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はじめに
おばんです!
今回は糖尿病患者についてのリスク管理についてまとめていきたいと思います!
日本生活習慣病予防協会によると
糖尿病の患者数は予備群も含めると、約1000万人(2016年)にも及ぶそうです。
僕の施設もそうですが、みなさんの担当患者さんの中にも糖尿病を持たれている方は結構多いんではないでしょうか?
その中で、しっかり治療を受けられている方は、76%と言われています。
高血圧と同様、普段から臨床現場でよく目にする疾患ですが、
そのせいで徹底したリスク管理が必要かもしれない方を見落としていないでしょうか?
先日、理学療法士国家試験が行われ、
もうすぐ新米の理学療法士達が臨床デビューを飾ろうとしている今
入職前に何か勉強したい新人セラピストや次年度から指導者になる若手セラピストにとっては
介入中のリスク管理に対する知識や対処法を学ぶことは非常に大切!!
ここができて初めて動作分析などについて学んでいった方がいいと僕は考えています。
では、やっていきましょう!!
// /【糖尿病とは?】糖尿病の発生機序について
まず、糖尿病についてです!
糖尿病とは、
簡単に説明すると血液中のブドウ糖(グルコース)が多くなる病気です。
正常の場合、
空腹時血糖値70-110mg/dl、
ブドウ糖負荷後2時間値が140mg/dl以下
と言われています。
糖尿病の方の場合は、この値よりも高値で推移します。
(糖尿病か明確に判定する基準がありますが、今回は省きます)
ブドウ糖は私たちが食事を摂取すると、血中濃度が上がりますが
2種類のホルモンによって調整されます。
みなさんも知っているであろう
インスリンとグルカゴンです!
血糖値を低下
血糖値を上昇
これらのホルモンが1日を通じて分泌されることで血糖値が一定範囲内に保たれています。
では、糖尿病はどのような機序で発症するのでしょうか?
糖尿病には1型と2型がありますが、代表的で臨床現場で最も遭遇するであろう
2型糖尿病について説明していきます。
ちなみに糖尿病患者のうち95%以上は2型糖尿病患者です。
2型糖尿病は先ほど説明したインスリンが関与します…
大きく分けると2つ!
- インスリン分泌障害
- インスリン抵抗性の増大
2型糖尿病の発症機序はこのようになっています

インスリンの分泌量が減り、細胞における抵抗性が上昇することによって
インスリンの作用が低下し糖尿病を発症します。
これらには遺伝因子と環境因子が関与すると言われていて
- インスリン低下による膵臓(β細胞)活性化酵素の減少
- 持続的な高血糖状態が更なる膵臓の機能不全・細胞死への誘導(糖毒性)
このような悪循環を引き起こしてしまいます。
この高血糖状態による影響は膵臓だけには留まりません。
このことについては下でお話ししようと思います。
// /糖尿病の3大慢性合併症
次に合併症についてです。
合併症は急性と慢性に分かれますが、まずはみなさんもご存知の慢性合併症について!
国試直後の方々はすぐでてくるでしょうか?
この合併症について理解できていると
下のリハビリ介入によって引き起こされる可能性のあるリスクについても理解が深まると思いますので飛ばさずに見てくれたら嬉しいです!!
糖尿病腎症とは?
まずは、こちらから!
腎臓には、私たちの血液を濾過してくれている糸球体と言われる毛細血管の集合体がありますが、この毛細血管(全身もですが)が長時間高血糖状態にさらされることによって動脈硬化が引き起こされます。
糖尿病性糸球体硬化症
これによって糸球体による血液の濾過能力が低下してしまいます。
糖尿病を発症されてから10~20年以上経ってから合併すると言われています。
糖尿病性腎症の病期は分類されていて、これはそのまま下のリハビリ介入によるリスクに直結してきます。

糖尿病網膜症とは?
これも、聞いたことありますよね?
網膜とは、外界の光を映像情報として脳へ送ってくれます。
この網膜には、糸球体同様、毛細血管が集合しています。
この毛細血管が動脈硬化を起こし、出血することで網膜症となります。
網膜症の病気は3段階あります

