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はじめに

おばんです!
Yu-daiです!!
今回は血ガスにおける酸塩基平衡についてまとめていこうと思います!
酸と塩基のバランスと書いていますが、
実際には人体は体内で生成される”酸”を調整して酸塩基平衡を保ちます!!
ここでいう”酸”とは…
✔︎揮発(気体になる)酸である”二酸化炭素”
✔︎不揮発酸である”乳酸””リン酸””アセト酢酸”
これらが該当します!!
二酸化炭素→肺からガス交換で排出
乳酸・リン酸・アセト酢酸→腎臓で濾され尿として排出
揮発酸は”肺”
不揮発酸は”腎臓”
それぞれ対応する臓器から排出されるようになっており、
体内の酸塩基平衡がコントロールされます!

酸塩基平衡についてよく分かりましたが
これらについて学ぶことで僕ら療法士に何かメリットはあるんですか?

先ほど、酸塩基平衡のコントロールには
”肺”と”腎臓”が関与するという事を話したよね?
つまり、酸塩基平衡をみる検査値によって”肺”と”腎臓”の状態が分かるよ!!
肺や腎臓の状態を把握することは
急性期におけるリハビリ及び離床を進めるにあたっては非常に重要です!!
それでは酸塩基平衡についてまとめていきましょう!!
// /アシドーシスとは?=酸塩基平衡を酸性側にしようとする状態!

先にアシドーシス、アルカローシスについて触れておきましょう!!

まずはアシドーシスからはじめます!!
アシドーシスとは血液を酸性にするような病態をさし,アルカローシスはその逆をいう。
飯野靖彦:酸塩基平衡 日腎会誌2001;43(8):621-630
アシドーシスとは血液の酸塩基平衡を酸性に持っていこうとする働きのことを指します!!

なんとなく血液が酸性になった状態のことだと思っていました…
血液が酸性の状態(pHが7.35未満)のことを…
アシデミア(酸血症)と言います!
アシデミアの状態になると以下の症状が出現することがあります!!
重度及び急速なアシデミアは細胞機能障害(代謝や膜輸送etc)を引き起こす可能性がある
✔︎悪心、嘔吐、倦怠感
✔︎心機能低下(低血圧・ショックを伴う心機能障害)
✔︎致死的不整脈
✔︎昏睡
アルカローシスとは?=酸塩基平衡をアルカリ性側にしようとする状態!

アシドーシスとは血液を酸性にするような病態をさし,アルカローシスはその逆をいう。
飯野靖彦:酸塩基平衡 日腎会誌2001;43(8):621-630
アシドーシスで少し説明しているので、察しがいい方はもう分かるかと思いますが…
アルカローシスは血液をアルカリ性に傾けようとする働きのことです!
血液がアルカリ性(7.45以上)に傾いた状態を…
アルカレミアと言います!!
重度のアルカレミア時では
カルシウムイオンへのタンパク質結合が促進され低カルシウム血症に続く症状が出現
✔︎頭痛
✔︎せん妄
✔︎テタニー
✔︎痙攣発作
✔︎狭心症
✔︎不整脈etc
電解質異常の詳細はこれらの記事にまとまっているので気になった方はクリックしてみてください!
酸塩基平衡を知りたい時に確認すべき血ガス項目はこちら!!

次に酸塩基平衡の状態を知るために
血ガスの項目で確認するべき箇所をまとめていきましょう!!
血ガス自体について知りたい方はこちらのページでまとめています!
血ガスにおける酸塩基平衡パラメータはこちらになります!!
酸塩基パラメータ | 基準値 |
---|---|
pH (水素イオン指数) | 7.35~7.45 |
pCO2 (二酸化炭素分圧) | 35~45torr |
HCO3− (重炭酸イオン濃度) | 22~26mEq/L |
BE (Base Excess:塩基過剰) | -2.0~2.0mEq/L |
AG (アニオンギャップ) | 12±2mEq/L |

