リハビリで小脳の予後予測する上でのポイントを10分で学ぶ

はじめに

こんばんわ!ゆうだいです!!

今夜は小脳病変の方の予後予測を客観的な視点でできるための勉強をしていきたいと思います!

小脳は障害されると眩暈や嘔吐,運動失調,構音障害などさまざまな症状が出現し、ADLを阻害します。

これらの症状がどれくらいの期間で改善するのか、または改善するのは難しいのか。。。

急性期のうちに自宅復帰はできる可能性はあるのかなど・・・

予後を予測することはリハビリ介入にあたり、目標の設定や介入内容に深く関わってきます。

もちろん全ての症例が客観的なデータから予後を導き出せるわけではありませんが、、、

その点に関しては実際に介入してみた印象や経験に基づく傾向と結びつけながら考えていく必要があります。ここに関しては皆さんの経験次第です。

今回は、経験が浅い学生や新人療法士でも調べればこんなに理論に基づいて予後を考えることができることをお伝えできればなと思いますのでよければ最後までお付き合いください!

転帰を予測する

はじめに患者の転帰についてです。

転帰というのは、直接自宅復帰が可能となるのか、回復期へ転院した後に自宅復帰可能なのか、それとも回復期を経たとしても療養施設への転院となるのかなどのことを指します。

それに加えて急性期においては生命に関わるかどうかのことも指します。亡くなってしまう可能性があるかどうかということです。

この点に関して直接私たち理学療法士に介入できることはありませんが、

介入を開始している方が再出血や再梗塞を発症された場合、

介入の中断・中止をリハ医と相談する必要があります。(急変後担当医から指示がなければ)

また、家庭環境などの理由で転院を余儀なくされる場合もありますが、転帰良好群の人を自宅復帰へ導けるかどうかで急性期理学療法士としての腕が試されると私は思っています。

血腫量

保存療法で血腫量が15ml未満の78例ではgoodが63例(80.8%)と転帰良好であったが,血腫量が15mlから30mlの13例ではgoodが5例(38.5%)と減少し,血腫量が30ml以上の大血腫では全例が死亡した。

宇野:原発性小脳出血の臨床的検討 から引用

血腫の量と臨床経過が相関することは多くの研究で示されてきました。

血腫量は機能予後にも関連してくるため、僕は必ず血腫量も計算して検討するようにしています。

症例によっては血腫の大きさのわりに症状が軽度なことも稀に認めますが、そのような場合には実際の臨床症状やその他の予後予測も活用して検討するといいと思います。

引用させていただいた箇所に記載されているgoodというのはADLを表しているようです。good(1、2)、Fair(3)、poor(4、5)、deadというように使用されていますが、これがどのスケールを使用しているかは明示されてなかったです。

おそらくmodefied Ranking Scale(mRS)ではないかと思うのですが、、、

このスケールに当てはめるとするならば、goodは「明らかな障害はない」となります。

よろしければご自分でも検索して読んでみてください。

 病変の部位

保存療法群では半 球 に 限 局 していた70例中、goodは60例(85.7%)で転帰良好であった。ところが半球から虫部に伸展していた16例ではdeadが12例(75.0%)を占め、また虫部に出血した症例ではdeadが7例(43.8%)と転 帰不 良 で あった.