前増殖網膜症までは、進行してもレーザー治療などの治療法がありますが、増殖網膜症に到達すると、治療は困難となり失明してしまいます。成人の失明原因の1位はこの網膜症だそうです。
この合併症も糖尿病を発症されてから10年程度経過してから合併すると言われています
糖尿病性神経障害(糖尿病性ニューロパチー)とは?
最後に糖尿病性神経障害についてです。
この合併症だけ今までの二つと違って発症が早いです。
早い人だと糖尿病発症から3年で合併します。
そのため、みなさんが遭遇する糖尿病性の合併症はこれが最も高いです。
糖尿病性神経障害は、糖尿病性多発ニューロパチーとも言われており
その機序は全て明らかになっていないものの
高血糖状態が
- 代謝異常
- 血管障害(血流の低下)
- 神経再生障害
などの主要要因を引き起こすと言われています。

ここで、難しい用語の解説を少し…
PKC…タンパク燐酸化酵素。様々な細胞内の情報伝達に関与。糖尿病により酵素の活性化が亢進することで血流異常や血管新生を引き起こし、網膜症や腎症の進行に関与すると考えられている。
酸化ストレス…細胞内に取り込まれた酸素の代謝過程で生じる、反応性の高いもの(活性酸素)。活性酸素が体内で過剰に生成されると、DNA、タンパク質、膜脂質などに傷害を与える。これを酸化ストレスという。
蛋白糖化… 過剰な量の糖が酵素を介さずにタンパク質と結合する現象。非酵素的糖化ともいう。
代表的なものだとグリコヘモグロビン。
糖化タンパクは細胞の構造や機能を障害し、フリーラジカルという不安定な分子を発生させる。
中には糖尿病による異常神経細胞の出現なども指摘されているようですが、現状は主要要因について覚えておけばいいと思います。
神経障害には何種類かあります。
糖尿病を初めて指摘されたときや血糖コントロールがうまくいっていないときに四肢の感覚障害を呈していることがありますが
これは、高血糖性ニューロパチーと呼ばれ、全ての病期を通して、血糖コントロールが悪化した際、一時的に出現します。血糖コントロールが良好になれば改善します。
この病型の発生機序の仮説としては高血糖状態が引き起こす代謝異常と考えられています。
そしてもう一つが、感覚・自律神経性ポリニューロパチー
これは、発症初期は足袋型と言われ、足関節より下の足底部や足趾しびれや疼痛などの感覚障害を呈します。
この時期は手指は無症状ですが、発症後期になると手袋靴下型の感覚異常を呈するようになります。
場合によっては前胸部や頭頂部にも広がる方もいるようです。しびれや疼痛のことを”陽性症状”と呼びますが、末期には”陰性症状”といい、感覚低下が出現します。
そして、次にお伝えするのがこの合併症で最も生命予後やリハビリ介入中のリスクに影響を及ぼす症状です。
糖尿病の初期から自律神経機能異常、その後、遅れて自律神経症状を呈するようになります。
この自律神経障害によって低血糖状態であっても自覚症状が出現しなかったり、自律神経障害に起因した不整脈の出現や突然死のリスクなどが指摘されています。
そのため、そのほかの合併症ももちろん留意しておかなければなりませんが、
糖尿病によって自律神経障害を呈している場合には、
よく患者を観察し、場合によっては心電図モニターを使用することが必要になってきます。
この障害の機序としては代謝異常や虚血が仮説として挙がっているようです。
また、自律神経障害に遅れて運動神経障害が出現し下肢遠位筋の筋力低下を呈します。
以上のように糖尿病性の神経障害は
感覚障害→自律神経障害→運動神経障害の順で出現します。
糖尿病の急性合併症
次は急性合併症についてです。
急性合併症のほとんどは
主に血糖コントロールが不良の方(治療の不徹底や投薬自己中断など)や
感染症の合併や風邪を引いた時(Sick day:シックデイと呼ばれます)などに
起こりやすいと言われています。
重度のインスリン分泌量の低下と、それに伴う急激な高血糖状態への移行によって引き起こされます。
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
糖尿病性ケトアシドーシスとは、
インスリンの分泌量低下や作用低下によってブドウ糖が細胞に取り込まれなくなります。
その代償として脂肪酸が使われた結果
ですが、細胞はエネルギーを欲するので、その代償として筋肉や脂肪細胞に蓄えられた脂肪酸が分解され、高ケトン血症という状態になります。

ケトーシスとは、高ケトン血症の状態で、
ケトンとは筋肉や脂肪細胞に蓄えられている脂肪酸が代謝された物質です。
通常時は、血液中にはほとんど存在しない物質ですが
血中にケトン体が多量にある状態が続くと、血液の酸性化がおき、
酷い場合だと脳機能不全を呈します。意識障害~昏睡まであり、死亡に至ってしまう方もいます。
ケトアシドーシス昏睡とも言います。
1型糖尿病の方に多いですが、
2型糖尿病においては、
清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)が悪化し、ケトアシドーシスに進展します
少し、詳しくお話しすると
清涼飲料水を多量に摂取したことによって高血糖状態の悪化し、ケトアシドーシスに至ってしまいます。