思ってたよりも少ないんですね?
でも知らない単語も結構ある…

名前はわかりづらいけど
1つずつ理解していけば大丈夫だからゆっくりまとめていこう!
pH(水素イオン指数)は溶液中の水素イオンの濃度を表す!
この記号は学生の頃から馴染みがあるかと思います!
pH(水素イオン指数)は一般的には溶液中の水素イオン濃度を表します!!
pHの基本的な知識について少しまとめておきます!
- pHの値は通常1〜14とされている
- pH7を中性とし、7より低い場合が酸性、高い場合をアルカリ性とする
人体の場合、つまり血液中のイオン濃度はどうだったでしょうか?
基本的な情報を確認しておきましょう!
- 基本的に血液は中性に近い値をとる
- 血液中のpHの基準値は7.35~7.45とかなり狭い
- この範囲よりもpHが小さくなる病態→アシドーシス
- この範囲よリもpHが大きくなる病態→アルカローシス
pCO2(二酸化炭素分圧)は肺でのガス交換=しっかり換気できているかが分かる

次はPaCO2について!!
PaCO2自体は”二酸化炭素が血液中にどれだけ含まれているか”をみる指標です!
それと同時に体内の酸塩基平衡を規定する因子の一つとして
体内の状態を把握するツールの1つにもなっています!!
今回は酸塩基平衡について焦点を当ててまとめていきますね!!
PaCO2に関しては以下の記事でもまとめているので気になった方はこちらから!
PaCO2は人体の酸塩基平衡に呼吸性の変化を生じさせます!!
基準値はこちら!
35〜45Torr(mmHg)

この数値が高ければ何かしらの理由で肺でのガス交換がうまくいってなくて
この数値が低過ぎればガス交換が過剰ってことですね?

そうだね!!
数値が低い場合は大体人工呼吸器の設定が過剰なんだけど
数値が高い場合には色々な理由が考えられるから
その原因も推測する必要性があるよ!!
次に出てくる
”HCO3−(重炭酸イオン)”と互いを代償する関係にあります!!
急性のものであれば代償はまだ生じていないので値に変化がありませんが
PaCO2・HCO3の両方の値が変化している場合は
慢性的な病態を呈していることになります!
例:ガス交換不全によるPaCO2の上昇に対してHCO3の上昇によりpHを中和しようとする
HCO3−(重炭酸イオン濃度)は過剰酸・過剰塩基を”中和”させる働きが!!
次は重炭酸イオンです!!
HCO3–は酸塩基平衡の”代謝性因子”、つまり”非呼吸性因子”と呼ばれていて
その濃度を変化させることによって体内を中性に保とうとします!!
重炭酸という名前でややこしいかもしれませんが…
重炭酸イオン=アルカリ性
これだけはしっかり覚えておきましょう!!
先ほど出てきた
✔︎揮発酸(CO2)
✔︎不揮発酸(乳酸、ビルビン酸、アセト酢酸)
これらのあらゆる”酸”が体内環境を酸性へと傾かせようとしますが、
重炭酸イオンはそれらを緩衝して人体を中性に保ちます!
体内を中性に保つための緩衝・調整機構には以下のものがあるよ!!
◉血液や体液による緩衝機構(重炭酸・ヘモグロビン・血漿タンパク・リン酸)
◉呼吸による調節機構
◉腎臓による調節機構
※血液・体液緩衝機構においては重炭酸が最も重要な役割を果たしている
重炭酸イオンの基準値はこちら!
22~26mEq/L

重炭酸イオンはどうやって体内の量を調整されるんですか?

重炭酸イオンは腎臓で生成されるよ!!
なので、腎不全などにより腎機能の低下がある場合には
重炭酸イオンが生成されなくなってしまうことがあるから注意が必要だね!!
Base Excess(塩基過剰)は代謝性因子を定量化することができる!!
次はベースエクセス、塩基過剰についてです!!
血液を正常なpH(pH:7.40)に戻すために必要な
酸・アルカリの量を表す
✔︎呼吸性因子であるPaCO2には影響されない
✔︎代謝性の異常が分かる
代謝性アシドーシス(BE:-2未満)
代謝性アルカローシス(BE:+2以上)
✔︎血ガスのBEの項目には以下の2種類ある
アクチュアル・ベースエクセス(ABE)
スタンダード・ベースエクセス(SBE)

