺が同一であると定義されています
つまり、
- 左室肥大
- 心室瘤
- 局所的な収縮異常など
これらの要因によって回転楕円体が崩れると
上の仮定が崩れてしまうため
正確に測定しにくくなってしまいます!
ですので、左室肥大が生じていたり
リモデリングによって心拡大が生じている
などの症例の場合にはBモードを参考にした方が良いです!
LVEFによって心不全の分類ができる!
LVEFはその値によって心不全の分類が可能です!
みなさんは
HFrEF(ヘフレフ)
HFpEF(ヘプエフ)
これらの用語を聞いたことがあるでしょうか?
LVEFはこれらを分類する上で重要な指標になっています!!
一つずつ説明していきますね!!
LVEFが低下した心不全!HFrEFとは?
急性 ・ 慢性心不全診療ガイドラインにおいて
HFrEF(ヘフレフ)はLVEFが
40%未満と定義されます!
冠動脈疾患による収縮不全が主体で
特徴としては、
左室拡大が認められる
拡張障害も伴う
これら二つが挙げられています!
LVEFが保たれた心不全!HFpEFとは?
HFpEF(ヘプエフ)はLVEFが
上記ガイドラインにおいて
50%以上と定義されます!
また、HFrEF以外においては
- BNP>35pg/mL
(B型ナトリウム利尿ペプチド) - NT-pro BNP>125pg/mL
これらの項目も評価項目の一つに含まれています!
診断基準としては以下の項目が挙げられています!!
・臨床的に心不全症状を呈す
・LVEF が正常もしくは保たれている
・ドプラ心エコー法もしくは心臓カテーテル検査で 左室拡張能障害が証明される
Vasan RS, Levy D. Defining diastolic heart failure: a call for standardized diagnostic criteria. Circulation 2000; 101: 2118-2121.
LVEFが軽度低下した心不全!HFmrEFとは?
またの名を”HFpEF borderline”と定義されています!
急性 ・ 慢性心不全診療ガイドラインにおいて
LVEFが
40~49%と定義されます!
BNPやNT-pro BNPの基準はHFpEFと同様です!!
つまり
HFmrEFとは、HFrEFとHFpEFの間にある境界型の心不全です!
臨床上はHFpEFに近い病態を示す症例が多いとのことですが
十分エビデンスが確立されてはいないようです。
LVEF が改善した心不全!HFrecEFとは?
”heart failure with recovered EF”の略です!!
治療や時間経過とともに LVEF が改善する症例のことを指します!
- 頻脈誘発性心筋症
- 虚血性心疾患
- 拡張型心筋症など
これらの疾患が代表的な症例になります!
長期予後などは予後良好とする報告もあるようですが
HErecEFについても十分な研究結果は得られていないようです。
【要注意!】LVEFは左室肥大や弁膜症でその値が低下・上昇する
じゃあ収縮能はLVEFが基準値以上ならいいんだね!
よし、この人は55%以上だから大丈夫だな!!
って思ってる方いませんか?
LVEFは確かに収縮能を反映してくれますが、
場合によっては当てにならない場合もあります!
では、どんな場合に注意しなければいけないのでしょうか?
左室肥大(LVH)が強いほどLVEFの値は大きくなる!
LVHはleft ventricular hypertrophyの略です。
左室肥大によってLVEFは左右されます!
左室肥大が強くなればなるほど,同じ収縮能であればEFは大きくなる
Maciver DH : A new method for quantification of left ventricular systolic function using a corrected ejection fraction. Eur J Echocardiogr 2011 ; 12 : 228-234
左室肥大は、
- 高血圧
- 糖尿病
- 冠動脈疾患
- 弁膜症など
これらに伴って
左室ストレスの上昇を抑制するため
代償性に生じていきます!
そして
・心筋の虚血
・拡張不全など
これらを引き起こして
更なる悪循環をきたします。
つまり、
EFが同じ55%であっても
左室壁厚が6mmと12mmでは
実際の収縮能には差があるよ~ってことです!
後負荷の変化によってLVEFの値が変化する!
次は後負荷です!
後負荷とは?
心臓の収縮時に心筋に加わる負荷量のこと!
記事の前半で心拍出量に影響を及ぼす因子について書きましたが
覚えていますか?
