はじめに
今回は視床について勉強しましょう。
この記事を見ていただいている皆さんは視床が障害された場合、どのような所見がみられるか?と聞かれた場合にどう答えますか?
確か、1年目の頃の新人ゆうだい君は「感覚障害がでます!」くらいしか答えられなかった気がします。笑
もちろんそれだけなわけはなくて、視床には脳の様々な領域からの連絡が投射されます。各領域(視床では~核と呼びます)ごとに名前がつけられていて、細かく分けると10種類以上にもおよびます!
専門家でもない限り全て覚えるには至難の業。。。
そこで、今回は脳画像を読影し、障害像を推測するにあたって最低限必要な部分のみまとめてみました!
気になったら細かいところまで調べてみてくださいね!
それではいってみましょう!
まず視床を3つに分ける
先行研究やぼく自身の経験を踏まえると10種類以上ある核ですが、読影をするにあたってはおよそ3つの領域に絞って分けて考えると分かりやすいかと思います。
①前
②外側
③内側
この3つですね。
臨床においては読影で区別して障害像を想定できる範囲としてもこれくらいが限界じゃないかと思います。
記憶に関わるのはここ!【前核】
まず前核ですね。
前核にはPapetz回路が通っています。皆さん知っている通り、記憶に関わる回路です。
国家試験前の学生の方はちょうどPapetz回路を語呂合わせで覚えていたりするんではないでしょうか?
この経路で通っています。語呂については趣旨から外れるので書きません。参考書などをみてみてください。
ここが障害されると記憶障害を認めます。
記憶について詳しく話そうとすると他の核の話へ向かえないので今回は視床についてだけ書きますね。
視床が障害された場合、特徴的な健忘症が起きると言われています。
その名も コルサコフ症候群
コルサコフ症候群には3つ特徴があって
- 洞察力が欠如
- 作話症状(事実ではないことを現実の出来事として思い出す)が強い
- 逆行性健忘(障害起点から過去の記憶)の期間が比較的長い
視床の前方が障害された場合はこのような症状が出てくる可能性があります。
外側は前と後ろに分けよう
次に外側です。
先行研究では腹側核群と呼んでいました。
外側にはリハビリテーションを行う上でも重要な機能が集中していたため2つに分けました。
・前半部(前腹側核・外側腹側核)
・後半部(後外側・内側腹側核・視床枕核)
ぼくはこの2つに分けて覚えておくと読影の時に障害像を推測しやすいと思いました。
運動制御は任せろ!【前・外側腹側核】
前半部には2つの投射経路が通っています。
外側腹側核:淡蒼球・小脳核→1次運動野
運動前野と補足運動野はそれぞれ空間感覚情報と体性感覚情報を処理してより高度な運動を円滑に行えるような役割を果たしています。また、補足運動野が障害された場合には時に不随意運動を呈してしまう場合もあります。
1次運動野には小脳からの繊維が投射されます。小脳は運動を調節する機能があり、ここを障害された場合には運動失調を呈する可能性があります。
感覚の中継地点!【後外側・内側腹側核】
後外側腹側核と後内側腹側核は感覚の中継核です。
後外側腹側核・・・四肢、体幹 からの入力を受けて一次体性感覚野へ
後内側腹側核・・・頭部からの感覚と味覚情報が入力し、一次体性感覚野の顔面領域と味覚野へ
以上から外側の後ろ半分の障害の際には感覚障害の出現の可能性が考えられます。
視覚にも関わってくる?【視床枕核】
またさらにその後ろの部分
視床枕核は一次・二次視覚野や小脳などから入力を受け、視覚皮質、側頭葉、頭頂葉などへ投射されます。
一部では視床の後部を中心とした障害においては半側空間無視を呈している場合があるようです。
内側では意識や情動の障害を疑おう
次は視床の内側についてです。
意識はここから大脳に広く拡散される!【髄板内核群】
髄板内核群は内側髄板の中にある核です。位置的には視床の内側よりも少し中心に寄っているイメージでみるといいと思います。
上行性網様体賦活系に関与しているとされ、中脳~延髄の被蓋に位置している脳幹網様体や視床下核などから入力を受け 大脳皮質や大脳基底核などに向けて広く投射されます。
そのため、髄板内核群をはじめ、各被蓋や大脳皮質を広範に障害されている症例は意識障害が遷延化しやすいです。
臨床場面では麻痺側の下肢へ装具を装着し、感覚入力が得られやすい状態で座位練習を行ったりするなどして意識障害に対してアプローチしていることもあります。
情動に関与?【背内側核】
視床の内側には背内側核と呼ばれる核があります。
この核は前頭前野との間に密な連絡をしていると言われています。
出力は前頭前野の眼窩部から起こります。
また、この核はYakovlev回路の1つとしても機能しており、
認知機能や情動の制御、動機付けなどに重要な役割を担っています。
Yakovlev(ヤコブレフ)回路についてはちょうど国家試験などで語呂を覚えている方もいるかもしれませんが、、、
側頭葉皮質前部(38野) → 扁桃体 → 視床背内側核 → 前頭眼窩皮質 → 鉤状束 → 側頭葉皮質前部
この順番で回路を形成しているようです。
この回路が障害されると情動障害が起こる可能性があるのですが、まず、情動とは何か言葉ではっきりと説明できますか?
情動=感情でもいいような気がしますが、神経心理学でははっきりと定義されています。
情動とは
セラピスト側からみて観察可能な部分
つまり、バイタルサインや顔の表情、筋肉のこわばりなどのことです。
皆さんが怒った時、心拍数は上昇し、全身に力が入っているような気がしませんか?
そういった点を評価してその方の快・不快を表現するために使用するのが情動です。
背内側核を障害された場合には感情のコントロールが難しくなっている方もいますので、コミュニケーションの取り方や言葉選びにはより配慮しなければならないこともあります。
【おまけ】Yakovlev回路とPapetz回路
余談ですが、Yakovlev回路はPapetz回路とも連絡を取り合っているため、記憶とも関わりがあります。
嬉しかったこととかものすごく悲しかったことって今でも鮮明に思い出すことができますよね?
Yakovlev回路が障害されるとエピソード記憶に影響するとも言われています。気になった方は調べてみてください。
脱抑制にも注意!
前頭前野眼窩部からの出力を受けているため、背内側核が障害されていると、脱抑制を生じます。
脱抑制とは
思ったことをそのまま言ったり,行動したりするため,相手を傷つけたり,気分を害したりしてしまうことがあり,集団のなかで適応した生活を送ることが難しくなることがある
というように言われています。つまり日常生活だけでなく、リハビリ介入にも支障をきたす場合もある行動障害なのです。
脱抑制を疑った場合はFAB(前頭葉簡易機能検査法)の抑制(GO-NO-GO)課題をやって精査してみてもいいかもしれません!
「私が1回拍手したら2回拍手してください。2回拍手したら拍手しないでください」
検査の方法としてはこんな感じです!
まとめ
いかがだったでしょうか?
視床は様々な領域から神経線維が投射され、障害された場合には多様な障害が出現する可能性があります。
それを踏まえて初回介入前の情報収集を行うことはかなり有用ではないでしょうか?
それでは本日のまとめです!
コメントを残す