ケトーシスとは、血中のケトン体が異常に増加している状態のことを指します。
余談ですが、糖質制限や絶食されている方、飲酒によっても生じることがあります。過度なダイエットには気を付けて!!
高浸透圧高血糖症候群 (HHS)
簡単に説明すると、脱水が原因で引き起こされる重度の脱水という状態です。
2型糖尿病の高齢者に多く、
飲水を意識して行えていなかったり、
感染症や嘔吐・下痢による脱水、手術、脳梗塞や心筋梗塞などの病気が引き金になることもしばしばあるようです。
ケトアシドーシス同様、高血糖状態に陥りますが、インスリンの作用低下というよりも
高血糖による脱水スパイラル(浸透圧脱水)による著名な脱水が主な理由のためケトン体の上昇は伴いません。
高度の脱水による意識障害や昏睡を呈し、最悪の場合にはケトアシドーシスと同様に死に至る場合があります。高血糖高浸透圧性昏睡とも言います。

低血糖
低血糖は、糖尿病の薬物療法中に認める急性合併症です。
主な薬品としては、インスリン・スルホニル尿素薬・グリニド薬が低血糖を引き起こすと言われています。(他にもたくさんあります)
また、そのほかの要因として
- 腎不全や自律神経障害の増悪
- 肥満や感染症の改善、糖毒性の解除など
- インスリン作用を増強する薬品の併用(β遮断薬、脂質異常症治療薬など)
これらが挙げられます。
腎不全・自律神経障害による低血糖の機序については下の図に簡単にまとめました。

急性腎症を合併した糖尿病患者では持たない糖尿病患者と比較すると27%低血糖リスクが上昇
Adriana M. Hung et al Risk of Hypoglycemia After Hospital Discharge After Acute Kidney Injury in Patients With Diabetes.
腎臓については大規模な後ろ向き研究でこのような発表がされていますね。
合併症の増悪だけでなく、糖尿病を増悪させるリスク因子が改善した場合にも低血糖は起こります!
自律神経障害の方は、
低血糖の初期状態にみられる自覚症状(動悸、手指振戦、冷汗など)を認めにくく、
医療者側も気づかずに重度の低血糖状態に移行、そして痙攣や昏睡などの中枢神経症状が出現することがあるので注意が必要です。

