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はじめに
おばんです!
Yu-daiです!!
前回は心エコーにおける心臓の構造の部分についてお話しました!
今回は、弁膜症の評価に必要な項目について勉強していきたいと思います!!
弁膜症によって、
不整脈や心不全、感染性心内膜炎など様々な合併症が出現します。
また、
左室駆出率の数値に影響を及ぼすなど
弁膜症であることを認識していないと
リスク管理のための心臓の評価を見誤ってしまう場合もあります!
ここで弁膜症における基礎的な情報を手に入れて
より正確な情報収集とリスク管理を行っていただけたらなと思います!!
心臓弁の基礎的な知識について
まずは、各弁についての基礎的な知識について簡単に説明しましょう!!
各弁の位置関係なども覚えていた方が
医師のカルテを読んだ時の理解度が深まりますよ!!
飛ばして読みたい方は
ここをクリックしていただくと弁の評価まで飛べます!
心エコーで評価できる弁は4種類!

心臓の弁は4つあります
- 大動脈弁
- 僧帽弁
- 三尖弁
- 肺動脈弁
それぞれの位置関係としては
大動脈弁−左心室と大動脈の間
僧帽弁-左心房と左心室の間
三尖弁–右心房と右心室の間
肺動脈弁-右心室と肺動脈の間
上記の図で見ると分かると思いますが、
弁の構造が全て同じというわけではありません
- 大動脈弁
- 三尖弁
- 肺動脈弁
- 僧帽弁
僧帽弁だけ2尖弁になっています!!
各弁尖には名前があります!
図で説明しますね!!

- 大動脈弁
左半月弁
右半月弁
後半月弁
※大動脈弁付近から起始している冠動脈に対応して
「左冠尖」「右冠尖」「無冠尖」とも呼ばれる
- 三尖弁
前尖
中隔尖
後尖
- 肺動脈弁
前半月弁
右半月弁
左半月弁
- 僧帽弁
前尖(A1・A2・A3)
後尖(P1・P2・P3)
各弁尖まで覚える必要ある?
と思われるかもしれませんが
感染性心内膜症などでは
どこの弁が破壊されているかなどを
医師がカルテに記載しているので
医師のカルテの内容を理解するという意味では必要かと思います!!
心エコーでは4弁の狭窄・閉鎖不全が分かる
各弁の位置関係や構造の特徴についてまとめてきましたが
ここからは心エコーで分かる各弁の異常について!
心エコーではこのように記載されています!!
✔︎大動脈弁(Aortic valve)
AS(大動脈弁狭窄)
AR(大動脈弁閉鎖不全)
✔︎僧帽弁(Mitral valve)
MS(僧帽弁狭窄)
MR(僧帽弁閉鎖不全)
✔︎三尖弁(Tricuspid valve)
TS(三尖弁狭窄)
TR(三尖弁閉鎖不全)
✔︎肺動脈弁(Pulmonary valve)
PS(肺動脈弁狭窄)
PR(肺動脈弁閉鎖不全)
S:stenosis R:regurgitation
さらにその重症度についてですが、
弁膜症の重症度
- trivial=trace(些細な)
- mild(軽度)
- moderate(中等度)
- severe(重度)
各弁ごとに上記のように表記されます!
狭窄・閉鎖不全いずれにおいても
moderate以上の場合
血行動態への影響を考える必要があります!
この結果だけでも
弁の状態をある程度把握することが可能です!
下の項目ではさらに詳しく行います!!
心エコーで分かる!大動脈弁狭窄・閉鎖不全の評価!!
まずはじめに心エコーで知ることができる
大動脈弁について狭窄・閉鎖不全に分けて整理していきましょう!
心エコーでは
”Aortic Valve”
こんな英語表記で記述されている項目があると思うので
ここを確認してみましょう!
AVA?PG?Vmax??心エコーで分かる大動脈弁狭窄の重症度!
まずは大動脈弁狭窄症についてから!
大動脈弁狭窄とは…
大動脈弁の退行変性や先天性二尖大動脈弁、リウマチ・炎症性変化などによって大動脈弁の狭窄を生じる病態である。その結果,左室は慢性的に圧負荷を受け,求心性肥大を呈する
弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン
このように定義されています!
つまり、
大動脈弁狭窄は…
- 加齢による弁の退行性変化(退行性石灰化、弁尖硬化)
- 先天性大動脈二尖弁に伴う弁硬化
- リウマチ性など
これらが原因で起こります!
その重症度についてですが
これらの項目を確認しましょう!!
ASの重症度評価に必要な項目
- 大動脈弁口面積(aortic valve area;AVA)
- 大動脈弁口通過最高血流速度(Vmax /AV PeakVel)
- 平均大動脈弁圧較差(AV Mean PG)
上の2つは名前の通り
弁の面積
弁を通過する血流の速度
これらを測定したものです!
大動脈弁圧較差とはなんなのかというと…
→左心室と大動脈に生じる圧の較差
✔︎左室大動脈圧較差の欠点
- 血行動態の影響を受けやすい
→左室機能不全で1回心拍出量が低下するため圧較差は過小評価されやすい
重症かどうか
手術適応かどうか
これらについては
ACC/AHA 2006 guidelineにおいて
以下のように上記の項目から総合的に判断されるようです!!
- 大動脈弁口面積:1.0cm2以下
- 大動脈弁口通過最高血流速度4 m/s以上
- 大動脈弁圧較差64mmHg以上
- 平均大動脈弁圧較差が40mmHg以上
これらを満たす場合に重症と判断されます!

