- 新人セラピスト
- 実習中の学生
- 皮質脊髄路の興奮性を高める方法がわからない人
- 介助方法や環境設定の理由を根拠をもって説明できない人
Contents
はじめに
おばんです!!
前回は運動麻痺の回復ステージ理論についてまとめました!!
急性期の脳卒中リハにおいて重要なことは…
”残存している皮質脊髄路の興奮性を高める”
これが重要だったと思います!!
「じゃあどんな練習が皮質脊髄路の興奮性を高めるの?」
と疑問に思う人も少なくないんじゃないでしょうか?
そこで今回の記事は
どんな練習が皮質脊髄路の興奮性を高める上で重要なのか!
これをテーマにまとめていこうと思います!
最後までお付き合いしていただけたら嬉しいです!!
// /運動麻痺に対するプログラムにはどんなものがある?

はじめに運動麻痺に対して現在、どんなプログラムが存在しているのかを確認していきます!!
臨床場面においては無数に存在すると思いますが、
本記事では検証によって有効性が証明されている内容を紹介します!
ガイドラインにも載っていると思いますので確認してみてください!!
前置きはいいから、皮質脊髄路の興奮性を高める介入方法が知りたい!という方は下記をクリックしてスキップしてください↓
皮質脊髄路の興奮性を高めるには?【1st stageに依拠した介入方法】
上肢機能の改善に有効なプログラム!
脳卒中後の上肢機能改善に関しては以下の治療法が有効と言われているようです!
- CI療法
- 筋電図:electromyography(EMG)フィードバック
- ロボット療法
- 反復課題トレーニング
- 電気刺激など
※手指に関しては上記のSystematic review時には効果的なプログラムは認められなかったようです…
下肢機能・歩行に有効なプログラム!
脳卒中後の下肢機能改善に関しては以下の治療法が有効とされています!!
- 反復課題トレーニング
- バイオフィードバック
- ムービングプラットフォーム
- メンタルプラクティス
- 電気刺激下での起立・歩行訓練など
運動麻痺回復ステージに対応したプログラム選択の見解はなし
このように様々な治療法の有効性が示されています!が…
「各ステージごとに治療法を選択することはできないの?」
こう考える人が多いと思いますが…
現状としては、
急性期から慢性期におけるステージ毎に
これらの中から最も適している治療法はどれなのかを言及している研究はありません…
そのため、個人的には
- 患者の状態
- 画像や各スケールの結果から導き出される予後予測
- 自分の知識や技術
- 職場環境など
これらの内容を総合的に判断して推奨グレードを問わずに現状に適した治療法を提供していくことが必要と考えます!
// /皮質脊髄路の興奮性を高めるには?【1st stageに依拠した介入方法】

とはいえ、
やっぱりどんな介入方法が皮質脊髄路を興奮させるのか知りたいですよね?
ですのでここからは可能な範囲で
皮質脊髄路の興奮性が高まることが知られている介入方法や
どんな時に皮質脊髄路が興奮しているのかを紹介します!!
他にもこんなものがあったよ!
という方がいたらコメントでもTwitterでも教えてくれたら嬉しいです
皮質脊髄路の興奮性を高める治療法
まずは皮質脊髄路の興奮性を高める治療法について!!
電気刺激療法
皮質脊髄路の興奮性を高める治療法を検索すると
この治療法が真っ先に結果に反映されます
上肢・下肢ともに有効な治療法として示されていますね!
主な治療法としては
- EMG(筋電図)バイオフィードバック療法
- 機能的電気刺激
- 治療的電気刺激
これらの治療法は侵襲的な治療になるので適切な操作する必要があります!
そのため…
- 経験したことがない人にとっては使用にあたって抵抗感がある
- そもそも勤務先が導入していない可能性もある
実習先や勤務先によってはまだ経験したことがない人もいるのではないでしょうか?
僕も学生時代実習先で経験していなかったので
就職後、この治療法を取り入れようとした際に大変苦い記憶があります笑
治療法は勤務先によってかなり傾向が分かれるので、
(本当は選択枝が多い方がいいですけど…)
先輩たちのやり方に習ってばかりだと知識や技術が偏りやすくなります。
新人の頃から色んな治療法について調べて触れていくことは
後々大きな財産になるんではないでしょうか?
詳しい治療方法についてはまた別の記事にします!
反復課題練習に運動観察と運動イメージを取り入れよう!!