乳酸アシドーシス
上の3つと比べると、遭遇する頻度はかなり少ないと思いますが、一応載せておきます。
乳酸アシドーシスとは、血中乳酸値が上昇し、代謝性アシドーシスをきたす病態のことを指します。
乳酸アシドーシスの機序には2種類あり
ショック(心原性,出血性,敗血症性),呼吸不全による急性低酸素血症,一酸化中毒など
薬剤(アルコール,サリチル酸など)によるもの,全身疾患(糖尿病,肝疾患,悪性疾患,ビタミンB1欠乏など)によるもの,先天性代謝異常によるものなど
最終的には昏睡に至り、亡くなる方もいらっしゃいます。(致死率50%と予後は悪い)
診断基準は血中乳酸値45mg/dl (5mmol/L)超、血液pH7.35未満と言われています。
糖尿病患者においては、type Bにあたる
血糖降下薬である”ビグアナイド薬”の副作用が知られています。
腎機能障害や脱水がある方にこの薬品を使用したり、過度にアルコールを摂取してしまったりすることで発症するリスクが高まります。
腎機能障害・脱水
過度のアルコール多飲
シックデイ
心肺機能障害
肝機能障害
75歳以上の高齢者
糖尿病のリハビリ介入によって生じるリスクとリスク管理
では、いよいよリハビリの介入によって生じるリスクについてまとめていきます!
通常、運動によってインスリン抵抗性の改善の効果があると言われ、
運動・リハビリすることは良いことづくめに思われますが、
運動によって生じる身体への変化を理解していないと上で話した合併症を悪化させてしまうケースがあります。
しっかり理解してリハビリの介入によって症状を悪化させることがないように学んでいきましょう!
運動による変化をもとに大きく分けると4つほどあります!!
前述した合併症に絡めながら簡単にまとめていきますね!
代謝系に生じるリスク
まずは代謝系に生じるリスクです。
- 高血糖やケトーシス(ケトアシドーシス)の更なる悪化
運動することで体の中ではインスリンの分泌量低下、グルカゴン上昇が起きます。
血糖コントロールが不良な方の場合には、運動によって更なる高血糖状態をひきおこすことで
ケトアシドーシスを引き起こしてしまう場合があります。
- 低血糖
インスリンなどで薬物治療をされている方の場合に多いです。
運動療法における最大の副作用とも呼ばれています。
臨床場面でも、遭遇する割合は一番高いです。しっかり見ていきましょう!!
薬物によって血糖値を下げていますが、運動による介入でブドウ糖の細胞への取り込みが増加し、それに伴って更なる血糖値の低下が引き起こされる可能性があります。
ちなみに、継続した運動の継続によって、インスリン感受性も改善すると言われています。
運動の急性効果として,食後に運動療法を行うことで食後高血糖を減少できる
Nygaard H et al postmeal walking reduces postprandial glycemia in middle-aged women.
そのため、リハビリテーションの介入の目安としては食後1時間程度と言われています。
下記の文献では
食後の血糖値のピークは正常な人や大抵の糖尿病患者にとって1時間後にやってくると言われています
Esposito K et al Post-meal glucose peaks at home associate with carotid initima-media thickness in type 2 diabetes.
食後血糖値の定義は2時間とIDF,WHO,日本糖尿病学会において定義されているようですが、
この定義についてはまだ医師の中でも諸説あるようです。
ただし、血糖コントロールが不良の方の場合は、
食後血糖値の増加に対して、インスリンを追加されている場合もあるため、
追加による低血糖リスクも上昇します。
コントロール不良の方の場合には医師や看護師と相談しながら介入時間を決定するのが無難でしょう
細小血管系に生じるリスク
運動介入による血圧変動によって
- 糖尿病網膜症における眼底出血
- 尿蛋白の増加(運動負荷によってeGFRや血漿流量の低下の結果、糸球体透過性が亢進)
- 神経障害
言い換えると…
- 眼底出血による失明のリスク
- 腎機能悪化のリスク
- 神経障害増悪のリスク
これらを管理するためには血圧・脈拍の測定、運動負荷の調整が必要です。
眼底出血に対しては、
眼底血圧も意識して
- バルサルバ型運動(息こらえのこと)
- 頭位を下げる運動
これらの運動は避けたほうがいいと思います。
患者指導も重要です。
次に腎機能についてですね。
運動療法の可否については上の方で紹介しています。
血圧に関しては腎機能の保持という観点から
血圧は130/80mmHg未満を推奨されています。
また、練習量ではなく、運動強度での介入が推奨されています。
運動強度は
Borg scale(Borg の自覚的運動強度)で測定し
11「楽である」~13「ややきつい」程度を目安にしていきます
また、次の日などに測定される生化学検査や尿検査の結果なども考慮して運動を選択していく必要があります。
神経障害については、軽症例であれば下肢血流の増加により末梢神経障害の改善が見込めます。
しかし、自律神経障害が合併されている場合は注意が必要
心拍動は迷走神経(副交感神経)を主体に交感神経との両者が調節しています。
神経の長さは迷走神経の方が長いため、迷走神経障害が先行します。
そのため、心血管系自律神経障害を有している方は安静時から頻脈を呈し、交感神経も障害されているような場合には、心拍数が固定されます。
この状態にまで陥ってしまうと、運動による心拍数の上昇が得られません。
最も危険なのは突然死のリスクが高いこと。
その要因としては、
- 無痛性心筋梗塞
- 致死性不整脈
が挙げられています。
心血管自律神経障害を合併した糖尿病患者において,非合併患者に比べ,死亡率の相対危険度は2.14倍と高い。さらに2つ以上の自律神経機能検査で異常を認めた患者では,相対危険度は 3.65 倍まで上昇する
