はじめに
こんばんは
学会やプライベートなどが落ち着いたのでまた書き始めます。
今回はバランスのことについてです。
「バランスが悪い」「バランス能力が低い」「バランス障害がある」という言葉は非常に使い勝手が良くて、臨床の現場では患者さんやそのご家族によく使いがちだと思います。
ですが、バランスについて良く理解していない状態でこれらの言葉を混同して多用するのは理学療法士として「良くない」と僕が新人の頃に先輩に教えてもらいました。
今日はそのことを文章でできるだけ分かりやすく読んでくれた皆さんフィードバックできたら良いなと思っています。
// /それぞれの定義を調べてみよう
まずは、「バランス」という言葉とはどういうことを表しているかを知りましょう。
バランスは、身体重心の投影点を安定性限界と呼ばれる支持基底面内の範囲内に保持する能力
Shumway-Cook Motor Controlより引用
バランスとは、重力をはじめとする環境に対する生体の情報処理機能の帰結・現象。
支持基底面内に重力を投影するために必要な平衡に関わる機能に加えて、骨のアライメント、関節機能、筋力などの要素がある。
姿勢調整障害の理学療法 内山 より引用
定義としてはこのように言われています。
一回見たくらいだと少し難しいですよね?
望月久先生はバランスの定義をもう少し分かりやすく説明してくれています。
分かりやすくまとめると下の図になります。

望月久 理学療法におけるバランスの捉え方 から改変し引用
このように違いが出てくるわけです。
ではバランス障害とはなんなのか。
上のバランスやバランス能力の定義を踏まえた上で
バランス障害について考えると、、、
バランス(能力を構成するいくつかの要素のうちのどこかの)障害
この()の中がその患者さんのバランス障害について検討する際に大切になっていきます。
// /バランスを構成する要素
バランスの定義についてわかったところで次はどういったものがバランスを構成しているのかを調べてみましょう。
以下はSibleyによるバランス機能を構成する要素から引用しています。
- 機能的安定性限界
- 運動器系
- 静的安定性
- 垂直性
- 反応的姿勢調節
- 予測的姿勢調節
- 動的安定性
- 感覚統合
- 認知的影響
以上の9つが要素として挙げられています。
たくさんあるので、言葉だけでは分かりにくいものは下記に補足します。
機能的安定性限界
これは支持基底面内で前後左右に重心を動かせる機能と説明されています。
安定性限界(limits of stability:LOS)とは身体の位置や重心を維持することができる範囲のことですが、
機能的というのはその重心を動かしている状態のことです。
垂直性
これをSibleyは、「重力に対して適切に定位する機能」というように表現しています。
ただ、この表現でもイメージしにくいですよね。。。
色々と調べた結果
Sibleyの表現している「機能」とは、
身体が垂直になっているかどうかを確かめるための視覚や体性感覚,前庭系やそれらの情報を統合する頭頂葉、姿勢を修正するための筋などを指していると考えられます。
反応的姿勢調節
反応的姿勢調節とは、
姿勢が崩れた際に安定した姿勢に戻すために調節する
安定化機構の一つです。
例としては、立ち直り反応、平衡反応、保護伸展反応等のことを言います。腕の位置や下肢の関節角度を変えたりすることで、バランスをとって転倒しないようにします。
この機構をしっかり理解するには、脳のどの部位が深く関わるのかを知らないといけないのですが、長くなってしまうので、別の機会に!!
予測的姿勢調節
安定化機構の2つ目です。
この機構は、、、
その運動が起こる前にその運動によって生じる乱れを予測し、
その乱れを抑制するために運動前から姿勢調節に関わる筋が活動します。
この調節機能は補足運動野や運動前野が関わっていると言われていますが、これも別の記事で書かせてもらおうかと思います。
神経機構などについては高草木薫先生がたくさん論文を出しているためぜひ検索してみてください。
動的安定性
これは歩行などの支持基底面が変化する中での重心を調節する機能です。
感覚統合
説明には下肢からの感覚入力が変化した時(接地面の変化など)に感覚入力を再調整する機能のことと書かれています。
認知的影響
これは、何かしらの課題が加わった際の安定性のことを指します。
例えば、水の入ったコップなどを持ちながら歩くといった具合です。
つまり、専門用語でいうと二重課題(デュアルタスク)です。
Sibleyが考案したバランスを構成する要素は以上です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、バランスについて基本的な要素について勉強しました。
細かい部分については、別の記事で勉強していこうと思いますので
そちらもぜひ見てください。
コメントを残す