ミラーニューロンシステム(Mirror Neuron System:MNS)を応用した治療法で
運動観察治療:Action Observation Therapy(AOT)
という治療法があるのをご存知でしょうか?
運動観察療法とは…
実際の身体運動練習と 運動観察を組み合わせたアプローチであり,身体練習と観察における運動は同じであることが原則である
渕上 健ら :慢性期脳卒中片麻痺患者の下肢機能に対する運動観察治療の効果 理学療法科学 30(2):251–256,2015
つまり、
運動観察+観察した身体運動の反復
この2つを組み合わせた治療法です!
また運動イメージというのは…
運動イメージは、当人の過去の身体運動に関する体験 から蓄積されてきた記憶像や、それにより形成されたもろもろの心像群をもとに分解合成され、現時点において 意図に最もよく合致するものとして作成されたものである。
福本 悠樹・他: 運動イメージが脊髄神経機能の興奮性および 運動の正確性に与える影響 関西理学 15: 79–84, 2015
具体的に説明すると…
患者に
「椅子から立ち上がってテーブルの上にあるペンをとるまでをイメージしてください」
このような指示をした際に
- 椅子から立ち上がったときの筋肉の動き
- 足にかかった体重のかかり具合
- 臀部が浮いたことによって除圧された感覚など
これらを感じることです
動的タスクのAO + MIの間、参加者は被殻、小脳、補足運動野、運動前野(PMv / d)および一次運動野(M1)を含む運動中枢を活性化しました。
Wolfgang Taube et al. “Brain activity during observation and motor imagery of different balance tasks: An fMRI study.” Cortex 64 (2015): 102-114.
MI→運動イメージ
AO→運動観察
このように運動イメージと運動観察を併用することで
1次運動野をはじめとする運動中枢を刺激することが可能です!
運動観察と運動イメージはどちらの効果が高い?
と思う方もいると思います
これについては、様々な主張が出ているのでなんとも言い難いですが…
引用させていただいたWolfgang Taube et alの論文によれば
運動観察単独では運動中枢の活性化に関して有意な活動は得られなかったと報告しています
また、こんな主張もあります!
行動観察はより強い認知活動を誘発するので、細かい運動表現が困難な脳卒中患者にとっては、行動観察がより効果的な治療法になる可能性がある
Junghee Kim et al: Differences in Brain Waves of Normal Persons and Stroke Patients During Action Observation and Motor Imagery J. Phys. Ther. Sci. 26: 215–218, 2014
認知機能の低下や失語症を合併しているような方には
行動観察の方が効果的かもしれません!ということですね
僕も失語症の方に対しては、
自分を見本に運動課題を観察してもらってから
実際に練習していくという形をとっていました
参加者が困難な姿勢のタスクのAO(AO + MI)中にMIを適用する場合、最良のトレーニング効果が期待される。
Taube, Wolfgang, et al. “Brain activity during observation and motor imagery of different balance tasks: An fMRI study.” Cortex 64 (2015): 102-114.
つまり、
どっちが治療法としては優秀だ!というふうに考えずに
運動観察と運動イメージを組み合わせて反復課題練習に応用できればいいのですが…
運動イメージにおいては
感覚障害が強かったり運動スピードが早すぎるなどの場合には
イメージをしにくくなってしまいます。
運動イメージをしやすくするためのポイントとして…
- その動作の意味や意識して欲しい箇所を明確に示す
- 目的のある活動を取り入れる(ペンをとるとか)
- 患者が日常的に行なっていた動作を採用する
- 鏡を使用して運動イメージの想起を促す
- 数字を用いて教示する(力の加減や重心移動の割合など)
片麻痺の方に関しては、感覚障害の影響などもありますから
いきなり麻痺側の運動イメージをさせるのではなく
非麻痺側で目的の動作を教示して反復させて覚えてもらい
その後に、麻痺側で運動イメージをしてもらった方が効率がいいと思っています
運動イメージと運動観察についてはまた別の記事で詳しくまとめていきます!
皮質脊髄路の興奮性が高まるタイミングとは?

最後に理学療法場面において
どんな状況やタイミングで患者の皮質脊髄路が興奮するのかをまとめていきます!
現状、自分が検索した範囲でRCTのような質の高い検証は多くないというのが実情ですが…
皮質脊髄路が興奮しやすいポイントを知っておくことで
起立や歩行練習時などで
介助方法や口頭指示、環境設定の一助になるのではないかと考えています!
立位練習では支持規定面を狭めた方が皮質脊髄路が興奮する!