Maser RE et al The association between cardiovascular autonomic neuropathy and mortality in individuals with diabetes: a meta-analysis.
上記のような状態においては、積極的な介入は控えた方がいいと思います。
知らずに介入していたらと思うとゾッとしますね。
大血管系に生じるリスク
もう今までで、ほとんど話しているんですが、一応笑
- ・虚血性心疾患の誘発
- ・不整脈の誘発
- ・心不全の誘発
- ・運動後起立性低血圧
- ・血圧上昇
糖尿病患者の心筋梗塞発症頻度は、非糖尿病患者おける心筋梗塞再発頻度に相当すると言われています。
このことから、心筋梗塞などの虚血性心疾患においては糖尿病のリスクが非常に高いとされています。
(ちなみに、脳卒中領域においては糖尿病患者におけるラクナ梗塞の発症頻度はコントロール群と比較して2~3倍増加するそうです)
運動によって、なぜ心筋梗塞が誘発されるか
冠血流の調整には冠動脈硬化病変や自律神経,血管内皮機能など様々な因子が複雑に関与していると言われています。
糖尿病の方においてこれらの因子が悪化する機序についてが今まで話した通りです。
それに加えて冠血管は心臓の収縮 ・拡張の影響を受けます
冠動脈は拡張期、冠静脈は収縮期に流入します。
糖尿病で動脈硬化・プラーク形成が進んでいる方に対して
過剰な運動負荷による急激な血圧・心拍数の上昇は冠動脈における血流を阻害し、心筋梗塞を誘発する可能性があります。
血圧に関するリスク管理としては、
下記のリスク分類がありますので参考にしてみてください。
高血圧治療学会 高血圧治療ガイドライン2009より引用
筋・骨格系に生じるリスク
最後に筋・骨格系に生じるリスクです。
代表的なものは以下のものが挙げられます。
- 変形性関節症の進行
- 糖尿病足病変(足潰瘍・足壊疽)
- シャルコー関節(神経障害性関節症)進行
これらは、主に末梢循環障害や糖尿病性神経障害が影響し、出現・悪化します。
糖尿病足病変は感覚障害により、足にできた潰瘍に気づきにくく、また末梢循環障害の影響で潰瘍が治癒せずに壊疽へと進行します。
そのため、運動による荷重ストレスがかかった場合、潰瘍や壊疽が悪化する可能性があります。
さらに、シャルコー関節の合併によって突出した骨の部分に新しい潰瘍ができやすくなります。
そのため、患者への指導はもちろんですが、介入前の足部の観察は必須です。
ここで、神経障害性(シャルコー)関節について簡単にご紹介!
定義は、
神経障害に合併し、関節組織が慢性、進行性に変性破壊されてゆく関節疾患をいう。Charcot iointともいう。また、神経病変が不明でも同様な破壊性関節病変があれば、Charcon jointといってよい。
伊 地 知 神経障害性関節症 (Charcot Joint)一歴史・病態 診断 治療一
脊髄癆に最も多く、糖尿病,脊髄空洞症の順に続くようです。
糖尿病によるシャルコー関節の特徴として
末梢神経障害による筋萎縮(特に虫様筋などの末梢側)により足部の変形が認められます。
糖尿病患者は痛覚を感じにくいため、関節破壊が進み気付いた時には手術適応となることもいいです。
足部を観察をすると、靭帯弛緩や骨吸収、関節破壊による足部の扁平化や、内外反変形が確認できます。
潰瘍と同様で、毎日の下肢・足趾の観察は必須です。
よく、プールの中での歩行練習を推奨されていますが、ない施設がほとんどです。
そのため、実際には平行棒内などで部分免荷歩行や自転車エルゴメータ練習などによる運動療法などの方が現実的ではないかと思います。足をぶつけたりしないよう注意しましょう。
運動療法の絶対的禁忌と相対的禁忌
最後に絶対的禁忌や相対的禁忌について紹介して終わろうと思います!
以下は日本糖尿病学会の糖尿病治療ガイドラインを基にしています
運動療法を禁止したほうがよい場合(運動療法の絶対的禁忌)
- 眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症
- レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症
- 第3B期(顕性腎症後期)以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)
- 心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合
- 高度の糖尿病自律神経障害がある場合
- 1型糖尿病でケトーシスがある場合
- 代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)
- 急性感染症を発症している場合
運動を制限したほうがよい場合
- 単純網膜症がある場合
- 重症の高血圧がある場合(収縮期血圧180mmHg以上、または、拡張期血圧110mmHg以上)
- 骨・関節疾患など整形外科的問題がある場合(特に肥満者や高齢者)
- 糖尿病壊疽がある場合
まとめ
今回は糖尿病について学びました!
かなり長文になってしまったので皆さん疲れてしまっていませんか?
僕自身、まとめる前はもっと文字数が少なくまとめられると思っていましたが、
糖尿病の病態や合併症、リスク管理は多岐に及ぶことを学び直すことができました。
医療職の私たちには比較的身近な合併症ではありますが、
この人、糖尿病があるんだなぁ~
だけで終わらずにより詳細に評価・リスク管理を行なっていき、適切な介入を行えるようにしていきましょう!!
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今年から入職予定の新人セラピスト
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リスク管理を踏まえた介入をしたい人