軽症・中等症については上の表を参考にしてください!
手術適応かどうかについては…
- 有症状(胸痛、息切れ、失神、不整脈etc)
- 左室駆出率(LVEF)50%以下
上記の場合は手術適応となるようです!
たくさん用語がでてきて難しいですよね~
その場合は、弁口面積(AVA)だけは覚えていましょう!!
なぜなら…
重症ASと診断できる確率は
AVAが69%!
その一方で
Inconsistencies of echocardiographic criteria for the grading of aortic valve stenosis. Eur Heart J 2008 ; 29 : 1043-1048 Minners J, Allgeier M, Gohlke-Baerwolf C, et al
・Vmax45%
・平均大動脈弁圧較差40%
このようにその他の項目よりも
弁口面積の方が高確率だからです!
AVAとAVPGの不一致例は一致例より多く、
大動脈弁圧較差は硬化性大動脈弁狭窄症の重症度を測るうえで有用な指標か? 棗田 誠ら
AVPG単独での重症度評価は適切ではない
このように言われているため
覚えておくべき優先度としては
大動脈弁口面積をオススメします!
RVol?EROA?心エコーで分かる大動脈弁閉鎖不全の重症度!
次は大動脈弁閉鎖不全(AR)について!
大動脈弁閉鎖不全とは…
大動脈弁閉鎖不全症(AR)は種々の原因により大動脈弁の逆流を生じ、拡張期の左室容量負荷を生じる。
弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン
上記のように言われています!
ARは発症機序が2パターンあります。
- 大動脈弁自体に異常がある
- 大動脈基部に異常がある
これらはさらに急性と慢性に分かれています!!
- 大動脈解離
- 炎症
- リウマチ性
- 感染性心内膜炎による弁構造の破壊など
- 加齢による退行性病変(半月弁硬化、逸脱など)
- 高血圧
- 心室中隔欠損症
- 先天性2尖弁など
それでは、
心エコーで分かるARの重症度についてまとめていきましょう!!
ARの重症度評価に必要な項目
- 弁逆流量(RVol)
- 弁逆流率(RF)
- 有効逆流弁口面積(EROA)
これらの3つです!!
有効逆流弁口面積や逆流量に関しては予後予測因子としても用いられているようです!
重症度については以下の表をご覧ください!!