まずはじめにこちら!!
BOSが減少すると、下肢の筋肉皮質脊髄興奮性とCOP速度が相関して増加する
Tulika Nandi et al:In Standing, Corticospinal Excitability Is Proportional to COP Velocity Whereas M1 Excitability Is Participant-Specific Frontiers in Human Neuroscience July 2018 |Volume 12 Article 303
”立位における支持規定面は狭い方が皮質脊髄路が興奮する”
支持規定面を狭くすることで、
身体重心をBOS内に保持するため
足関節を中心にバランス活動は増大するはずですよね
足関節底背屈筋の皮質脊髄路の興奮性は
不安定な環境に暴露された際に高まると言われています
これは僕の憶測に過ぎませんが
単純な立位保持だけでも興奮性を高めることが可能なら、
能動的な重心移動練習などのより不安定性が高い課題を課すことでも
皮質脊髄路の興奮性を高めるには有効かもしれませんね!
円滑な重心移動は歩行能力にも影響してくるので、僕もよく歩行練習の前に立位保持や重心移動練習を取り入れています!!
早く歩かせよう!!歩行速度によって皮質脊髄路の興奮性が高まる?
歩行練習は、
小脳や脳幹に加え、補足運動野、運動前野、一次運動野など皮質における多数の運動領域や一次感覚野などの広い領域において活性化を図ると言われています!!
そこで、歩行練習に際にはどんなポイントに気をつけて介助していけばいいのかというところをまとめていきます!!
✔︎POINT①歩行速度を上げた方が皮質脊髄路の興奮性は高まる?
ステッピング速度の増加は歩行周期全体にわたって皮質脊髄路の興奮性を高めるのではなく、位相に依存した変調をより強める効果であった。
上林清孝:歩行時の体性感覚の影響(I)皮質脊髄路興奮性に与える影響 国リハ研紀30号平成21年
つまり、歩行速度を早めることで皮質脊髄路の興奮性が高まる位相においては、さらに興奮性を強めることがわかっています。
このことから安全管理や代償動作との兼ね合いもありますが、
歩行の速度を意識した介助や誘導をしていくのがいいかもしれません!
歩行速度を意識したトレーニングは”Fastトレーニング”の代表的なトレーニング方法としても知られています!
また、この練習方法は
脳卒中患者において歩行速度や下肢筋活動の改善に有効であるとされています
Lee IH, et al. : Does the speed of the treadmill influence the training effect in people learning to walk after stroke? A double-blind randomized controlled trial. Clinical Rehabilitation:69-76, 2015
✔︎POINT②歩行時の介助方法は側方介助に変更した方が良い?
歩行速度を高めるにはどうしたら良いの?
と思う方もいるかも知れませんが、
その答えの一つとして”介助する位置”を意識することもいいかも知れません!
後方TSと比較して側方TSでは,MG筋活動やSP 値などの運動力学的要因だけでなく, 筋間コヒーレンスなど 神経生理学的要因においても有効であることが示唆された.
脳卒中後症例の歩行における介助方法の違いが麻痺側立脚後期の下腿筋活動に与える影響について -運動力学的観点と神経生理学的観点から-
TS:歩行補助具 T-Support
後方TS:後方介助+TS 条件
側方TS:側方介助歩行+TS 条件
この研究によれば、側方介助の方が前方への重心移動を阻害しない分
歩行速度や歩幅の値が上昇したと報告しています。
この研究は症例報告ですので、エビデンスレベルが高くはありませんが、
僕は参考にして介助してみるのもいいと思いました!
まとめ
今回は以上になります!!
もっと皮質脊髄路の興奮性を高める方法を皆さんにお伝えできればなと考えていましたが
力及ばず現状では以上の内容となってしまいました…
ただ、皮質脊髄路の興奮性を高めるにあたっては
足関節へ意識を向けた方が良いのではないかと思います!!
急性期なんかですと、まずはじめに気になるのは体幹や股関節です
ですが、もう少し視野を広げて身体全体を観察するクセをつけると
さらに見えてくるものがありそうですね!
それでは本日のまとめです!!
- 皮質脊髄路の興奮性を高める方法としては電気刺激による治療が有名
- 運動イメージや運動観察を取り入れた反復課題練習も有効
- 立位姿勢においては支持面積を狭めたり不安定な状態を作ることで興奮が高まりやすい
- 歩行時には歩行速度を意識して介助すると皮質脊髄路の興奮性が高まりやすい
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