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はじめに
みなさんおばんです!!
前回は皮質脊髄路の興奮性を高める方法についてまとめていきました!
今回は、皮質脊髄路とは別に運動麻痺の改善に重要なポイントをお伝えします!
運動麻痺を良くする=残存している皮質脊髄路の興奮性を高める
このように考えるのは悪いことではありませんが…
運動麻痺に対して
皮質脊髄路だけに囚われると練習の選択肢を狭めてしまうことに繋がりかねません
より良い治療を患者に提供するためにも
皮質脊髄路以外にも目を向けてみてはいかがでしょうか?
それでは、いってみましょう!!
最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
運動麻痺を改善させるには?

運動麻痺を改善させるための方法としては2つのポイントがあります!
そのポイントは運動麻痺回復ステージ理論から分かります!!
残存している皮質脊髄路を中心に新たな神経ネットワークを構築する
ポイント2
つまり、運動麻痺の改善には皮質脊髄路以外の神経回路も重要になっていきます!!
錐体路のほかに、いわゆる代替運動線維(aMF)が脳卒中後の回復を調節する役割を果たすことが示唆される。
動物実験に基づいて、aMFは皮質赤核脊髄路と皮質網様体脊髄路の脊髄系を構成すると仮定されている。
Theodor Rüber et al:Compensatory role of the cortico-rubro-spinal tract in motor recovery after stroke. Neurology 79, 515–522. 2012
このように運動麻痺の改善には
- 皮質赤核脊髄路
- 皮質網様体脊髄路
これらの神経回路が代替運動繊維となり、新たな神経回路を構築していきます!!
運動麻痺回復ステージ理論について
詳細を知りたい方はこちらの記事も読んでみてください!
それでは皮質脊髄路以外で
運動麻痺に関与するこれらの神経回路についてまとめていきましょう!
【理論上は最も有力?】 リハビリにより真っ先に再編成されるのは運動野ー赤核路間の神経回路!

集中的なリハビリテーションを受けたラットにおいて、回復の初期段階では運動野から網様体路ではなく、運動野から赤核への軸索の豊富な発芽が明らかになりました。
Akimasa Ishida et al:Dynamic Interaction between CorticoBrainstem Pathways during Training-Induced Recovery in Stroke Model Rats Journal of Neuroscience 11 September 2019, 39 (37) 7306-7320
この論文によれば、
脳卒中後のラットに対して
非麻痺側を抑制して麻痺側を集中的に動かすよう促した
「リハビリ群」
このリハビリ群においては
運動野・前肢領域から伸びる軸索が豊富に存在し、
赤核の神経細胞との間にシナプスを形成していたということです。
ここで赤核の特徴について少し整理しましょう!
✔︎赤核の特徴
- 脳幹の中脳にある
- 赤色
- 新しい大細胞赤核と古い小細胞赤核からなる
- ヒトにも存在するが、その機能などについては十分な検討がされていない
少し話がずれました…
つまり、脳卒中後のリハビリによって
運動野ー赤核間の神経回路が再構築される
↓
運動麻痺は改善する
このように考えられます!!
赤核は小細胞性核と大細胞性赤核に分かれていて(ここからの詳細はまた後日)
そのうち、大細胞性赤核が皮質-赤核-脊髄の神経回路に関与しています!
部分的に新しく形成された皮質-赤核-脊髄神経回路は、脳卒中後の機能回復の主要な代償経路である可能性が示唆される
Akimasa Ishida et al:Causal Link between the Cortico-Rubral Pathway and Functional Recovery through Forced Impaired Limb Use in Rats with Stroke Journal of Neuroscience 13 January 2016, 36 (2) 455-467
なので、脳卒中後のリハビリテーションにおいては
残存している皮質脊髄路(1次運動野)だけではなく
この代償経路を刺激して賦活するような介入をしてあげることで
運動麻痺の改善につながる可能性があります!!
✔︎要チェック!!
赤核すげー!と思われるかもしれませんが一つ注意事項!
ヒトを含め霊長類動物では大脳皮質が顕著に発達し
錘体路による運動制御が主体になっているため
赤核は退化している
このように考えられていて、
ヒトにおいて
正確な赤核の機能についても知見がまだ少なく十分にはわかっていないようです…
一方で、
脳卒中発症3か月で病変側の赤核と橋背側の拡散異方性(FA)が大幅に増加し、すべての時点で病変側の内包、大脳脚、放線冠、および脳梁のFAが大幅に減少したことを示した
Yohei Takenobu et al:Motor recovery and microstructural change in rubro-spinal tract in subcortical stroke. NeuroImage: Clinical 4 (2014) 201–208
脳梗塞患者において影響を受けた半球における赤核の平均FAは、影響を受けていない半球(P <0.05)よりも高かったが、影響を受けていない半球(P> 0.05)の間に違いは観察されなかった。
Yeo, Sang Seok Jang, Sung Ho:Changes in red nucleus after pyramidal tract injury in patients with cerebral infarct NeuroRehabilitation, vol. 27, no. 4, pp. 373-377, 2010
このように拡散テンソル画像によって
赤核における神経線維の再構築が運動機能の回復と関係していることを
示唆する内容の報告をはじめとして
ヒトにおいて
皮質赤核路が
運動麻痺の改善に寄与している可能性を示唆する報告が徐々に増えてきているのも事実です!!
つまり、現状としては
ヒトにおいて運動麻痺の改善と赤核路との関係は
マウスなどと同様に存在する可能性があるが
まだ正確なことは分かっていない
このことを頭の片隅に入れておいてください!
皮質赤核路が損傷してる場合は皮質網様体路が活用される!