宇野:原発性小脳出血の臨床的検討 から引用

これは解剖学的な知識でなんとなく理解できると思いますが、小脳半球は小脳虫部の下側から外側へ広がるように発達しています。

そのため、虫部に近い部分に病変が出現していない限りは脳幹からの距離は遠く、発症後に生じる脳浮腫の影響が脳幹に比較的及びづらいのでしょう。

意識障害・外科手術の有無

初診時に意識障害を認めた患者の多くが救命のための外科的治 療を受けていたが,急性期病院から直接自宅退院に至 ることはなく、予後が不良であった。

前島ら:急性期病院における小脳出血の機能予後と転帰 から引用

意識障害を生じるほどの大きさの病変であれば、手術もするだろうし、予後も悪いだろうなぁ」

と多分医療職種でなくても「当たり前でしょ」と感じると思います。

しかし、実際臨床現場で働いていると出血は大したことはないけれど部位や浮腫などの影響で意識障害が遷延化している方は結構います。

急性期を乗り越えた後にはリハビリが待っているわけですが、

そのような方はなかなか積極的な運動療法へ移行することができない場合が多いです。

そのため、意識障害に加えて頭部CT画像やMRI画像などで認められる所見から改善する見込みがあるかどうかなども考えて介入することが重要です。

 運動失調の予後を予測する

転帰にも関わってきますが、理学療法士としてはここが最も気になるところだと思います。

運動失調は早いものだと1週間程度で改善を認める例や遅いものだと1年を経ても改善を認めにくいものもあります。

小脳半球にあるのか歯状核にあるのかで予測する

核と皮質の病変の影響は小脳の重要な違いではないが、後者によるものはあまり強くなく、一定でなく、より迅速に回復すると結論づけなければならない。Holmes G: The symptoms of acute cerebellar injuries due to to gunshot injuries. から引用

英語論文から直訳したもので少しわかりにくいかと思うので補足を。。。 

核→歯状核皮質→小脳半球 と文中から解釈できるため、この論文では歯状核を障害しているものと比べて小脳半球に限局した失調症状は比較的軽度で回復が早いよ!っていうことを話しています。

小脳皮質病変はその全域が損傷 されることがないためか予後は良好であった.

桑原ら:小脳 ・小脳脚梗塞における運動失調運動失調の予後および小脳内体性局在について から引用 

小脳脚の上・中・下で予測する

上小脳脚+歯状核病変あるいは中小脳脚の全体的病変など一つの機能系全体を障害する病変を有する場合には,運動失調の予後は不良であるものと思われた.桑原ら:小脳 ・小脳脚梗塞における運動失調運動失調の予後および小脳内体性局在について から引用 

下小脳脚病変による運動失調の予後は良好であると思われる。桑原ら:小脳 ・小脳脚梗塞における運動失調運動失調の予後および小脳内体性局在について から引用

部分的な中小脳脚、下小脳脚病変においては予後は良好ということですね。

上小脳脚に関しては上にも出てきていた歯状核も同一の血管支配を受けているのでその2つが同時に障害される場合が多く失調症状が重度になりやすいようです。
余談ですが上小脳脚、中小脳脚、下小脳脚は全て支配血管が違いますので合わせて覚えておくと、脳梗塞の時にMRI所見に加えてMRAでどこの血管から閉塞しているのか評価することで予後予測や障害の程度を予測する際にかなり役立つと思います。

上小脳脚上小脳動脈(Superior Cerebellar Artery)

中小脳脚→前下小脳動脈(Anterior Inferior Cerebellar Artery)

下小脳脚→後下小脳動脈(Posterior Inferior Cerebella Artery)

まとめ

小脳以外の病変にも当てはまりますが、

私の病院においては脳外科のDr.も可能な限り手術は行わずに急性期をやり過ごせるよう内科的治療に気を使っているような気がします。

その背景には機能予後などを視野に入れているのかなぁと勉強するようになって初めて気づきました笑

また、予後予測を行うことで急性期のうちに自宅復帰が可能となる可能性が高い症例を持つようになった時には「帰すことができなければ自分がポンコツ」くらいに自分にプレッシャーをかけてより真剣に介入に向き合えるようになったと思います。(高次脳機能や家庭環境なども考慮して無理やりの退院はすすめませんよ!笑)

今回、小脳の予後予測について勉強しましたが、小脳以外の予後予測についても記事を書いていく予定ですのでよければそちらもみにきてください。

ではまた次回!!!

勉強になった方はシェアしてくれたら嬉しいです!

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