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はじめに

おばんです!!Yu-daiです!
新人セラピストや学生向けに
脳卒中や急性期におけるリスク管理などを中心とした
知識の発信をさせていただいています。
前回は注意機能の定義などについてまとめてみました!!
今回は、”注意の分類”やそれに対応する評価バッテリーについてまとめていきます!

確かに基本動作や歩行を分析してより良い姿勢で行なってもらうようにするのも大事だけど…
元いた場所に帰ってもらって転倒することなく過ごしてもらうこともまた大事だよね!
今まで毎年100人程度担当させていただきますが…
その中で、歩容改善を希望する方はもちろんいます!
その一方で、
とにかく1人で歩ければいいから早く家に帰りたい!!
このように希望される方々も同じくらいいらっしゃいます!
その時、僕らが重要視する指標の1つとして、”転倒率”が挙げられるかと思います!!
注意機能と転倒率には強い関係性があると言われています!
脳卒中患者の入院中の転倒予測を行う上ではTMTを使用したランダムフォレストのような機械学習が最良の因子である.
Bilal Akhter Mateen et al:The Trail Making test: a study of its ability to predict falls in the acute neurological in-patient population Clin Rehabil. 2018 Oct;32(10):1396-1405.
転倒群では非転倒群と比較して注意・運動・感覚機能に有意な低下を示した.
田中 貴士:脳血管障害者における注意機能・身体機能が 転倒に及ぼす影響 理学療法科学 25(2):199–202,2010

運動機能だけではなく”注意機能”も転倒と関係性が深いみたいだね!!
以上から、様々な転倒に関わる因子の1つとして
注意機能について考えていく必要があるのが分かるでしょうか?
また、注意機能は姿勢制御に影響を及ぼすことも言われており
その点についても考慮していく必要もありそうです!!

僕らPTにも注意機能の知識は必要ということが分かりました!
この記事を最後まで読んでいただければ
注意の分類やそれに対応する評価バッテリーにどんなものがあるか
たった数分で学ぶことが可能です!
ぜひ最後まで読んでみてください!!
// /注意の分類について

まず”注意の種類”についてまとめていきます!
今後紹介する”注意機能に対する評価”はそれぞれ分類別に開発されているので
基本的な注意の種類が分からないと適切に使用することができません!

注意の種類と評価バッテリーを結びつくことができたら
自分で測定しなかったとしても他職種が測定した結果の意味を理解できるようになるから覚えておいて損はないよ!
注意を大別すると2種類に分かれる!!【全般性注意・方向性注意】
まず、注意について大きく分けると2つに分けることが可能です!
- 全般性注意(generalized attention)
- 方向性注意(directed attention)

臨床でよく全般性注意が低下していて〜って
他職種の人が話してくれたことあった気がします
この2つの注意について少し説明していきましょう
これらにはどのような特徴があるのでしょうか?
- 全空間(全方向)に対して注意を働かせる機能
- 一般的な注意機能というのはこれを指す
- 全般性注意は4つに分類される(Sohlbergの分類)
✔︎選択的注意
✔︎持続的注意
✔︎転換的注意
✔︎容量分配的注意 - 空間に限らない
(持続的注意障害:注意の持続が困難なども認める為)
- 特定の方向に位置する対象に対して注意を働かせる機能
- 方向性注意障害は、一方向の対象に注意を向けれるが他方向にはうまく向けることができないという状態
- 方向性注意障害=半側空間無視

つまり、空間への注意における
範囲・方向性の違いでこれら2つに分けられています!!
さらに全般性注意障害では
”注意の要素”によってさらに分類されます!!
全般性注意は4つの要素によって分類される!

確か”全般性注意”っていうのは
全ての注意の概念を包含しているんでしたよね?
名前の通りですけど…
注意はSohlberg(1989,1993)によって
その機能ごとに4つの要素に分類されました!!
- 選択的【selective】注意
- 持続的【sustained】注意
- 転換的【alternating】注意(転動性ともいう)
- 容量分配的【divided】注意

それぞれこんな特徴があります!!

✔︎要チェック!!
これらの注意機能の中で
全般性注意の基盤になっているのは”覚醒”と”持続的注意”(強度)です!
注意の維持機能が基盤にあり、その上にその他の注意機能が成り立っています!!
覚醒と持続的注意が障害されれば注意の選択性や分配性、制御機能まで影響を及ぼす。
脳血管障害と神経心理学 第2版 医学書院 平山惠造・田原皓一編集 2013
ちなみに”覚醒”は文献や教科書によって様々な表現がされています!
- アラートネス
- 覚度
これらは、簡単に説明すると注意を維持するための機能ですが
”覚醒”は内的・外的刺激に備えて警戒・準備するという意味で用いられ
”持続的注意”は一定時間刺激への反応を維持する機能を指します!
覚醒を担う”上行性網様体賦活系”が関与していると言われていて、
”alerting network”が担当するようです!!
警戒に関連する注意ネットワーク
- 視床(視床枕、網様核)
- 右前頭葉(中・下前頭回)
- 前部帯状皮質
- 頭頂葉(縁上回)
これらが関与すると言われている(Clemens B et al,2016)

本題とは少しズレるけど
全般性注意を分類していく上で重要だったので記載したよ!!