リハビリ実施中に運動野-赤核間の神経回路の機能を遮断した場合、運動野-赤核間の代わりに運動野-網様体間を結ぶ線維が増加した
Akimasa Ishida et al:Dynamic Interaction between CorticoBrainstem Pathways during Training-Induced Recovery in Stroke Model Rats Journal of Neuroscience 11 September 2019, 39 (37) 7306-7320
マウスによる研究ですが、
運動野ー赤核間の神経回路が障害された場合でも
皮質網様体路が運動野と新たな神経回路を結ぶ可能性を示唆しています!!
つまり、
運動野ー赤核間
運動野ー網様体間
複数の神経回路によって皮質脊髄路は代償され
代償回路のどちらかが障害されている場合でも
もう片方の神経回路によって運動麻痺は代償することが可能ということです!!
(ヒトでも赤核路が機能していればですが…)
✔︎網様体の特徴
- 脳幹(中脳〜延髄)の背側部分に存在する
- 灰白質と白質の混合体
- 意識・呼吸・反射・運動などの様々な機能の調節を担っている
網様体も赤核と同様
ヒトの進化からみると古い領域に当たりますが…
皮質網様体路という名前は
リハビリに携わるものにとっては皮質脊髄路の次くらいには良く聞く神経回路ではないでしょうか?
皮質網様体路は同側80%、体側20%の割合で下降して
大きく分けると
- 体幹・姿勢保持筋・四肢近位部の筋緊張をコントロール
- 予測的・反応的姿勢調節機能として姿勢制御に関与
このように私たちが日常生活を送る上で非常に重要な機能を有している神経回路です!!
歩行の獲得においても
皮質網様体・網様体脊髄路は両側性支配であり,この変化は歩行能力の獲得に伴い生じた可塑的変化を反映しているのかもしれない。
阿 部 浩 明:脳卒中片麻痺者の神経可塑性と歩行─急性期重度片麻痺例における歩行トレーニング─ 理学療法学 第 43 巻 Suppl. No. 3 63 ~ 64 頁 2016
このように皮質網様体路による可能性が示唆されているため
理学療法士としてはしっかり抑えておきたい箇所ですよね
皮質網様体路の詳細についてはこちらのページでまとめていますよ!!
神経ネットワークを構築する鍵は補足運動野や運動前野!?

今までの説明で気づいた方もいるかと思いますが、
- 赤核
- 網様体
この2つに共通する項目…
それは
大脳皮質6野:補足運動野(SMA)や運動前野(PMC)
これらの領域から下降性投射を得ているという点です!!
ただし、
それぞれの神経回路ごとに由来している割合は違います…
皮質網様体路は主に運動前野(PMC)に由来し、
Sang SeokYeo et al: Corticoreticular pathway in the human brain: Diffusion tensor tractography study Neurosci Lett. 508:9–12. 2012
PMCから発生した皮質網様体路は、
放線冠と皮質脊髄路の前方にある内包後脚を通って下降
中脳と橋では被蓋を通過し橋延髄網様体で終了する
皮質赤核路はM1の次に補足運動野からの投射がより高い接続性の傾向が観察された
Theodor Rüber et al:Compensatory role of the cortico-rubro-spinal tract in motor recovery after stroke. Neurology 79, 515–522. 2012
つまり
皮質赤核路:補足運動野からの投射が主
皮質網様体路:運動前野からの投射が主
このようになります!!
少し話がずれました…
2nd stage recoveryにおいて
新たな神経ネットワークを構築するためには
- 補足運動野
- 運動前野
これらの領域を賦活できるような介入が必要になってくると思われます!!
また、それ以前に
皮質脊髄路と同様にこれらの神経回路も損傷していない?
と言うところも抑えておきたいポイントですね!!
次回の記事ではこの流れに乗って
補足運動野を意識したリハビリテーションの介入方法についてまとめていこうと思います!!
まとめ
それではまとめです!!
- 2nd stage recoveryには皮質脊髄路以外の神経回路にも着目する必要がある
- 動物実験では皮質赤核路が真っ先に神経回路の再編成に貢献する
- 皮質赤核路が損傷している場合は皮質網様体路が代償する
- ヒトにおける皮質赤核路の機能性についてはまだ意見が分かれている
- ネットワークの再構築には補足運動野や運動前野の賦活が鍵
- 皮質網様体路や皮質赤核路が損傷していないかを画像診断することも重要!
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補足運動野や運動前野の賦活する方法を知りたい方はこちらの記事をご覧ください!!
残存している皮質脊髄路の興奮性を高める