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はじめに

おばんです!!Yu-daiです!
新人セラピストや学生向けに
脳卒中や急性期におけるリスク管理を中心とした
知識の発信をさせていただいています。
今回は、注意機能についてまとめていきます!

”注意”というのは課題や周囲の環境などの外的なものだけじゃなくて
・自身の思考
・姿勢・動作制御など
これら内的なものにも向けられているんだ!!
だから、下の文献が示しているように注意の制御機能が低下していると姿勢制御に影響が出てくる場合があるよ!!
記憶容量が低いロースパン群は記憶容量が高いハイスパン群に比べ、片足立位保持中に二重課題を加えることで姿勢動揺量が増加する
Hiroyuki F et al:Effects of the Central Executive on Postural Control. J MotBehav 48:270-6,2016
※ハイスパン群の方が注意制御能力が高いと言われています!
一方で、”注意障害”と”歩行自立度・速度”の関係についてはいまだ一致した見解は得られていないようですのでその点については今後も検討する必要があるかと思います!!
自分と経験としては…
歩行中に二重課題を課した場合、
立ち止まってしまったり、速度が急激に低下したりする症例は確かに存在します!
逆に身体機能がかなり高い症例の場合は
注意障害があっても屋内での生活では問題が生じない場合もあります!

んー、まだ注意障害と歩行との関係が明確になっていない状態じゃあ
僕らが進んで取り組まなくてもいいような気がするけど…

ところが、そうはいってられないんだよね…
皆さんは歩行能力が比較的高い患者さんでも…
✔︎病棟で患者さんが転倒してしまった
✔︎病棟生活では監視が必要だと判断し安静度変更ができなかった
こういった経験はないでしょうか?
歩行能力と注意障害の関係性については議論の余地があると伝えましたが、
その一方で…
”注意障害”と”転倒”の関係性は強い
こんなことが言われています!!
脳卒中患者の入院中の転倒予測を行う上ではTMTを使用したランダムフォレストのような機械学習が最良の因子である.
The Trail Making test: a study of its ability to predict falls in the acute neurological in-patient population
※TMT(Trail Making Test)は注意機能の評価に使用されています!詳細はまた別記事で
転倒群では非転倒群と比較して注意・運動・感覚機能に有意な低下を示した.
田中 貴士:脳血管障害者における注意機能・身体機能が 転倒に及ぼす影響 理学療法科学 25(2):199–202,2010

注意障害と転倒率の関係性は強いようだね!
入院中をはじめ、退院後の生活においてもいかに転倒を予防していくかが
僕ら理学療法士が考えるべき課題の1つだと思います!!
つまり、僕たち理学療法士が注意障害について学ぶべき理由としては…
- 注意障害が姿勢制御に影響を及ぼす可能性がある
- 注意障害と転倒率には強い関係性がある
以上の2点が挙げられます!
普段、僕たちは身体機能に目を向けがちですが
注意障害に対してアプローチすることもADLの拡大や転倒率の改善には有効と考えます!!

注意障害が脳卒中発症後の転倒率に影響するとは…
僕らが注意障害に対してアプローチできることがあるのなら
ぜひ介入するべきですね!
”注意の定義”と”注意に関わるネットワーク”

注意とは以下のように定義されています!!
注意とは”様々な外的・内的刺激や情報の中から
その時々の環境や情報において一定の必要な刺激や
情報を選択し、そして言動に持続性・一貫性・柔軟性を持たせる機能である。簡潔に言えば、”必要な標的に着目して情報の入力処理、出力を行う脳機能プロセス”と言える。
脳血管障害と神経心理学 第2版 医学書院 平山惠造・田川皓一編集 2013

僕がこうやってブログを執筆できているのもこの機能のおかげですね!
では、その注意には脳内のどのネットワークが関与してくるのでしょうか?
ヒトが持つ各種機能に関与する神経ネットワークが以下に明らかにされている
・背側注意ネットワーク:ターゲットに向けてトップダウン的に注意を向ける
森岡周:高次脳機能の神経科学とニューロリハビリテーション 協同医書出版社 2020
・腹側注意ネットワーク:急な刺激にボトムアップに反応する
・感覚運動ネットワーク:運動に伴う感覚運動に関与する
・視覚ネットワーク:視覚の情報処理に関与する
・前頭-頭頂ネットワーク:努力的な認知的処理に関与する
・辺縁系ネットワーク:情動に関与する
・デフォルトモードネットワーク:安静時の脳活動に関与する