ABEとSBEの違いはなんだろう??どっちを見ればいいか迷っちゃうな
ABEとSBEの違いは塩基濃度を測定する際の条件です!!
◉ABE
血液を実際の患者の酸素飽和度で、PaCO2を40torr、体温を37℃にした状態においてpHを7.40に戻すのに必要な酸・アルカリの量
◉SBE
血液をin vitro(試験管内)でPaCO240torr、37℃としたときにpHを7.40に戻すのに必要な酸・アルカリの量

ABEは負のBE、
つまりアシドーシスを過大評価してしまう傾向があるんだよね!
特に急性呼吸性アシドーシスの場合に顕著に出ると言われていて…
その問題を克服するためにSBEが用いられています!!
pHがアシドーシスに傾いている場合にはSBEの数値も確認しておくといいようですね!!
AG(アニオンギャップ)は血液中の陽イオンと陰イオンの差のこと!!
最後は”AG(アニオンギャップ)”について!
タイトルで書いているとおり、
アニオンギャップは血液中の陽イオンと陰イオンの差です!!

そのAGについて理解していると何が分かるんですか?

AGは代謝性アシドーシスの原因を検索する指標になるよ!!
- ナトリウムイオン
- (カリウムイオン)※加える場合もある
- バイカーボネートイオン(HCO3–)
- クロライドイオン(Cl−)
計算式はこちら!!
AG={Na+-(Cl-+HCO3-)}
AGの基準値はこちら!
12±2mEq/L

AGで分かる”代謝性アシドーシス”の原因はこちら!!
それでは、代謝性アシドーシスの原因について少しまとめていきます!
AGの上昇=陽イオンが多く存在する
✔︎代謝性アシドーシス(腎不全)
✔︎乳酸アシドーシス(敗血症・心不全etc)
✔︎ケトアシドーシス(糖尿病性)
✔︎ケトン性アシドーシス
✔︎アルコール性アシドーシス
✔︎尿毒症性アシドーシス
✔︎薬物中毒etc
消化管または腎臓からのHCO3−喪失・腎臓からの酸排泄障害を考える
✔︎下痢
✔︎尿細管系アシドーシス(腎不全・間質性腎疾患etc)
✔︎過剰なドレナージ(胆汁・膵液・腸液etc)
✔︎麻痺性イレウス

基本的にはAG以外の他の指標も確認して診断されるよ!!
僕らはAGや疾患ごとの指標の推移を確認して状態が安定してきているかどうかで介入を進めるかどうか判断していきましょう!
まとめ
血ガスにおける酸塩基平衡についての基本的な知識はこんな感じになります!!
具体的な読み方については別記事にまとめていくのでぜひそちらもお読みください!
本日のまとめはこちら!!
- ”酸塩基平衡”とは体内での酸と塩基のバランスのこと
- 酸塩基平衡は主に肺と腎臓によって調整される
- 酸塩基平衡の情報は呼吸や腎臓の状態を把握するツールにもなる
- 酸塩基平衡が酸性に傾いていることをアシドーシス
- 酸塩基平衡がアルカリ性に傾いていることをアルカローシス
- 体内のpHが酸性・アルカリ性のどちらに傾いても身体に変調をきたす
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参考図書はこちら!!
血ガスを基礎から学びたい人にはおすすめの一冊!!
挿入画も多いため読むのが苦になりにくいです!!
応用的なものはあまり載っていないため慣れてきたら下の図書などで補足していくといいと思います。
こちらの書籍もおすすめ!!
血ガスの基本事項から解釈の仕方、症例提示までありより血ガスについて知れる内容になっています!!
上の書籍と比べると少し文字量が多いかな〜とは思いますが、一冊でより深く血ガスについて知りたいのであればこちらの書籍を勧めます!
上の書籍の続編です!!
より血ガスについて掘り下げられた内容になっています!
個人的には上の書籍を読んでみて”合う人”は買ってみてもいいかも知れません!
上の書籍だけでもリハビリとしては十分な知識を得られることができます!!
体内での酸と塩基のバランスのこと