✔︎要チェック!!
ARにおいては
大動脈解離などの原疾患に伴うARもあります!
なのでこれらの指標だけでなく
大動脈径や上行大動脈、バルサルバ 洞などの項目もセットで確認することをオススメします!
これらの項目は
こちらの記事でまとめています!
また、
上記以外にもAR の重症度を分類する方法もあります
その名もSellers分類!!
当院ではあまり、医師のカルテには書かれていることは少ないですが
有名な重症度分類なので名前だけは覚えておきましょう!

心エコーで分かる!僧帽弁狭窄・閉鎖不全の評価!!
次は
僧帽弁狭窄(MS)
僧帽弁閉鎖不全(MR)
この2つについてです!
弁口面積?圧較差??心エコーで分かる僧帽弁狭窄の重症度!
僧帽弁狭窄症とは…
僧帽弁の開口部が狭小化し、左心房から左心室への血流が阻害されている状態
このように言われています!
僧帽弁狭窄症の主な発症機序は…
リウマチ性がほとんど!
僧帽弁置換術を受けた患者において僧帽弁機能障害の最も多いのは炎症性疾患であり、ほとんどの場合、慢性リウマチ性疾患の症状で結果における83%を占めた
Olson LJ et al. Surgical pathology of the mitral valve: a study of 712 cases spanning 21 years.
※稀に、石灰化や先天性僧帽弁狭窄症によるものもあるそうですよ!
僧帽弁狭窄の重症度の評価についてですが…
- 僧帽弁口面積
- 収縮期肺動脈圧
- 僧帽弁平均圧較差
基本的にはASの時と一緒ですね!!
ですが、その数値は違うので要チェック!
最低限これらはみましょう!
またそれに加えて
- 交連部の癒合
- 弁下組織の変化
この2つも確認する必要があります!
上で紹介している大動脈弁閉鎖不全症のSellars分類とはまた別なのでご注意を!
弁逆流量?弁口面積?心エコーで分かる僧帽弁閉鎖不全の重症度!
次は僧帽弁閉鎖不全(MR)についてですね!!
僧帽弁閉鎖不全とは…
僧帽弁閉鎖不全症は、弁尖・弁輪・腱索・乳頭筋など僧帽弁複合体のいずれかの異常によって,収縮期に左室から左房へ逆流が生じる疾患である
僧帽弁閉鎖不全症の手術適応と術後フォロー・アップの基本 合田亜希子
僧帽弁狭窄(MS)はリウマチ性がほとんどと書きましたが
MRにおいては
非リウマチ性がほとんどを占めるようです!!
MRは
僧帽弁自体は正常で心室のリモデリングにより起こる
- 心筋症
- 心筋炎
- 左室不全など
器質的MR
僧帽弁自体に病巣がある
- 弁輪石灰化
- 先天性
- 心内膜炎による腱索断裂
- 炎症
- リウマチなど
この2つに分けられます!!
重症度のついてですが
基本的にはARの時と同様に考えて大丈夫です!!
- 有効逆流弁口面積:EROA(effective regurgitant orifice area)
- 弁逆流量:Rvol(regurgitant volume)
✔︎要チェック!
注意点としては
MRの流速は
- 左室圧
- 左室と左房の収縮期圧較差
この2つに依存します!
大動脈弁不全症と同様で
僧帽弁閉鎖不全においても
弁逆流の指標としてSellers分類があります!
まとめ
今回はここまで!!
いかがだったでしょうか?
4つの弁のうち
- 大動脈弁
- 僧帽弁
この2つについてまとめてきましたが
心エコーで確認するべき項目は多かったですね!
一回だと覚えきれないと思うので
何度でも見返していただけたらなと思います!
それでは本日のまとめです!
- 大動脈弁の疾患はASとARに分かれる
- 僧帽弁の疾患はMSとMRに分かれる
- ASの重症度はAVAとMean PGを確認しよう
- ARの重症度はEROAとRvolを確認しよう
- MS・MRの重症度も基本的に見るべきところは一緒!
- 弁ごとに分類するための基準値が違うため要チェック!
- 弁のみでなく左心房・左心室の形状なども含めて確認しよう!
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