急にすごく難しそうな話題ですね…
これらが主な神経ネットワークと紹介されていますが
それぞれ関連性が強いネットワークごとにさらに大きなネットワークを構築されます!
注意に関する主要な3つの神経ネットワークがこちら!!
- 中央実行系ネットワーク(背側注意・感覚運動・前頭・頭頂ネットワーク)
- セイリエンスネットワーク(辺縁系・腹側注意ネットワーク)
- デフォルトモードネットワーク


これらのネットワークによって注意機能が正常に機能しているんだね
少し詳しくみていこう!
まずは、中央実行系ネットワークからいきます!!
目的的な(目標指向的な)遂行機能に関与する
- 後部頭頂葉(PPC)と背外側前頭前野(DLPFC)が関与する
- 注意資源の切り替えや注意資源の配分を行う
- デフォルトモードネットワークと競合する関係にある
中央実行系ネットワークは注意すべき対象を切り替えたり、
その注意の度合いを変更したりする機能があるんですね!!
次に、この中央実行系ネットワークと競合する関係にある
デフォルトモードネットワークについてまとめましょう!
内因性の注意に関与する
- 記憶の想起や内省、将来予想など自己を参照する際に活動する
- 後部帯状皮質(PCC)と内側前頭前野(mPFC)が中心的に関与する
- 中央実行系ネットワークと競合する関係にある

何か考え事をしているような時には
このデフォルトモードネットワークが活動するんだね!
最後にセイリエンスネットワークについて!!
急激な刺激や際立った刺激に反応する
- 中央実行系ネットワークとデフォルトモードネットワークの切り替えに関与する
- 島皮質(INS)と前部帯状皮質(ACC)が中心的に関与する
- 際立つ対象に対して前注意的な処理が行われ、無意識下で周囲のものと比較する

セイリエンスネットワークは他の2つのネットワークの切り替えやポップアウト刺激に対して働くんですね!
これらのネットワークが正常に機能することで
私たちは日常生活を送ることができています!!
注意に関連する脳部位・ネットワークまとめ

注意に関する神経ネットワークについてせっかく学んだので
この流れで注意に関連すると言われている脳部位についても覚えて
臨床における画像評価に生かしましょう!!

画像評価で症状を推測するだけで満足せずに
臨床における症状や評価も大事にしよう!
それぞれの結果をうまくまとめて障害像を考察した上で
治療・介入に役立てるのがいいと思います!!
上の神経ネットワークで少し紹介している部位もありますが
まとめていきますね!!
注意機能の主要な部位として…
・前頭前野背外側部
・頭頂葉下部
・側頭葉上部
・前部帯状回
・線状体
・視床
・正中網様体
・海馬
・被蓋および中脳橋網様体これらが挙げられる
津島靖子:注意機構の脳機能局在お よび脳機能システムに関する文献的研究 – continuousperform ancetestを中心に- 岡山大学大学院教育学研究科研究集録 第 147号 (201)145-14

うわー、いっぱいありますね…
神経ネットワークなど今までの話の流れを考えると
部位ごとに主に関わる機能が違ってきますよね?

その通りだね!
少しそこについても整理していこう!!
視床などの部位も含めてまとめていくには
PetersenとPosner(2012)が提唱した注意に関するネットワークを用いていきましょう!
- alerting network
- orienting network
- executive network

これらがどういう意味を表しているかというと…
- 刺激に備えて準備する(alerting)
- 特定の情報を選択する(orienting)
- 反応の競合を解消する(executive control)
注意はこれらの構成要素によって成り立っていると
PetersenとPosnerは提唱していました。

いろんなネットワークがあって混乱してきます…

僕も説明しづらくなってきてしまうのでこうしよう!!笑
個人的な解釈になりますが…
上で紹介した2つのネットワークと
orienting・executive networkは大まかな機能で考えると
同じようなものなので、置き換えて考えていこうと思います!!
それぞれの特徴についてはこちら!!
executive network
目標を発見した瞬間の気付き(focal attention)や,情報を保持しながら操作を同時に行うこと,これを安定に効率よく遂行すること,このようにできるように計画を立てたり,注意を配分したりするなどのトップダウンの制御をおこない, 実行機能系にかかわる.orienting network
内山由美子:注意障害の臨床~Attention, please!~ 神経心理学 34;155-162, 2018
特定の情報を選択する機能を持つ.
背側システムはトップダウンの選択を準備・適用する機能をもつ.意識的にコントロールすることが可能.
腹側システムはボトムアップ的入力に対して,注意を再指向して検出する機能を持つ.意図的にコントロールすることが困難で,注意の,目立つものや急激に変化したものにひきつけられる機能に関連する.
整理すると…
・中央実行系ネットワーク⇄executive network
・セイリエンスネットワーク⇄orienting network
大まかな働きで分類するとそれぞれ機能が似ているようです!!
orienting networkには中央実行系ネットワークに属する背側システム(背側注意ネットワーク)が入っています。なので関連する脳部位で分けるとこれらのネットワークは違うものかもしれません…わかりやすくするために置き換えただけですので混同しないようにしましょう!
僕は中央実行系ネットワークとセイリエンスネットワークの方が親しみやすいので
この2つのネットワークと…
・alerting network
・デフォルトモードネットワーク
合計4つのネットワークで
どの脳部位が関連してくるかをまとめれば整理することが可能です!