しっかり覚醒していない状態では、その他の注意機能も十分に働くことができないということですね!!覚えておきます!
全般性注意障害を評価していくにあたっては
Sohlbergの分類で分けて考えていく必要がありそうですね!!
注意の分類ごとに評価バッテリーを整理していこう!!

注意機能の分類ごとに評価バッテリーを紹介していくよ!!
注意の評価方法は多岐に渡ります!!
一般的には”TMT”や”かな拾いテスト”は有名ですが
その他にもたくさんの評価方法があり、それぞれ対象としている注意機能の種類が違います!!
注意障害の評価は空間性の評価(全空間性か一方向性か)と要素的評価(覚度、持続性、集中性、配分性)のふたつの視点で行うことが重要である。
杉本 諭:高次脳機能障害に対する理学療法 -全般性注意障害と方向性注意障害に対する理学療法評価と治療の考え方- 理学療法学 第40巻第4号 248〜251頁 (2013年)
このように注意の評価は様々な視点から行うことが重要と言われています!!

1つ1つ探し出すのはすごく時間がかかりそうで
後回しにしたくなります…
ここからは、その悩みに答えて
注意の分類ごとに評価バッテリーについて紹介していきます!!

- かな拾いテスト
- Letter Cancellation Task(Test)
- TMT-A(Trail Making Test-A)
- Star cancellation Task(Test)
- TMT-B(Trail Making Test-B)
- Wisconsin Card Sorting test
(ウィスコンシン カード ソートテスト) - Stroop課題
※Wisconsin card-sorting testやStroop課題は”抑制機能”の評価にも用いられます!
- PASAT(Paced Auditory Serial Addition Test)
これらの評価は該当する分類以外の注意機能も
重複して必要になるものもあります!!

例えば、持続的注意が低下しているような場合だと
全ての評価バッテリーに影響を及ぼす可能性があるよね!
なので、TMT-Bの点数が低い=転換性注意の低下!!とすぐに断定するのではなくて、持続的注意や選択的注意などの影響が本当にないかを考えてみよう!
臨床においては、これらの評価を複数用いて評価をすることが多いので
それらを全てを駆使して考えてみるといいかもしれませんね!!
加えて、標準化された評価として注意機能を総合的に評価可能なものもあります!!
- 標準注意検査法(CAT : Clinical Assessment for Attention)
CATは注意機能を7項目の課題で総合的に評価します!!
- Span
Digit Span(数唱)
Tapping Span(視覚性スパン) - Cancellation and Detection Test(抹消検出課題)
Visual Cancellation Task(視覚性抹消検査)
Auditory Detection Task(聴覚性検出課題) - Symbol Digit Modalities Test(SDMT)
- Memory Updating Test(記憶更新検査)
- Paced Auditory Serial Addition Test(PASAT)
- Position Stroop Test(上中下検査)
- Continuous Performance Test (CPT)

うわー、横文字がいっぱいで理解するのが大変そうです
それぞれ、注意に関するどんな機能をみているんでしょうか?
①Span
加 藤 元一郎:標準注意検査法(CAT)と標準意欲評価法(CAS)の 開発とその経過 高次脳機能研究 第 26 巻第 3 号
→注意の範囲や強度の評価
②Cancellation and Detection Test
→選択性注意の検査
③SDMT・④PASAT・⑤Memory Updating Task・⑥Position Stroop Test
→注意の分配能力や変換能力、注意の制御能力が大きく関与
⑦CPT
→持続性注意に関する能力が検討可能

横文字が多くて抵抗があるかもしれないけど、臨床でよく使われていて他職種との会話にも度々登場するから覚えておこう!
※各評価の詳細や評価方法などはまた気が向いた時に記事にしていこうと思います!
本記事のまとめ!

注意機能ごとに用いるべき評価バッテリーが違ってくるなんて初めて知りました!!
これからは臨床症状に加えて、どんな評価がされているのかもチェックします!
机上テストと実際の日常生活での安全性というのは
乖離することが少なくありません!!
(注意機能検査が低くても日常生活レベルは問題なく行える)
どんな評価にも言えると思いますが、1つの検査結果を鵜呑みするのではなく
その他の検査結果や臨床症状なども踏まえながら介入方法や転帰の検討をしていく必要があると思います!!

注意機能が低下していたとしても、身体機能の高さでカバーしたり、家族の協力や環境調整によって自宅退院に至るケースも少なくないからね!!
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