- 後負荷
- 前負荷
- 心拍数
- 収縮能
後負荷も拍出量に及ぼす因子の一つになっています!!
では、後負荷を規定する因子にはどんなものがあるんでしょうか??
後負荷の規定因子
- 末梢血管抵抗
- 大動脈狭窄
- 僧帽弁閉鎖不全
- 血液粘稠度
- 動脈弾性
- 心室容積など
後負荷の規定因子については以上になります!
それでは、
後負荷がどのようにLVEFに影響するんでしょうか?
後負荷が高い場合
→LVEFが実際の収縮能よりも低く算出される
- 大動脈狭窄症
先天性2尖弁(70歳未満)
大動脈硬化症
リウマチ熱など - 動脈硬化など
後負荷が低い場合
→LVEFが実際の収縮能よりも高く算出される
心臓における後負荷が減少する因子
- 僧帽弁逆流
心拡大
退行性病変(僧帽弁尖の拡大、腱索延長・断裂など)
感染性心内膜炎
リウマチ性
先天性など - 左室壁厚の増大
心臓における後負荷の上昇・減少を規定する因子として
上記のものを挙げました!
勘が鋭い人はもうわかるかと思いますが…
大動脈弁や僧帽弁による影響を考慮しなきゃいけない!!
じゃあ、エコーで弁の評価はどこを見ればいいの??
と思ってくれたところで
簡単に説明します!!
詳細はまた別記事で!
まず心エコーの検査結果に
valve(弁)
この項目があると思うのでそこをチェックしましょう!!
その下には
AS
AR
MS
MR
・
・
・
こんな感じでアルファベットが羅列されていると思います!
これらは
AS:大動脈弁狭窄
AR:大動脈弁閉鎖不全
MS:僧帽弁狭窄
MR:僧帽弁閉鎖不全
これらを意味しています!!
弁の評価は4段階に分かれています
- trivial=trace(些細な)
- mild(軽度)
- moderate(中等度)
- severe(重度)
狭窄・閉鎖不全において
いずれもmoderate以上の場合は
血行動態への影響を考える必要があります
その他の左室収縮能の測定法
ここからはおまけです。
最低限、LVEFを知っておけばいいかと思いますので
興味がない方は次へ進みましょう!
心リハ志望の人は読んでおいた方が良いかも!?
まとめに進みたい方はここをクリック!!
左室内径短縮率(FS:Fractional shortening)
心エコーの結果には%FSって書いてあるかもしれません!
この検査はMモードで計測可能です!
FS=(LVDd-LVDs)/LVDd×100(%)
LVDd:左室拡張末期径
LVDs:左室収縮末期径
簡単に説明すると
左室の心内膜の縁が移動した距離を測定しています!
正常値は30~50%
臨床上は、この項目が最も簡易的とのことですが
LVEFと同様
前負荷や後負荷に影響を受けるので注意が必要です!
僧帽弁輪移動距離(MAD:mitral annular displacement)
Mモード、speckle tracking法で測定が可能です。
その名の通り、僧帽弁輪が移動した距離を測定しています!!
この項目は
左室の長軸( 心尖~大動脈弁口の中点)機能を反映します!
早期の収縮能低下の検出に役立つと言われています!
FSよりもMADのほうがより早期の収縮障害を検出している可能性がある
Ballo P, Quatrini I, Giacomin E, et al : Circumferential versus longitudinal systolic function in patients with hy- pertension : a nonlinear relation. J Am Soc Echocardiogr 2007 ; 20 : 298-306
僕の実感としては、
LVEF、%FSの方が圧倒的に医師に用いられている印象です
施設によって違うとは思いますが、
もし測定されていれば
早期の収縮障害を評価する上で重要な項目なので
ぜひチェックしてみてください!!
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました!!
理解していただけたでしょうか?
本記事を以下にまとめました!!
- 左室収縮能はまずLVEFをみる!
- LVEFはBモードの方が正確である!
- LVEFで心不全の分類が可能である!
- LVEFは左室肥大や弁膜症による影響を受ける!
- その他の左室収縮能評価には%FSやMADがある!
以上になります!!
心臓の評価はリスク管理をする上で最も重要なので
しっかり学んでいきましょう!
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