少し整理されてほっとしてます…
alerting networkに関連する脳部位
- 脳幹網様体賦活系
- 視床
- 前頭葉
- 頭頂葉
alerting networkは刺激に備えて警戒・準備し,それを維持する機能があります!!
刺激に備えた警戒・準備というのは
しっかり”覚醒”した状態でないと正常に機能しません!
そのため、覚醒状態を維持するための部位が中心に機能することになります!!

しっかり起きていないと、周囲へ注意を向けることもできないし、
考え事もできないから意識障害がある時点で注意機能の精査は難しいよ!!
視床については視床網様核や視床枕といった部位ごとで
トップダウン注意・ボトムアップ注意の双方に強い関連性があるため要チェックです!

ちなみに刺激に対する備え方は左右の半球で違うようです!!
右大脳半球では持続的な(tonic)警戒を,左大脳半球では一時的な(phasic)警戒を行う
内山由美子:注意障害の臨床~Attention, please!~ 神経心理学 34;155-162, 2018
デフォルトモードネットワークに関連する脳部位
次にデフォルトモードネットワークについてです!!
- 後部帯状回(posterior cingulate cortex:PCC)
- 内側前頭前野(medial prefrontal cortex:mPFC)

ここは最初の方にもでていましたよね!!
中央実行系ネットワークに関連する脳部位
次は中央実行系ネットワークについてです!!
このネットワークは前頭葉から頭頂葉まで
かなり広範囲の脳部位が働くようになっています!
・背側注意ネットワーク
・感覚運動ネットワーク
・前頭・頭頂ネットワーク
これらのネットワークを総称して”中央実行系ネットワーク”と呼ばれていますが…
これらのネットワークの主だった脳部位はなんでしょうか?
- 後部頭頂葉(PPC)・背外側前頭前野(DLPFC)が中心
→前頭・頭頂ネットワーク - 背側注意ネットワークも
頭頂葉(頭頂間溝)〜前頭葉(前頭眼野)の領域に存在
これらを上縦束Ⅰ(SLFⅠ)で結合している
※SLFⅠは楔前部・上頭頂小葉(5 野・7 野)から起始、上前頭回・前部帯状回(8 野・9 野・32 野)に停止
ちなみに感覚運動ネットワークは
・一次運動野(中心前回)
・体性感覚野(中心後回)
・補足運動野
これらが中心になります!!

難しければ、前頭葉〜頭頂葉に存在するとまずは覚えておきましょう!!
SLFⅠについては”半側空間無視”にも関係してくるのでまた今度紹介しますね!
セイリエンスネットワークに関連する脳部位
最後にセイリエンスネットワークについてですね!!
セイリエンスネットワークは
・辺縁系ネットワーク
・腹側注意ネットワーク
この2つのネットワークで形成されています!
それでは、セイリエンスネットワークに関連する脳部位についてまとめます!
- 前部帯状皮質・島皮質が中心
- 腹側注意ネットワークは前頭葉〜側頭葉の領域に存在
これらを上縦束Ⅱ(SLFⅡ)が結合する
※SLFⅡは側頭前頭結合部(40野)から起始し、下前頭回(44 野,45 野,47 野)に停止
上縦束は全部でⅠ・Ⅱ・Ⅲとあり、
これら全てが注意ネットワークの形成の大部分を担っていて
非常に重要なネットワークですので覚えておきましょう!!
半側空間無視の勉強会では必ずと言っていいほど言及される部分なので
しっかり覚えておきましょう!
より詳細な内容は半側空間無視の記事で紹介していきます!
本記事のまとめ

最初はどうなるかと思いましたが
整理してみると、注意機能においては前頭葉・頭頂葉・側頭葉
そしてそれらを結ぶネットワークが重要であることがわかりました!

それに加えて、視床や脳幹網様体賦活系などの覚醒に関わる部位も覚えておこう!
いかがだったでしょうか?
今回は注意機能の定義と注意機能に関連する脳部位や脳内ネットワークについてまとめました!
次回は”注意機能の分類”を中心にまとめていき、より知見を深めていこうと思います!!
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